志麻(浦島坂田船)「こんなに伸び伸びと気持ちよくライブ活動ができているのはみなさんのおかげです」 ツアーファイナル・Zepp Haneda(Tokyo)公演をレポート
SHIMA LIVE TOUR 2024 -star!-
2024.5.26 Zepp Haneda(Tokyo)
男性ボーカルユニット・浦島坂田船の志麻が、2024年5月に大阪・福岡・愛知・東京の4か所のZeppを巡るワンマンツアー『SHIMA LIVE TOUR 2024 -star!-』を開催。4月28日にリリースしたミニアルバム『star!』の楽曲を軸に、“星”というライブコンセプトに相応しい楽曲をちりばめた構成で新たな扉を開いたツアー、ここでは5月26日に東京・Zepp Haneda(Tokyo)にて行われた最終公演の模様をお伝えする。
ステージセンターのステップステージで光を浴び、歌い出しからファンの心を掴んだのは「ホシアイ」。白と黒のバイカラージャケットをスタイリッシュに着こなし、「会いに来たよ!」と笑顔で叫ぶ志麻。どこまでも響く純真な美声に大歓声が上がる。
「声ください!」という志麻に応えて、志麻リス(志麻ファンの総称)が志麻のイメージカラーである紫のペンライトを振りながら大きくコールした「キミノヨゾラ哨戒班」。「今日も楽しい思い出を作っていきましょう!」という志麻の呼びかけにコールの一体感がよりいっそう高まった「空空漠漠」。<痛み>を<抱えたままでいいよ>と寄り添ってくれる志麻は、志麻リスにとって<闇を照らす魁星>だ。
最初のMCで「ギューギューやね、トッポみたい!(笑)」といきなり笑わせる志麻。「サプライズしようと思って前髪切っちゃった」と言えば志麻リスの反応は上々で、1年ぶりの“志麻ワン”はやっぱり温かくて居心地がよい。
「志麻のライブといえばオラオラなイメージがあるやん? でも今年のライブツアーは、『star!』にちなんで神聖なイメージの始まりにしてみました。志麻の歌声を楽しんでくれたらと思います」と言ってタイトルコールしたのは、「回る空うさぎ (Piano Arrange)」だ。繊細なピアノアレンジ、<負けるな明日に><もう泣くなよ>というフレーズ、「願いは伝えないと、叶わない」という志麻の信念。思わず涙がこぼれそうだけれど、気づけば励まされている。
「Lights in Blizzard」は、ミニアルバム『star!』に収録の骨太でメロディアスなナンバー。<“自分”を生きたい><それでも、生きるよ>という強い意志は、ダンサー2人との息ぴったりなダンスにも宿っている。
ステップステージに立ち、「もっと大きな声出していきましょう!」と煽った「ZEAL」。キレッキレのダンスとラップで魅せた「FIREFIRE」。<恋の痛み 愛の渇き>を求めて歯止めが利かない様を艶っぽい歌声とダンスで表現する「cigar≠kiss」。検証や事実ではなく大多数の直感や合意に基づいて形成される真実、その危うさをあぶり出す「ウィキアリティ」。さまざまな色彩に染まって自分色を塗り重ねていく志麻のライブは、観ている側の感情も忙しい。
某紀行番組を思わせる幕間映像『世界の星座から』では、夜空にバンドメンバーの姿が浮かび、志麻のナレーションで遊び心たっぷりにメンバーを紹介。映像に流れ星が落ちたと思うと、「みんな、見つけにきたよ!」と言いながら志麻が再びステージに現れ、「スターサイン」へ。<同じ星を見続けよう>というフレーズにも心が動く。
『夜空に星を見に行こう!キャンピングカーの旅 in 高知』と題した幕間映像では、志麻が地元・高知県で街頭インタビューやご当地グルメ集めをしながら、キャンピングカーで日本三大カルスト(石灰岩などでできた地形)のひとつ、四国カルストへ。残念ながら雨天により星空を観ることはできなかったが、人々の温かさに触れ美味しいものに出会った志麻は、「お母さーん、高知に生んでくれてありがとう!」と感謝。もちろん、志麻リスも大感謝である。
スポーティーカジュアルなジャケット&ボトムスに着替えた後半戦は、『star!』の1曲目を飾る「悪女」でスタート。次曲の「Violet Thunder」にしても然り、歌にダンスにクールに振り切った志麻は無双状態だ。
ライブならでは、軽妙なトークで志麻リスとのコミュニケーションも存分に楽しんだロングMCのあとは、浦島坂田船のメジャーデビューアルバム『CRUISE TICKET』に収録の初ソロオリジナル曲「notebook love」を丁寧に歌った志麻。LEDビジョンにチャペルのステンドグラスウィンドが映し出された「永遠のシナリオ」の最後には、「みんなありがとう、出会えて最高や! ずっと一緒にいような!」と、<君>=志麻リスと生きる未来を誓った。
一転、『star!』に収録、バンドメンバーであるたいちょうが作詞・作曲を手がけた「No.17」では、色気満開なダンス、圧巻のロングトーンなど、志麻の進化があらわに。ダンサー3人それぞれがしれっと入れ込んできたうらたぬき、あほの坂田。、センラのモノマネ!?に「なんやこれ!(笑)」と志麻が意表を突かれた「Magiない♡カリグラフィック」。コールにジャンプに大合唱にフロアの熱量が果てしなく上昇していったロックでエモーショナルな「CRAZY BUNNY!!」。「俺に任せろ!」と頼もしくステップステージに立った「ロストワンの号哭」。これも『star!』に収録、バンドメンバーであるSumが作詞・作曲を手がけたセンチロック「さよならグッバイ」。「終わりたくないよ」と言う志麻、気持ちはみんな同じだ。
「こんなに伸び伸びと気持ちよくライブ活動ができているのはみなさんのおかげです、ホンマにありがとう。次の曲は、みんなで……あ、言わなくてもみんなペンライトを白に変えてくれるんですね」
志麻リスがペンライトの光を紫から白にチェンジして星空を演出したのは、『star!』の最後を飾る「0光年先の星」だ。「めちゃめちゃきれいやで、ありがとう!」と感無量な志麻と志麻リス、その心の距離は<たった0光年だけしかない>ことを、あらためて確かめ合えたようにも思う。
いつまでも色褪せないBUMP OF CHICKENの名曲「天体観測」の感動的なカバーで始まったアンコール。騒音計ではかった志麻リスの声援がツアー中で最高値の116デシベルを記録したご褒美として、顔出しの歌配信を行うと約束したあとは、「一番星に隠れていた志麻を見つけてくれたみなさんには感謝しかないです」という言葉から、「ニバンボシ」へ。もはや<淡い>ものではないその輝きは、これからもっともっと鮮やかに増していくだろう。
さらに、ただでは終われないツアーファイナル。「“志麻ワン”なのにあの曲をやってないって……一大事です!」と志麻が言いだし、志麻リスも一緒にタイトルコールしたのは「愛してもいいかい?」だ。志麻リスの愛のこもった大合唱に、「すげぇ!」と目を輝かせ、「志麻リス大好き!」と全力告白する志麻。回数を重ねるごとに相思相愛に拍車がかかる“志麻ワン”は、やっぱり沼である。
文=杉江優花
撮影=小松陽祐 (ODD JOB)