ワーグナー楽劇の原点、呪われた船長を救う永遠の愛を描いたオペラ『さまよえるオランダ人』を新国立劇場で上演
2025年1月19日(日)~2月1日(土)新国立劇場 オペラパレスにて、2024/2025 シーズンオペラ ワーグナー『さまよえるオランダ人』が上演される。
「オランダ人船長が神を罵った罪で永遠に海をさまよい続ける」という幽霊船伝説をもとに書かれたワーグナー初期28歳のオペラ。永遠に暗黒の海をさまよい続ける呪われたオランダ人船長を乙女ゼンタの愛と自己犠牲が救う物語で、この「愛による救済」はワーグナー生涯のテーマとなった。ワーグナーが作風を確立し、のちの名作群への幕開けとなった傑作で、大オーケストラによる有名な序曲、オランダ人のモノローグ、ゼンタのバラードなど聴きどころも満載。音楽とドラマが密接に結びつき、幽霊船と若い恋人たちのドラマが一気に展開する。
マティアス・フォン・シュテークマンの演出は明快で分かりやすいと定評があり、オーソドックスながらも美しい色彩が印象的で、音のスペクタクルと共に幽霊船の出現など舞台ならではのスペクタクル性も楽しむことができる。
指揮は満を持して新国立劇場初登場となるマルク・アルブレヒト。日本のオーケストラへの客演も多いアルブレヒトは、世界の歌劇場で活躍しており、特にオランダ国立オペラでの数々の世界的話題作で知られている。『さまよえるオランダ人』での新国立劇場デビューは、特にワーグナー、R.シュトラウスなど後期ロマン派で名高いアルブレヒトの本領発揮の機会となる。
タイトルロールのオランダ人は、世界最高峰の“オランダ人歌い”であり、2012年新国立劇場の『さまよえるオランダ人』でも強烈なカリスマ性とダークな魅力で観客を虜にしたエフゲニー・ニキティン。世界中で活躍するニキティンは、新国立劇場へは13年ぶり、待望の再登場となる。乙女ゼンタにはワーグナー歌いとして高く評価される強靭な声の持ち主エリザベート・ストリッドが初登場。エリックにイギリス出身の成長株のヘルデンテノール、ジョナサン・ストートン、ダーラントに世界で活躍する松位浩が登場。さらに国内からも、舵手役にユーゲント・ヘルデンテノールの旗手として躍進中の伊藤達人、マリーにバイロイト音楽祭出演経験も持つ国内屈指のメゾ金子美香と、オペラファンには見逃せない歌手が揃った。そして、新国立劇場合唱団の勇壮な響きも聴衆の心を捉えるはずだ。
ワーグナーのオペラは難解ではないかと躊躇される方も、『さまよえるオランダ人』は絶好の入門編とも称されており、ワーグナーの管弦楽曲が好きな方にも、さらなるワーグナーの魔力に触れてみてはいかがだろうか。
なお、本公演は文化庁子供舞台芸術鑑賞体験支援事業により、18歳以下の青少年約180名を無料招待する試みを行っている。詳細は公式サイトにて。
【『さまよえるオランダ人』あらすじ】
悪魔の呪いを受けて永遠に海をさまようオランダ人船長。7年に1度だけ上陸が許され、永遠の愛を捧げる乙女に出会った時、呪いから解かれる運命にあった。彼はノルウェー船船長のダーラントと出会い、娘のゼンタに求婚する。宿命的な出会いを感じたゼンタは、永遠の貞節をオランダ人に誓う。ゼンタを愛するエリックは彼女の心変わりを責め、それを聞いたオランダ人は絶望し出航を命じる。ゼンタは彼を追って海中に身を投じ、彼女の永遠の愛によるオランダ人は呪いから救われる。