【神々の誕生】火の神を生んだイザナミに起こった悲劇とは?【眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 古事記の話】
神々の誕生
イザナミの死
【火の神を生んだイザナミが大火傷を負う】
国生みを終えたイザナキノミコトとイザナミノミコトは、次に大八嶋国に住むべき神々を生みました。
はじめに生まれたのはオオコトオシオノカミ(大事忍男の神)です。続けて、住居に関わる六柱の神々、海や水門に関わる三柱の神々が生まれました。
次に、イザナキノミコトとイザナミノミコトは、風の神であるシナツヒコノカミ(志那都比古の神)、木の神であるククノチノカミ(久々能智の神)、山の神であるオオヤマツミノカミ(大山津見の神)、カヤノヒメノカミ(鹿屋野比売の神)の四柱の神々を生みました。
さらに、生産に関わる三柱の神を生みました。船の神であるトリノイワクスフネノカミ(鳥之石楠船の神)、穀物の神であるオオゲツヒメノカミ(大宜都比売の神)、そして火の神ヒノヤギハヤオノカミ(火之夜芸速男の神)です。
しかし、悲劇が起こりました。火の神であるヒノヤギハヤオノカミを生んだとき、イザナミノミコトは女陰に大火傷を負い、それがもとで命を落としてしまったのです。
イザナミノミコトは苦しみながらも神生みを続け、死に至るまでに嘔吐したものと大便、小便から男女各一対、六柱の神が生まれました。
「愛しい妻を、たった一人の子のために失うとは……」
イザナキノミコトは亡骸のそばで泣き崩れました。するとその涙から、ナキサワメノカミ(泣沢女の神)が生まれました。
イザナミノミコトの亡骸は、出雲(いずも)の国と伯岐(ほうき)の国の境にある*¹比婆(ひば)の山に葬られました。
けれども愛する妻を失ったイザナキノミコトは、悲しみ嘆くばかりです。
そしてついに腰に帯びていた剣を抜くや、生まれたばかりの我が子に斬りかかり、ヒノヤギハヤオノカミの首をばっさりと斬り落としてしまいました。
すると、ヒノヤギハヤオノカミの*²血からまた神々が生まれます。
剣の先についた血が岩場に飛び散ると、イワサクノカミ(石析の神)など三柱の岩と剣の神々が生まれました。
剣の鍔つばについた血が岩場に飛び散ると、そこからはミカハヤヒノカミ(甕速日の神)など三柱の雷と火の神が生まれました。さらに剣の柄(つか)からイザナキノミコトの手の指を伝って落ちた血からは、水に関わるクラオカミノカミ(闇淤加美の神)とクラミツハノカミ(闇御津羽の神)の二柱の神が生まれました。
そして、ヒノヤギハヤオノカミの頭と胸、腹、陰茎、左右の手と足からは、マサカヤマツミノカミ(正鹿山津見の神)など、合わせて八柱の山の神々が生まれました。
イザナキノミコトが使った剣の名は天之尾羽張(あめのおはばり)、別名を伊都之尾羽張(いつのおはばり)といいます。
*¹ 島根県安来市伯太町に比婆山がある。鳥取県との県境にも近い。
*² 血は力の象徴とされている。
ヒノヤギハヤオノカミを生んだイザナミノミコトは火傷を負って命を落とす。
神生みで生まれた神々
神生みという大事業を象徴
・大事忍男の神(オオコトオシオノカミ)
住居に関わる神
・石土䈝古の神(イワツチビコノカミ)
・石巣比売の神(イワスヒメノカミ)
・大戸日別の神(オオトヒワケノカミ)
・天之吹男の神(アメノフキオノカミ)
・大屋䈝古の神(オオヤビコノカミ)
・風木津別之忍男の神(カザモツワケノオシオノカミ)
自然に関わる神
・大綿津見の神(オオワタツミノカミ)(海)
・速秋津日子の神(ハヤアキツヒコノカミ)(水門)
・速秋津比売の神(ハヤアキツヒメノカミ)(水門)
・志那都比古の神(シナツヒコノカミ)(風)
・久々能智の神(ククノチノカミ)(木)
・大山津見の神(オオヤマツミノカミ)(山)
・鹿屋野比売の神(カヤノヒメノカミ)(野)
生産に関わる神
・鳥之石楠船の神(トリノイワクスフネノカミ)(船)
・大宜都比売の神(オオゲツヒメノカミ)(穀物)
・火之夜芸速男の神(ヒノヤギハヤオノカミ)(火)
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・金山䈝古の神(カナヤマビコノカミ)(冶金)
・金山䈝売の神(カナヤマビメノカミ)(冶金)
・波邇夜䘫䈝古の神(ハニヤスビコノカミ)(粘土)
・波邇夜䘫䈝売の神(ハニヤスビメノカミ)(粘土)
・弥都波能売の神(ミツハノメノカミ)(水)
・和久産巣日の神(ワクムスヒノカミ)(農業)
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 古事記の話』監修:谷口雅博