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中2自閉症娘にお金の使い方をどう教える?将来の自立に向けて今親ができることは…

LITALICO発達ナビ

中2自閉症娘にお金の遣い方をどう教える?将来の自立に向けて今親ができることは…

監修:森 しほ

ゆうメンタル・スキンクリニック理事

発達障害のある人は、一般的にお金の管理が苦手?中2の娘の場合は……

発達障害のある人は、一般的に、お金の管理が苦手な傾向にあると言われています。生活するのに、お金がどのくらいかかるのか見通しを立てることが難しく、計画的にお金を使えず、トラブルになりやすいようです。

もちろん、個人差はあります。わが家の中学2年生の娘の場合……

私たちは、娘が生まれてから、いただいたお祝いやお年玉、お小遣いを、すべて娘名義の通帳に貯金し、成人したときに渡すつもりで管理しています。定期的なお小遣いをあげる習慣もなく、欲しいといったものは私たちが買ってあげていました。

小学校低学年まではその状況が続いていましたが、小学4年生の頃、お手伝いを促し、自立力を鍛えるためにお手伝いカードを始めました。1回のお手伝いで1つのスタンプを押し、20個スタンプがたまったら、500円を渡すというものでした。

このカードは大成功し、おかげで娘はお金の価値を学びました。

今まで、すぐねだっていた物も、実際に労働して手に入れる経験をしたことで、「500円ってこんなに苦労しないと手に入らないんだ……」と分かってからはねだらなくなりましたし、自分で稼いだお金は、自分で好きに使っていいと言っても、「もったいない」と言って、なかなか使いませんでした。

「お金を使う力」を身につけてほしい!親の思いとは裏腹に……

お金の価値をしっかり理解したところで、私たちは小学5年生から、頂いたお年玉の一部やお小遣いを、娘に渡すようにしました。
自分で考えてお金を使うという力を、身につけさせたかったのです。しかし娘は、もらったお金をなかなか使わず、どんどん貯めていき……

持っているお金を数えては、ニヤニヤする日々……。

使いすぎて、お金がなくなった!→次からどうしたらいいか考えよう!という流れで、教えることを想像していた私たちでしたが、娘にそれを教える機会がなかなかきません。お金を使うのは、月に1回ぐらいのガチャガチャぐらい。

元々、物欲があまりない娘は、こんなのあるよ!と提案しても「ん~……なくていい」と言い……おしゃれにもあまり興味がないので、洋服も新しいものは欲しがらず、私のお下がりや共有で満足します。

本当に、全然お金を使わない娘。
そこで、わが家のお金の管理担当の夫が動きました。

お金を減らしたくないというこだわりが発生し、頑な……。

それからしばらく私たちは、何も言いませんでした。出かける時、財布は持参しますが、何も使わず帰宅しても、黙っていました。
そんな娘も中学に入ると、「私、これ欲しい!」「この本、興味あるんだよね!買おうかな!」と物に関心を持つようになりました。

急激な変化に驚いた私たち、訳を聞いてみると……

部活にも入り、交友関係も広がって、娘の興味の範囲も広がったようでした。

娘は、ASD(自閉スペクトラム症)の特性から、先の見通しを立てるのが苦手です。物事を進めていくときに、段取りを考えたり、先の予定を考えて取り組みことも難しいので、いつもサポートが必要です。

しかし、お金に関しては当てはまらないようでした。いくらあるから、いくらまで使える……そしたらいくら残る……。次は〇〇を買いたいから、いくら貯める……と細かいことまで自分で考えることができるようです。

「一人暮らしするのが夢」という娘のために、今できること

私たち夫婦は、お金の話をよくします。家計の話ではなく、物価の上昇、国の経済事情、補助金のニュースをみながら、いろいろと詳しい夫に私が質問したり、説明を聞きながら意見を言ったりしています。

長男と次男は寝る時間が早いため、夫婦の会話に娘が入り、3人で話すことが多いため、夫が娘に分かるように言い換えて説明してくれたりします。一人暮らしにどれくらいのお金がかかるのか、電気代、食費などの話にもなるため、娘はお金の話を聞きなれていました。

娘は「将来、一人暮らしするのが夢」とよく言っています。一人暮らしには、お金の管理が不可欠。自分の稼いだお金を把握し、その中で生活をすることになります。

娘が自分のしたい暮らしができるよう、話をしたり、自分たちの(一人暮らし)経験を話したり、今できるサポートを続けたい思います。

執筆/SAKURA

(監修:森先生より)
SAKURAさん、発達の偏りのある方にとって大きな課題であるお金の管理についての体験談をありがとうございます。 ゲームのように楽しくお金の価値を分かるような教育をされていて素晴らしいですね。また、お金をただの数字ではなく、「苦労して稼ぐ」ことで、子どものうちから実感をもってお金の価値が分かったことは大きい成長ですね。

さて、ご存知のように、発達障害の傾向がある方はお金の管理が苦手なことも少なくありません。いつまでにいくら必要なのか、今どのぐらい使っていいのかといったイメージを持ちにくく、使い過ぎてしまうのです。ひどいと、返済できないくらいの借金をしてしまうこともあります。

「お金を使う」と、脳内の報酬系が刺激されるため、発達の偏りがあり刺激に弱い方はついつい「お金を使う」方向にいきがちなのです。ただ、逆に「お金を貯める」「節約する」ことで報酬系が刺激されるタイプの方もいます。 そのような場合、保護者からすると、「もっと楽しいことにお金を使ってみたら?」と思うこともあるかもしれませんが、使い過ぎと比べたら大きな問題とはなりにくいのではないでしょうか。もしかしたらお子さんもその傾向があったのかもしれませんね。

SAKURAさんと旦那さんの働きかけ、お子さんも成長にともなって興味の幅が広がったこともあって、少しずつ計画的にお金を使うことを学べましたね。目標のために貯金することもできるくらいしっかりと成長されているということ、大変素晴らしいのではないでしょうか。 これからもお子さんが自分の夢や目標に向かって努力できることを願っております。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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