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内田彩「にぎやかな心たち」インタビュー――共に過ごしてきたファンとの想いが詰まった10th Anniversary Single

encore

──アーティストデビュー10 周年を迎えた心境から聞かせてください。

「あまり実感がなく、“10年も経っちゃったんだ…”って感覚の方が強いです。この10年間で、辛いことや悲しいこと、出会いや別れもたくさんありましたが、今、“あっという間だったな”って思えるのは、やっぱり楽しくて充実していたからだと思います。自分が身を置いている今の環境がとても素晴らしいからこそ、続けてこられたんだっていうのを“10年”という数字を前にして、改めて、感じているところです」

──そして、“10th Anniversary Single”と題したニューシングル「にぎやかな心たち」がリリースされますが、2014年11月12日にリリースされたデビューアルバム『アップルミント』に収録されていた人気曲「ピンク・マゼンダ」と同じ作家陣となっています。内田さんにとって「ピンク・マゼンダ」とはどんな曲ですか?

「「ピンク・マゼンダ」は10年間活動させてもらってきた楽曲の中で不動の1位の人気を誇っている曲なんです。“人気楽曲投票”を何度やっても、絶対に1位なんです」

──7周年の時にも記念MVをアップしていましたが、どうしてそんなに人気なんでしょう? アルバムのリード曲でもなかったですよね。

「今日も後輩の子の番組にゲストでお邪魔したんですけど、“「ピンク・マゼンダ」が好きです!”って言ってもらえて。1stアルバムをリリースしたときは、まさかこんなことになるなんて思わなかったですね」

「そしてスタッフさんから“10周年は、只野(菜摘)さんと坂部(剛)さんのお二人に新曲をお願いしたい”と聞いたときは、このお二人であれば、“10周年です! いえーい!!”のような楽曲にはならないだろうなと想像していたんですけど、実際この楽曲が届いたときに、なるほどなと…」

──どう感じましたか?

「10年間の歩みや、酸いも甘いもいろいろな気持ちを噛みしめるような楽曲でした。1stアルバムでいうと、リード曲「アップルミント」のように明るくて派手に盛り上がる感じではなくて、「ピンク・マゼンダ」の立ち位置のような曲なんです。何回も何回も聴くことで、自分の中でどんどん存在感が大きくなってくるというか…。聴くたびに、“もしかしたらこれってこういう意味なのかな?”とか、いろいろと考えさせられるところがあって。只野さんの歌詞でこの10年間をより実感させてもらえている気がしました」

──どういう意味だと捉えましたか?

「歌詞では、具体的なことをはっきりと言ってはいないのですが、ふわっと自分のことをなぞられている感じがするというか…。例えば、歌詞の1行目は<なんか 何で?と 声に出せないのに>から始まります。これだけでも、“そうだよな…”って思って。私のソロ活動自体、自分の中に沸いた、“これってどうしたらいいんだろう?”と思うことの連続だったんです。自分の中でいろんな疑問や葛藤を昇華しながら、支えてくれるみんなのおかげで、外に出していけたことが多かったんです。只野さんの歌詞には“どうしてわかるんだろう?”ってことが本当に多くて、そんな中でも私がすごく好きなのがDメロです」

──<愛がうまれ歌ができる/そこからまた愛する>っていうところですね。

「曲を作っていく作業には、まず、作詞家さんや作曲家さん、スタッフさんたちの愛があって。それを、私が“どうしよう? じゃあ、こうしよう!”って、若干押しつぶされそうになりながらも歌って、自分の歌になるんです。その歌をリリースして、ファンのみんなに届いてから、更にまた1つの愛が生まれて、ライブで表現すると、また形が変わっていく。それを歌詞にしてくれていたのが自分の中に刺さりました。さらに<ありがとうと またねを繰り返す/愛が消えて歌が残る そこからまた愛する/またね またね なんて 手を振った>と続くんですけど、10年間ずっとそれを繰り返してきたなと思って…」

──それはリリイベやライブの風景ですか?

「過ぎ去っていった出来事、全部です。曲を作ってくださる作家さんにも10年分の流れがあって、それを歌う私の中にもまたいろいろな変化があります。ファンのみんなも、転勤したり、海外に行くことになりましたとか、いろんな報告をしてくれて。“結婚しました”から“妊娠しました”になって、その次には生まれたお子さんと一緒に来てくれたりもするんです。」

──人生を共に過ごしていますね。

「毎回イベントに来てくれる方からは近況報告も聞けるんですけど、誰もがそういう状況なわけではないので、来られない方からはメッセージを頂いたりします。事情があって何年かぶりにイベントに来てくれて、“会えない間も、曲を聴いて元気もらってました”とか、“1回離れていたけど、また戻ってきました”という方もいますし、“新しくファンになりました”って10年目で初めて来てくれる方もいます。ファンのみんなにもそれぞれ人生があるけれど、“音楽はずっとみんなに残っている“って感じるんです。”あのとき、うっちーのライブ行ってたな“って思うことも、その人の人生の思い出の1つになっていたりするじゃないですか。10年活動を続けてきて、音楽についてそれを実感することが最近本当に多かったんですよね」

──<愛が消えて歌が残る>というフレーズはどう感じましたか?

「愛が消えているわけじゃないけれど、“最近ライブ行かなくなっちゃったな…”ってことはあると思うんです。でも、歌はずっと残るものじゃないですか」

──そうですよね。

「私も学生時代によくライブに行っていたアーティストさんがいたのですが、デビューしてから忙しくなって行けなくなってしまったけれど、それは嫌いになったわけじゃなくて。もしかしたらアーティストさん側からしたら、いなくなっちゃったファンだと思われているかもしれない。でもその間も、楽曲を聴いていたし、CDも買っていました。最近久しぶりにそのアーティストさんのライブに行ける機会があって、私はすごく嬉しかったんです。きっとみんなにもそういうタイミングがあって、この<またね またね なんて 手を振った>という歌詞もすごく素敵だなと感じました。このDメロが大好きです」

──では、タイトルの「にぎやかな心たち」というのは、内田さんの心の中だけじゃなく、“みんなの”ってことなんですね。

「はい。“たち”という表現がすごく嬉しくて、にぎやかな心たちが私の音楽のもとに集って、よりにぎやかになっているといいなと思います。“にぎやか”っていいなぁ…」

──しみじみと言っていますね。

「あははは。“うっちーの現場はいつも楽しそうだね”って言ってもらうことが多いんです。レコード会社内では異動といった移り変わりもあるんですけど、10年間ずっとお世話になっているスタッフさんもいますし、変わらずに仲良くワイワイと活動できていることに私はすごく心を救われています。だからこそ10年やってこられたし、今にぎやかにお届けできているところにこの言葉が届いたので、本当に10周年を迎えた今の私たちの歌のように感じています」

──ファンも含めた“私たち”?

「そうですね。私、イベントやライブではみんなに笑顔になって帰ってもらいたいんです。思いっきり楽しみたい人もいれば、じっくり楽しみたい人もいるだろうし…イベントでも恥ずかしくてあまり話せない人もいるし、すごく積極的に伝えてくれる人もいます。でも、集まってくれたみんなには、1回でもいいから、にっこりしてもらえる瞬間があったらいいなって思っています。私がそう思えるのは、きっと私が日々、みんなにそうさせてもらっているからだなってしみじみと思います」

──歌入れはどんなテーマを持って臨みましたか?

「今回も“どうやって歌おうかな?”と1時間ぐらい悩みました。もう少し下のキーも試していたんですけど、下げ過ぎると誰かわかんなくなっちゃうし。楽曲に合わせて歌っていくと、おしゃれでかっこいい歌い方にはなるけれど、私らしさはでなくて。10周年の温かさも出したいし、どのラインで歌ったらいいのかな?っていうのが難しくて。」

──「ピンク・マゼンダ」からの10年という月日を感じるトーンでちょっと大人っぽさもありますよね。MV撮影はいかがでしたか?

「今回初めましての監督さんだったので、まるでファーストMVかのような、10年にして私のことを改めて受け取っていただいたような新たな発見がありました」

──“ファーストMVのよう“というのは?

「今回は意外と“可愛らしい感じにしてほしい”っていうリクエストが多くて、私としてはちょっと恥ずかしいんですけど…(笑)。ジャケット写真はずっとビジュアル面を作ってきてくださったチームにお任せして、大人っぽい感じも出しつつ、大きいリボンをつけさせていただきましたね」

──カップリング曲の「ヘルプ!!」は、その大きなリボンをモチーフにしたリリックビデオが公開されていますね。

「作詞作曲の俊龍さんにはファーストアルバムに収録されていた「Breezinʼ」を作っていただきました。私が最初にレコーディングした曲が「アップルミント」と「Breezinʼ」だったので、初期のライブイベントでこの2曲を披露させてもらっていたんです。私の中では、「アップルミント」がデビューシングルだったら、カップリング曲が「Breezinʼ」みたいな気持ちがあって」

──「Breezinʼ」はどんな立ち位置の曲ですか?

「ライブで盛り上がる爽やかなナンバーです。大好きな曲ですし、それこそ10年間、ライブでも、ここぞというときに歌わせてもらいました。お客さんとのコールアンドレスポンスですごく盛り上がる、欠かせない曲になっていたんですけど、そんな楽曲を作ってくださった俊龍さんに10年後にお願いしたら、あんなに爽やかでラブリーな曲から “助けてくれ〜!”って楽曲になって(笑)」

──あはははは。

「デビューした頃のキラキラした可愛らしい少女のような楽曲から、“もう間に合わない、時間がない、助けてくれ!”という働く大人の歌になって、10年間の重みも感じています。ファンのみんなも環境が変わったり、社会人になったり、たくさんの修羅場をくぐり抜けてきたんだろうな…新たな共感を呼ぶ曲だと思います。そしてやっぱり、ライブですごく盛り上がるナンバーであることには変わりないので、みんなには “来たぞ! 俺たちの俊龍!!”と思っていただけると思います。あと、1ヶ所だけ、俊龍さんに私からリクエストして、歌詞を変えていただいたところがあります」

──どこですか?

「2番のサビに<迫りくる! 「ギリ」と「ギリ」が本番直前に/逃げたって無駄は承知/順調に行ったためしがない>いう歌詞があるのですが、確かに私のライブにはこういうことがよくあるんです。階段から落ちたり、穴に落ちたり、衣装を壊したり。その後の歌詞が最初は<乗り切ったあと/メシ美味い>だったんですが、私のライブではファンのみんなからよく“お水おいしい?”って聞かれて、私が“おいしい!”とか“うるさい!”って答えるやり取りが生まれていたので、<お水おいしい>の方がよりライブアンセム的な楽曲として喜んでもらえるんじゃないかな?と思って、ここだけ変えていただきました。10年間のライブでみんなと生まれた歌詞になっています」

──<今のわたしは以前と変わったかな?>とも歌っていますが、この10年で変わったことと、変わってないことを聞いてもいいですか?

「変わってないことは…未だに慣れない(笑)」

──ソロアーティストであることがですか?

「はい。正直、この10周年記念シングルも、その言葉の重みを感じて、いつもより緊張しているんです。でも、この間ゲストでお邪魔させていただいた番組(『鷲崎健のヨルナイト×ヨルナイト』)で、鷲崎さんに“10年間やっていたらそれなりに聴こえる歌い方もできるじゃない?でも、それをああでもないこうでもないって悩みながらやっているからいいよね!”ってまるで現場を見ているかのように言ってもらえたんですよ。1曲1曲 “どう歌おうか…”って悩んじゃうことで生まれるものがあるんだなって改めて思えましたし、そこはいつまで経っても慣れずにいきたいと思えたことかもしれません」

──では、変わったことは?

「本当にライブが楽しくなったことです。みんなから自信をもらえた分、責任や覚悟も生まれて、10年間で強くなったと思います。何があっても駆けつけてくれるみんながいて…駆けつけられなくても心を寄せてくれるみんなのおかげで、コロナ禍も乗り越えられたし、折れずにやってこられました。“ただじゃ転ばないよ!”という強さは、みんなに受け入れてもらえたからより強固になったと思います。あと、<実現したら儲けもん/可能性はゼロじゃない>という歌詞のような気持ちも強くなっています。真面目な打合せをしていても、突拍子もないアイデアが、深夜のテンションみたいにどんどん出てきて、それをチームみんなで実現したりしてきました。そういう今の環境が最高にありがたいですし、幸せだと思っています。」

──来年2月に開催される東名阪Zepp ツアー『AYA UCHIDA Complete TOUR ~marble~ にぎやかな10周年』はまさに“深夜のテンションで”語った末に生まれたようなツアーになっていますよね。全77曲を披露するコンプリートツアーの提案を受けた時はどう感じましたか?

「“やりたい!!”って思ったんですけど、“実現できるかは別問題だぞ…”と思って。だから、全曲ではなくて、新曲をメインにした10周年の記念ツアーっていう考えもあったんです。単発じゃないライブをやれるのも久しぶりだったので、ちゃんと一つのセットリストを作ってツアーを巡る案もあったんですけど、ずっとお世話になっているライブ制作のチームからも“やりましょうよ!”と言われて、そんなにぎやかなチームに囲まれて決心しました」

──どんなツアーになりそうですか?

「さすがに一公演で77曲は難しいので、“side A”と“side B”、2つのセットリストに分けています。それをどうやって実現するか、まだ不安は残っているんですけど、私のこのゆらゆら揺れている狭間の気持ち、10周年という重みの間で縮こまっているような気持ちは、この76曲目と77曲目が収録された10th Anniversary Singleで表現されているので、「にぎやかな心たち」、「ヘルプ!!」、どちらも聴いて楽しみにしてもらえたら嬉しいです!」

(おわり)

取材・文/永堀アツオ

RELEASE INFORMATION

2024年11月13日(水)発売
COZC-2130-2131/2,090円(税込)

内田彩 10th Anniversary Single「にぎやかな心たち」

2024年11月13日(水)発売
COCC-18233/1,430円(税込)

▼配信はこちら >>>内田彩 10th Anniversary Single「にぎやかな心たち」

LIVE INFORMATION

AYA UCHIDA Complete TOUR ~marble~ にぎやかな10周年 side A
2025年2月15日(土) 16:30開場/17:30開演 大阪 Zepp Osaka Bayside
AYA UCHIDA Complete TOUR ~marble~ にぎやかな10周年 side B
2025年2月16日(日) 16:30開場/17:30開演 愛知 Zepp Nagoya
AYA UCHIDA Complete TOUR ~marble~ にぎやかな10周年 side A
2025年2月23日(日) 昼公演13:00開場/14:00開演 東京 Zepp DiverCity(TOKYO)
AYA UCHIDA Complete TOUR ~marble~ にぎやかな10周年 side B
2025年2月23日(日) 夜公演17:00開場/18:00開演 東京 Zepp DiverCity(TOKYO)

バンド:河合英史(Key.)/大橋英之(Gt.)/二村学(Ba.)/SHiN(Dr.)AYA UCHIDA Complete TOUR ~marble~ にぎやかな10周年

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