イルカの赤ちゃん誕生の秘話…2年の「妊活」におっぱいあげる訓練も【北海道・おたる水族館】
「バンドウイルカ」の赤ちゃんが誕生です!
北海道内で無事出産できたのは初めて!そんな成功の裏には、飼育員たちの奮闘がありました。
イルカの赤ちゃん誕生、その舞台裏を深掘りします。
さかのぼること約9か月前…2023年11月のことでした。
「すご、頭映ってる」「これ確定ですね」
飼育員たちがそう声をあげる先にあるのはエコー検査の画像。
妊娠がわかったのは、バンドウイルカの「メリー」、推定20歳です。
ホルモンバランスを測定し、交尾するタイミングを計るなど、2年間にわたる「妊活」をしていました。
この日、待望の赤ちゃんの姿が確認できたのです。
妊娠が確定し、出産に向けて、メリーはそこからさらに「一番重要」なカギとなるトレーニングにも取り組んできました。
先輩水族館からレクチャーを受けた重要トレーニング
メリーの出産までの道のり…。
バンドウイルカの出産が道内初のため、おたる水族館では、複数の「先輩」水族館に話を聞き、「一番重要」とアドバイスを受けた「授乳動作」のトレーニングに取り組みました。
おたる水族館飼育部長の角川雅俊獣医師が詳しく説明してくれました。
「ターゲットと呼ばれる指示する棒をおっぱいにあててゆっくり棒の先に合わせてイルカがスピードを調整してゆっくり泳ぐ、泳ぐ速度を調整するためのトレーニング」
イルカは、水中で泳ぎながら赤ちゃんにおっぱいをあげます。
お母さんイルカが速く泳いでしまったら、赤ちゃんはおっぱいを吸うことができません。
飼育員たちは、イルカの出産の経験がある鹿児島の水族館からレクチャーを受け、メリーとともに訓練を続けていました。
角川獣医師は「何年か前はこういう知識はわれわれには無かった。繁殖のためのトレーニングや検査データの取り方は日進月歩なので新しい情報を入れていかないと成功には結びつかない」と話します。
そして8月18日夕方…。
小さな尾びれが出てきました。
赤ちゃんのペースに合わせて…
「背びれが出ました。出ますそろそろ、出ました!」
「そうだそうだ いいよ頑張って」
飼育員の声が飛び交います。
生まれたのはメスの赤ちゃん。
お母さんと一緒に、元気に泳ぎだしました。
イルカ担当の飼育員・角谷茜さん
「産まれたときは本当にうれしいのと、メリー本当に頑張ったね!という感じでしたね」
イルカ担当の飼育員・佐久間穂菜美さん
「もう赤ちゃんに寄り添ってメリーもしっかり泳いでいたので、メリーの顔もお母さんの顔になっていたように見えて…」
これは、初公開となる、出産から1日たった19日の赤ちゃんとメリーの姿。
お母さんになったメリーが、赤ちゃんにおっぱいをあげています。
メリーは、あのトレーニングの通り、赤ちゃんのスピードに合わせてゆっくりと泳いでいました。
おたる水族館飼育部長の角川雅俊獣医師は「正常分娩と授乳という二つの大きなハードルは超えた」と顔をほころばせましたが、すぐに引き締めます。
「いまは順調ですけどここで油断せずに、これからいろいろな遊びを覚えてくると、予想外の行動も出てくると思うので、それも事故につながる可能性もあるので、メリーはしっかりした母なんですけど、われわれも十分観察を強化していきたい」
▼赤ちゃんは9月2日から一般公開開始!
「もう大きくなった?」イルカの赤ちゃん一般公開 お母さんに寄り添い泳ぎもすいすい
「世界初」の繁殖成功も
実はおたる水族館は今年で50周年。
今回のバンドウイルカの出産は北海道内初という快挙ですが、これまでにいくつもの繁殖を成功させてきたんです。
1958年の北海道博覧会の会場を引き継いで誕生した水族館。
1974年、ちょうど50年前に、現在の場所に移転し「おたる水族館」としてオープンしました。
4年後には、新しくつくられたプールで、アザラシのショーを公開。
いまではおなじみのイルカスタジアムが完成すると、多くの子どもたちが、イルカたちのダイナミックな技に歓声をあげました。
一方で、生き物の保護や繁殖を行うのも、水族館の大切な役割。
おたる水族館では、2004年に世界で初めて「ワモンアザラシ」の繁殖に成功しました。
アザラシのなかで最も体の小さい「ワモンアザラシ」。
赤ちゃんの愛らしい姿が人気を集めました。
2009年には「ホッケ」の繁殖に成功。
全国的にも珍しい、成長する前の青みがかった姿を公開しました。
2010年には、当時、環境省の準絶滅危惧種に指定されていたキタサンショウウオの繁殖に成功しています。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年8月20日)の情報に基づき、一部情報を更新しています。