伊藤蘭とキャンディーズの新しい伝説が生まれる!ツアーファイナルは東京ガーデンシアター
キャンディーズ解散から41年、伊藤蘭がソロ歌手としてデビュー
もはや伝説となっている、後楽園球場でのキャンディーズの解散コンサートが開かれたのは1978年4月4日のことだった。人気絶頂の中で惜しまれつつ活動を終えた70年代最高のアイドルグループ、キャンディーズ。それから実に41年もの時を経た2019年、予想もしなかった朗報がもたらされることになる。それはメンバーだった伊藤蘭のソロ歌手デビューという思いもよらない嬉しい報せだった。
1972年4月、渡辺プロダクションが擁するスクール・メイツに所属していた、伊藤蘭(ラン)、藤村美樹(ミキ)、田中好子(スー)の3人がNHKの新番組『歌謡グランドショー』のマスコットガールに抜擢される。番組プロデューサーによって “キャンディーズ” と名付けられた彼女たちは、翌1973年9月にCBS・ソニーから「あなたに夢中」で歌手デビュー。そして1975年2月にリリースされた5枚目のシングル「年下の男の子」でブレイクして以降次々にヒットを連ね、トップアイドルとして大活躍を遂げる。
しかし1977年7月17日、日比谷野外音楽堂で開催されていたコンサートの終わり間際に突然解散を宣言。ごく一部のスタッフにしか知らされていなかったそうで、ファンだけではなく世間をも揺るがす電撃発表だった。この時の記者会見で放たれた “普通の女の子に戻りたい” という言葉が流行語となったほど。当初は9月いっぱいで解散する意思を固めていた3人であったが、その後事務所との話し合いで翌年の春まで半年間先送りされることになる。全国縦断コンサート『ありがとうカーニバル』が催された後、ラストステージとなったのが後楽園球場。約4時間にも及んだファイナルカーニバルは伝説のライブとなった。
キャンディーズ解散後に復帰した伊藤蘭と田中好子は映画・テレビ・舞台など女優活動に専念。藤村美樹はシングルとアルバムを1枚だけ出すも芸能界に戻ることはなく、キャンディーズが再結成されることはなかった。田中好子亡き後は完全に封印されてしまったと思っていた歌手活動が、よもや伊藤蘭のソロで再開するとは! それでもキャンディーズのかつてのヒットナンバーを歌ってくれる機会はなかなかないだろうと思っていたのだが…。
様々な魅力が詰まった花束のようなアルバム「My Bouquet」
2019年5月にリリースされたオリジナルアルバム『My Bouquet』は、作家陣に井上陽水、阿木燿子&宇崎竜童、トータス松本、門あさ美、森 雪之丞らのバラエティーに富んだ布陣。さらには丸谷マナブや若田部誠といった現在のJ-POPシーンで活躍する若手作家も名を連ねる意欲作で、70年代歌謡ポップス調から、ボサノバ、スウイングジャズ、バラード、ポップロック、最先端のJ-POPまで、バラエティに富んだ楽曲が並んだ。伊藤蘭自身も3曲の作詞を手がけている。そのタイトルに相応しく様々な魅力が詰まった花束のようなアルバムとなった。
そして同年6月には東京と大阪でファースト・ソロコンサートが開催された。東京の会場は、所縁の地・後楽園にある東京ドームシティホール。解散から30年となる2008年に『全国キャンディーズ連盟2008大同窓会〜CANDIES CHARITY CARNIVAL』が開催されたホールでもある。3人こそ不在ながらMMPの生演奏でファイナルカーニバルを再現し、大量の紙テープが飛び交った神イベントだった。それからさらに11年、そのステージに伊藤蘭本人が登場するコンサートはファンにとって感無量というしかなかった。
前半は新たなアルバムの曲が歌われ、中盤にはキャンディーズ時代に自ら作詞や作曲をした2曲も披露された。ファンには馴染み深い「アンティック・ドール」を聴けた時点で既に涙腺が緩んでいたが、その輝きに満ちたボーカルを堪能していたところで、後半は41年前に止まった時計の針が再び動き出す。「春一番」を皮切りに、「その気にさせないで」「ハートのエースが出てこない」「年下の男の子」とキャンディーズのナンバーが次々に歌われ、観客は言葉を失うほどの感動に酔いしれた。衰えを知らぬ瑞々しいボーカルと変わらぬ笑顔に感無量の一夜であった。
翌2020年には『伊藤蘭コンサート・ツアー2020〜My Bouquet & My Dear Candies!~』と題されたツアーが行なわれ、2月の新宿文化センターでは、「危い土曜日」から「微笑がえし」まで、キャンディーズのシングル曲がなんと9曲も歌われて感激もひとしお。大阪、愛知公演の後はコロナ禍でかなりの本数が中止や延期になるも、10月にはLINE CUBE SHIBUYA(旧:渋谷公会堂)でのコンサートが行なわれ、新曲「恋するリボルバー」が初披露された。
2023年には「NHK紅白歌合戦」にソロで初出場
2021年には待望のセカンドアルバム『Beside you』がリリースされ、『伊藤蘭 コンサート・ツアー2021〜Beside you & fun fun Candies!~』を敢行。大阪フェスティバルホールに始まり、東京は聖地である日比谷野外大音楽堂でのコンサートが実現し、立て続けに中野サンプラザでも行われて、キャンディーズパートもすっかり恒例となった。ちなみに『Beside you』のリリース日は、1973年にキャンディーズが「あなたに夢中」でデビューした記念日の9月1日に設定されていた。おそらく偶然ではなかっただろう。
以降もコンサートツアーは毎年行なわれ、2023年にはサード・アルバム『LEVEL 9.9』をリリース。中でも安部純が手がけた「Shibuya Sta. Drivin' Night」は昨今人気が定着しているシティポップを思わせる洗練された楽曲で新たな方向性を感じさせる秀作。アナログシングルも限定リリースされた。そして大晦日の『第74回NHK紅白歌合戦』にソロで初出場を果たし「キャンディーズ50周年 紅白SPメドレー」が披露された年でもあった。2024年のツアーではずっと歌われてこなかった「わな」も解禁されるなど毎回話題は尽きない。
伊藤蘭とキャンディーズの新しい伝説、東京ガーデンシアターのコンサートも間近
とにかく素晴らしいのは、キャンディーズ時代に聴かせてくれていた、潤いに満ちた跳ねるような歌声が、長年のブランクを経ても健在であること。それも全く衰えていないどころか、むしろ磨きがかかっていることに驚異を感じる。振付などのパフォーマンスもステージを重ねる毎に明らかに向上しているのだ。歌うことを心から楽しんでいる様子が窺えるのがなにより嬉しい。
伊藤蘭とキャンディーズの新しい伝説が紡がれてゆくのを見られるのはファンにとって幸福な時間でしかない。『伊藤蘭 〜Over the Moon〜 コンサートツアー 2024-2025』の東京ガーデンシアター公演も1月25日に控え、公演も楽しみで堪らない。最後になりましたが、お誕生日おめでとうございます!