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大阪万博で注目のアルザスワイン 「ドメーヌ・ヴンシュ・エ・マン」「ドメーヌ・セリーヌ・メッツ」

ワイン王国

大阪万博で注目のアルザスワイン 「ドメーヌ・ヴンシュ・エ・マン」「ドメーヌ・セリーヌ・メッツ」

今年、大阪・関西万博のメインスポンサーに選ばれたこともあり、アルザスワインが話題になっている。6月にアルザスを訪れた際、ストラスブールから15キロメートルほど下ったバレスハイム村のレストラン「オ・ブッフ」で「ドメーヌ・ヴンシュ・エ・マン」のティエリー・マン氏と「ドメーヌ・セリーヌ・メッツ」のセリーヌ・メッツさんと夕食をともにしながら、両ドメーヌのワインを試飲した。

ドメーヌ・ヴンシュ・エ・マン(Domaine Wunsch & Mann)

コルマール近郊のヴェッテルスハイムに拠点を置く「ドメーヌ・ヴンシュ・エ・マン」は1948年に現当主のティエリー・マン氏の曾祖父ヴンシュ氏と祖父マン氏によって作られたアルザスの典型的な家族経営のドメーヌだ。現在、ドメーヌを経営しているのはマキシムとティエリー・マン兄弟。2009年にドメーヌに加わったマキシム氏が生産と醸造を担当し、2015年にドメーヌに加わったティエリー氏が販売部門を管理している。2人はドメーヌ・ヴンシュ&マンの第4世代にあたるが、ヴンシュ家、マン家とも18世紀から続くブドウ栽培家の家系で、実質的には10~11世代目に当たるという。 3つのグラン・クリュ(フェルシグベルグ、ヘングスト、シュタイングリューブレール)を含む約20ヘクタールの畑で2008年からオーガニック栽培を実践している。特に注力している『グラン・クリュ・シュタイングリューブレール』はかつて石切場だった場所で、粘土の下に巨大な石灰岩ブロックが横たわる特殊なテロワールを持つ。 醸造では人為的介入を最小限に抑える自然なアプローチを採用。100年を超える大樽から現代的なステンレスタンクまで、多様な容器を使い分けて各品種の個性を最大限に引き出している。

ドメーヌ・ヴンシュ・エ・マンの販売部門を担当するティエリー・マン氏

『Muscat 2023年』(ミュスカ):アルザス・ミュスカとミュスカ・オトネルのブレンド。3日間のマセラシオン。 ベルガモットやジャスミンのような華やかな香り。味わいはドライで、ほのかな苦味と塩味が感じられ、食事とともに楽しめるガストロノミックなワイン。餃子との相性も良いという。

『Gewurztraminer 2023年』(ゲヴュルツトラミネール):ライチやバラの香りを持つゲヴュルツトラミネールを、辛口スタイルに仕上げたワイン。 豊かなアロマがありながら、重すぎずバランスが取れている。タイカレーやロックフォールチーズ(青カビチーズ)など、風味の強い料理とも合わせやすい。

『Riesling "Cuvée du Roi Clovis" Sélection Parcellaire 2023年』(リースリング 「クロヴィス王のキュヴェ」):グラン・クリュの区画ではないが、同じ丘陵地にある粘土石灰質土壌の優れた区画から造られるリースリング。ミネラル感が豊かで、美しい緊張感と塩味が特徴。非常に品質の高いリースリング。

『Riesling Grand Cru Steingrubler 2022年』(リースリング グラン・クリュ シュタイングリューブレール):2022年の暑いヴィンテージのボトル。 香りが開いており、表現力豊か。果実の豊かさとミネラルが見事に調和している。

『Pinot Noir "Classique" 2023年』(ピノ・ノワール「クラシック」2023年):除梗したブドウを6日間マセラシオンし、ルモンタージュを行う。果実味とフレッシュさを保つため、ステンレスタンクでのみ熟成。

『Pinot Noir Grand Cru Hengst 2023年』(ピノ・ノワール グラン・クリュ ヘングスト 2023年):除梗したブドウと全房を交互に重ねる「ミルフィーユ」製法。12ヶ月熟成。日本に輸出された最初のピノ・ノワール グラン・クリュの一つ。凝縮感がありながらもエレガント。ブルゴーニュのピノ・ノワールに近いニュアンス。非常にポテンシャルの高いワイン。

ドメーヌ・セリーヌ・メッツ(Domaine Céline Metz)

システム・エンジニアからワインの世界に転身したセリーヌ・メッツさんは、現在アルザス女性醸造家協会(Divine d'Alsace)の会長も務める新世代のリーダー的存在だ。2013年に、パートナーのジャン=ミシェル氏と共に、家族の伝統を守るために、パリでの生活とキャリアを捨ててアルザスに移住した。 ドメーヌ・セリーヌ・メッツは古い歴史を持つドメーヌ・ユベール・メッツを継承したもので、セリーヌ・メッツさんは11世代目に当たる。 グラン・クリュ・ヴィーベルスベルクを含む、ブリエンスヴィレール村の約10ヘクタールの畑でオーガニック栽培を実践し2021年に公式認証を取得、2023年からビオディナミ農法を開始した。2024年は困難な年で11回もの防除が必要だったが、オーガニック栽培の原則を貫いた。彼女の醸造哲学は「エレガンスと緊張感」で、アルコール度数を13度以下に抑え、ワインの繊細さを重視している。辛口のシルヴァネール、ピノ・ブラン、リースリングからアロマティックなミュスカ、ピノ・グリ、ゲヴュルツトラミネール、そして赤ワイン品種のピノ・ノワールまで幅広く手がけている。 ドメーヌの特徴の一つは、アーティスティックなラベルデザインだ。「レクレアシオン」のラベルは、友人のアーティストが雑誌の切り抜きで作成したコラージュを使ったもので、SNSで話題となった。ワインの品質だけでなく、視覚的な美しさも重視するメッツさんの哲学が表現されている。

ドメーヌ・セリーヌ・メッツの醸造・管理責任者、セリーヌ・メッツさん

『Crémant d'Alsace Brut Nature 2021年』(クレマン・ダルザス ブリュット・ナチュール 2021年)ドザージュを行わない辛口のスパークリングワイン。ピノ・ブラン60%、ピノ・オーセロワ30%、リースリング10%のブレンド。 ドライながらも辛すぎず、豊かな風味と自然な厚みがある。長期熟成による複雑味が感じられ、質の高さが伺える。

『Récréation 2023年』(レクレアシオン 2023年):ミュスカ50%、ピノ・グリ45%、リースリング5%のブレンドワイン。「気晴らし」という名前の通り、アペリティフなどで気軽に楽しめるスタイル。 ピノ・グリのボリューム感とミュスカの華やかなアロマが主体で、リースリングが爽やかさをもたらしている。親しみやすく、かつ飲みごたえのある白ワイン。

『Riesling Réserve de la Dîme 2022年』(リースリング レゼルヴ・ド・ラ・ディーム 2022年):ドメーヌのクラシックなスタイルのリースリング。2022年の暑く乾燥したヴィンテージ。 香りが開いており、親しみやすい味わい。早くから楽しめるスタイル。

『"W" 2023年』( "W" 2023年):グラン・クリュ・ヴィンツェンベルクの花崗岩質のテロワールを最大限に表現するために作られたキュヴェ。400リットルの樽と500リットル陶器の甕で発酵。力強くミネラル感が際立っており、まだ若々しいが、将来が楽しみなポテンシャルを秘めている。

『Pinot Noir "Vieilles Vignes" 2023年』(ピノ・ノワール ヴィエイユ・ヴィーニュ 2023年):手摘み収穫、全房発酵、3週間のマセラシオン、ステンレスタンクでの熟成。
胡椒のようなスパイシーなニュアンスがあり、非常にエレガントで同時に凝縮感がある。

「ドメーヌ・ヴンシュ・エ・マン」は2年前から日本への輸出を開始。マン氏は「日本の消費者の繊細な味覚は、我々のワインの真価を理解してくれる」と語る。メッツさんも、日本の食文化とアルザスワインの相性の良さを強調し、特に和食やフュージョン料理とのペアリングの可能性を探求している。ブルゴーニュのピノ・ノワール価格高騰の中で、アルザスの高品質ピノ・ノワールへの注目が高まっているのも追い風だ。 両ドメーヌとも気候変動への適応を重視している。メッツさんは標高の高い区画への新植や、より暑さに強い台木の選択を検討し、2023年から畝間に植物を植える「カバークロップ」の導入も開始した。「ワイン造りは次世代への贈り物」という彼女の哲学は、持続可能な農業実践とアルザス地方の伝統的価値観の継承の両立を目指している。伝統を重んじながら革新を続けるヴンシュ&マンと新しい発想で挑戦を続けるセリーヌ・メッツは、アルザスワインの多様性と可能性の豊かさを感じさせる。

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