【船橋市】江戸時代から今につながる民族文化。船橋漁師8代目松本和夫さんが作り続ける「ドンザ凧」
ドンザとは、木綿地の古着に端切れをあてて刺繍をした長い着物のこと。丈夫さや保温性から、漁師の仕事着として適していたそう。そんなドンザを模した凧「ドンザ凧」を作る松本さんを取材しました。
豊かな漁場(ぎょじょう)に映える粋なドンザ
ドンザとは、木綿の着物に端切れを重ね、刺し子をして丈夫さと保温性を高めた漁師の仕事着のこと。
全国の浜に伝わるものですが、船橋は、江戸城へ魚介を献上する「御菜浦(おさいのうら)」として長く栄え、漁師たちは華やかに刺しゅうを施したドンザを風にはらませ、粋で派手な姿を誇ったといいます。
そんな船橋の漁師町には、船の事故で亡くなった人の供養としてドンザを模した凧を揚げる風習がありました。
お経が描き込まれ、凧糸には阿弥陀如来(あみだにょらい)と縁を結ぶという青黄赤白黒の5色の漁網糸(ぎょもういと)が用いられるなど鎮魂の色合いが強いドンザ凧ですが、子どもの誕生を祝って揚げることもあり、人々の暮らしに深く根付くものであったといわれています。
江戸から令和伝統の和凧を空へ
鈍色の空を舞う鶴、うねる波間には亀と鵜(う)。
力強い「三番瀬」の筆文字。
江戸時代から続く船橋の8代目漁師であり、また、幼い頃から先代らの凧に身近に触れて育った松本和夫さんは、独学と見聞を通して得た豊かな知識を絵柄に込め、繊細かつ迫力ある凧を仕上げます。
伝統を次代へつなごうと、地域で凧揚げを楽しむことも。
人気キャラクターを描いた子ども向けの凧は大人気です。
「昔から近所の子らに応えて絵を描き、凧を作っていましたね」と妻の純子さんも目を細めます。
船橋漁師として、また伝統ある和凧の作り手として歴史と地域、海への思いを語るまなざしは真っすぐで温かく、重みあるドンザ凧が時代を超えて承継されることを願いました。