1980年版「将軍 SHŌGUN」監督、新しい「SHOGUN 将軍」は「アメリカ視聴者のことを全く考えていない」
ジェームズ・クラベルの原作小説を再ドラマ化し、大成功を収めた戦国ドラマ「SHOGUN 将軍」(2024-)。高評価の一因として日本の文化・歴史の忠実な描写が挙げられるが、原作を最初に映像化した「将軍 SHŌGUN」(1980)のジェリー・ロンドン監督は「アメリカ人にとっては理解しがたく、面白くない」と厳しい意見を述べている。
真田広之が主演・プロデューサーを務める「SHOGUN 将軍」は、 “SHOGUN” の座をめぐる陰謀や策略を描いた戦国スペクタクル。吉井虎長役の真田、戸田鞠子役のアンナ・サワイ、樫木藪重役の浅野忠信ら日本人キャストに称賛が寄せられ、エミー賞をはじめとする賞レースで作品賞・俳優賞などを次々と獲得している。
本作以前には、米NBCが1980年にドラマ化したミニシリーズ「将軍 SHŌGUN」があり、リチャード・チェンバレンが按針 / ジョン・ブラックソーン役、三船敏郎が吉井虎永役、島田陽子が戸田まり子役で出演。同作も高く評価され、エミー賞やゴールデングローブ賞を受賞した。
1980年版で監督を務めたロンドンは、米の取材で、同作の製作背景を回顧。当初、プロデューサーたちは日系人監督の起用を望んでいたため、「私は自分が適任であることを証明しなくてはならなかった」といい、「1か月ほど経ってようやく認められ、すべてが順調に進みました。非常に難しい作品でしたが、素晴らしい出来になりました」と振り返っている。
ロンドンは、同作と2024年版は「全く異なる作品」だと指摘。1980年版は西洋の視聴者にも受け入れられるように制作されたが、2024年版は「アメリカの視聴者にとって面白いものではない」と主張する。
「私の作品は、ブラックソーンとまり子のラブストーリーを軸にしていました。でも新作は日本の歴史を軸に、将軍の虎永を中心に展開されます。とても専門的で、アメリカの視聴者には理解しにくい。多くの視聴者と話しましたが、“内容が理解できなくて、途中で観るのをやめた” と言っていました。製作者たちは、アメリカの視聴者のことを全く考えていないんです。」
さらに、「彼らは基本的に日本向けに作った。自分の番組が模倣されるのは嫌だったので、その点は良かったです」とした上で、次のように持論を展開。「新作は滑稽です。私が話した誰もが、“わけが分からない。一体何の物語なんだ?”と言っていたんですから。私は全話見ましたが、最後まで見続けるのはとても難しい。(エミー賞を)受賞したのは、対抗できる大作がなかったからです。競合が少なかったといえます」。
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もっとも、「SHOGUN 将軍」は当時の日本の時代背景や文化を正しく描き、海外の視聴者からは「日本の歴史に興味を持つきっかけになった」との声も多く挙がっている。また、1980年版が主にブラックソーンの視点で語られていたのに対し、本作では日本語セリフが7割を占め、字幕を活用して複数の視点で物語が展開される。これにより、ストーリーの大部分を占める複雑な政治的駆け引きをより深く描き、虎永、藪繁、鞠子、ブラックソーンといったキャラクターたちの魅力が引き立てられている。
ただ、ロンドンが指摘したようにラブストーリーの描写が少ないことから、「感情移入しにくい」との意見があるのも事実。しかし、1980年版とは異なる点に焦点を当てることで、二作をうまく差別化し、「ゲーム・オブ・スローンズ」のような壮大な政治ドラマを好む現代の視聴者の志向にもマッチさせている。また、ラブストーリーに重点を置かず、個々のキャラクターをより深く掘り下げる形になったともいえるのではないだろうか。
なお、「SHOGUN 将軍」は世界的な成功を受けて、シーズン2の製作が決定。脚本作業は2025年2月の半ばに完了で、秋の撮影開始を目指してと伝えられている。
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