現実と仮想空間が重なるアートが集結!「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」が2月13日~6月8日、六本木『森美術館』で開催
ゲームエンジン、AI、仮想現実(VR)、人間の創造性を超え得る生成AIなどのテクノロジーを採用した現代アートを紹介する「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」が2025年2月13日(木)~6月8日(日)、東京都港区の『森美術館』で開催される。TOP画像=キム・アヨン《デリバリー・ダンサーズ・スフィア》2022年。
「マシン」とアーティストの協働から生まれた作品に没入
ここで言う「マシン」とは「機械」のイメージではなく、コンピュータやハードウェアの総称としての「マシン」のこと。20世紀初頭には機械のスピード感やダイナミズムが象徴する新たな時代を「マシン・エイジ」と呼び、多様な芸術分野で支持された。本展では21世紀に広く浸透したコンピュータやインターネットに深くかかわる、新しい「マシン」時代のアートに注目する。
デジタル空間上のさまざまなデータ素材となった新しい美学やイメージメイキングの手法、さらにジェンダーや人種という現実社会のアイデンティティから解放するアバターやキャラクター、“超現実的な風景の可視化”といった特性をもつ作品が集結している。
作品は一見新しい方法を採用しているように見えて、表現の根幹では、死生観や生命、倫理問題、現代世界が抱える環境問題、歴史解釈、多様性といった普遍的な課題が掘り下げられている。観る者は「マシン」とアーティストによる協働作品が生んだ没入型の空間によって、「ラブ(愛情)」「共感」「高揚感」「恐れ」「不安」など、感情を揺さぶられる体験ができるだろう。
人類とテクノロジーとの関係性を改めて考え、不確実な未来をよりよく生きる方法を想像する機会を提供してくれそうだ。
生物学や哲学などの領域とのコラボレーションにより新たな世界を提示
さまざまな領域の専門性が集結し、新しい世界を表現しているのも本展の大きな見どころ。現代アートに限らず、デザイン、ゲーム、AI研究などの領域で高く評価されるアーティスト・クリエイター12組が、生物学、地質学、哲学、音楽、ダンス、プログラミングなどの領域とのコラボレーションを通して制作。最新テクノロジーとアートの関係性を、多様な分野が融合した作品群を通じて体験できる。
また、アートやメディア・アートのプライズの受賞者が多数いることにも注目。メディア・アート界の世界的な賞アルス・エレクトロニカ賞のニュー・アニメーション・アート部門で2023年にグランプリを受賞したキム・アヨン氏をはじめ、2022年にドイツ銀行グループアーティスト・オブ・ザ・イヤーを受賞したルー・ヤン氏など、気鋭のアーティストたちによる感度の高い作品と出合うことができる。
最新のデジタル映像作品のみならず、平面や立体の作品、インスタレーションなどリアルに実在する作品も多く展示され、デジタル空間と現実を往来できるのも醍醐味だ。キム・アヨンの『デリバリー・ダンサーズ・スフィア』ゲーム版やAIキャラクターとの対話に挑戦できるディムートの『エル・トゥルコ/リビングシアター』(2024年)など、インタラクティブな作品では参加もできる。ぜひ実際にプレイをして楽しみたい。
開催概要
「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」
開催期間:2025年2月13日(木)~6月8日(日)
開催時間:10:00~22:00(火のみ~17:00、ただし4月29日・5月6日は~22:00。入館は閉館30分前まで)
休館日:無休
会場:森美術館(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53F)
アクセス:地下鉄日比谷線六本木駅から徒歩3分、地下鉄大江戸線六本木駅から徒歩6分
入場料:平日一般2000円、高校生・大学生・専門学校生1400円、65歳以上1700円、中学生以下無料。土・日・休日一般2200円、高校生・大学生・専門学校生1500円、65歳以上1900円、中学生以下無料
※事前予約制、日時指定券を専用オンラインサイトから購入可。空きがある場合は事前予約なしの入館可
【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP https://www.mori.art.museum
取材・文=前田真紀 画像提供=森美術館
前田真紀
ライター
『散歩の達人』『JR時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。