千葉を走って78年 来年3月末に歴史終える新京成の歩みを「マイメモリーズトレイン」で知る(千葉県鎌ケ谷市、松戸市)【コラム】
残すところ4カ月と少々。千葉県東葛エリアを走る準大手私鉄の新京成電鉄は2025年4月1日、親会社の京成電車に吸収合併され、1946年10月の会社設立から78年間の歴史に終止符を打ちます。
そんな新京成が、2024年11月8日から運転を始めた「マイメモリーズトレイン」。車内広告枠を企業史をたどる秘蔵写真で埋め、特製ヘッドマークやラッピングで、利用客に創業以来の歩みを振り返ってもらう趣向です。
取材機会を探していたところ、新京成総務人事部広報課から入ったのが「11月16日の『新京成サンクスフェスタinくぬぎ山』で、マイメモリーズトレインを展示します」の情報。イベント当日、鎌ケ谷、松戸の両市にまたがるくぬぎ山車両基地に向かいました。
本コラム、前半はマイメモリーズトレインでたどる新京成略史、後半はファンや家族連れ約6000人が来場したフェスタの会場風景などをお送りします。
終戦翌年に歴史がスタート
新京成の歴史は、終戦翌年の1946年に始まります。新京成線の多くは、陸軍鉄道連隊が建設した軍用鉄道がルーツ。路線はカーブが多く、これには「訓練用に線路をわざと曲げた」の説もありますが、実際は軍規で決められた建設線路延長を確保するため、路線をうねらせたというのが真相のようです。
会社設立前には、西武鉄道との引き合いがありました。西武も軍用線の営業転換をもくろんでいました。京成vs西武、千葉県に事業基盤を持つ京成に軍配が上がりました。
1947年、最初に開業したのは新津田沼(初代)~薬園台間2.5キロ。終点の松戸に到達したのは、8年後の1955年です。全線が軍用鉄道通りでなく、ショートカットした区間もあります。
初期の車両は京成から譲受
歴代主要車両を、マイメモリーズトレインの掲出写真も交えてご案内します。ちなみに、新京成は1971年デビューの初代800形(現在は廃車)までは、京成からの譲受車両でした。
最初期の39形は京成の木造車で、開業時に新京成へ。大正末期から昭和初期に製作、屋根はダブルルーフ、正面は5枚窓でした。
1950年代に活躍した130形は、京成が1926年の成田(当時は成田花咲町)延伸時に増備した車両。正面5枚窓ながら、中央の1枚が大判です。前面非貫通で、運転台は中央にありました。
撮影駅は藤崎台で、1953年に国鉄乗り換えの「新津田沼」として開業。しかし、国鉄津田沼から約500メートルも離れて不便で、新京成は国鉄津田沼に近隣に新しい新津田沼を開業、旧新津田沼は藤崎台に駅名変更しました。
輸送力増強に貢献した200形
続く300形は、1950年代後半の京成津田沼~松戸間全通時の主力車両です。京成が木造車を半鋼体化。旧車台枠流用で全長14メートルの小型車、客用扉は片側2ドアでした。
「輸送力増強に大きな貢献」の説明が付く220形は、こちらも京成が製作。更新200形の呼称もあり、一代前の更新100形も含め多くの車両が新京成に移籍しました。時代が平成に変わった1990年まで現役でした。
屋根上ベンチレーター(通風器)など1両ごとに細かい違いがあり、京成・新京成ファンの研究対象になっています。
京成合併後の運用やイベントはこれから
自社発注の新性能電車は800形、8000形、8800形、8900形、N800形、80000形の6形式あります。800形全廃に続き、8000形も2021年11月までに全車が引退しました。
新京成車両をめぐっては2024年7月以降、「N800形復刻塗装電車」、「8800形千葉線直通色復刻塗装電車」、「8800形オリジナル色復刻塗装電車」とニュースが続きます。京成への合併前に、新京成ファンにシャッターチャンスを提供します。
新京成線は、2025年4月以降「京成松戸線」に。ファンの皆さまは、合併後の車両運用やイベントが気になるところでしょうが、フェスタ会場での総務人事部広報課の話によると、「詳細は検討中」。情報が判明すれば、本サイトでお知らせします。
駅の今昔やトピックスの写真も
あらためて「マイメモリーズトレイン」について。車両はN800形1編成(6両)で、2025年3月上旬までの運行が予告されます。京成千葉線にも乗り入れます。
今回は旧車中心にまとめましたが、車内は駅の変遷や78年間のトピックスをあしらったポスターが広告スペースを埋めます。
写真は全部で50点ほど。新京成が創業時からのストックで埋めました。広報課によると運行開始以来、車内で写真を撮るファンが目立つとのこと。ダイヤは新京成のホームページで案内されます。
「京成になってもフレンドリーな鉄道を」
最後にサンクスフェスタの会場風景。新京成ラストとあって、2024年は午前、午後の2部制。各回3000人の事前応募制でしたが、約1万2000人(件)もの応募があったそう。新京成はファンに愛される鉄道でした。
会場では、マイメモリーズトレイン以外にも多彩な催し。全車種ラインナップ展示会、ドア開閉体験、運転席での記念撮影、Nゲージ鉄道模型運転会、ミニ電車運転、流鉄、北総鉄道など千葉県の鉄道会社も参加した物販ブースに長い列ができました。
沿線の千葉県船橋市から親子4人で来場したファンは、「新京成は駅間が短く、地域密着の鉄道という印象を持っています。会社は変わっても、現在のように沿線住民やファンにフレンドリーな鉄道であり続けてほしい」と話してくれました。
(本コラムは一部「新京成電鉄・駅と電車の半世紀」〈彩流社刊〉を参考にしました。旧形車の写真は筆者がマイメモリーズトレイン車内で撮影しました)
記事:上里夏生