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国産食材を笑顔でいただく「国消国産」の取り組み。物価高のいまだからこそ注目したい。JA 主催のシンポジウムでその意義を学びました。

アットエス

キャベツが1玉500円、昨年の2倍に跳ね上がった米価。どうなっていくのでしょう-。食を巡る悩ましいニュースを耳にします。そうしたニュースで決まって登場するのが「消費者はとても大変」「節約するしかない」との街頭インタビューです。政府が、消費者物価の上昇は2%台で安定的に推移していると説明しても、スーパーで買い物をする庶民感覚とはズレがあるから。

政権批判を強める野党は「国民は物価高にあえいでいる」と叫び、財源確保を脇に置いて負担軽減の“手柄争い”に躍起です。しかし、この国会論戦に違和感を覚えます。インフレを実感しやすい生鮮食料品の価格は供給量と消費志向の相関関係で決まります。収量が自然環境に左右されるためそもそも価格変動が大きく、高値の大半は品薄が原因。一次産業の従事者があまねく利益を得ているからではありません。

米価は最近まで「米離れ」による消費拡大策を論じていたはず。なのに品薄で値上がり。買いだめしている中間業者の存在が報じられています。こんな状況だからこそ、地産地消とそこから発展した国消国産を真剣に考える意義があると思います。

四季折々の農作物や四方の豊穣の海から供給される海産物を適切に国内流通させ、季節に応じた調理方法で味わう。そこに地産地消と国消国産の原点があります。大量生産、大量消費と大量廃棄の悪循環を断ち切り、身の丈の食生活を実践することにつながります。

「しょうゆ3%、みそ14%」

「これが無ければ日本食は成り立たないしょうゆとみそ。原料は大豆ですが、国産の大豆がどれだけ使われているのか知っていますか」-。このほど聴講したシンポジウム「国消国産を考える~私たちの選択が未来を創る!」で講師の栄養学博士でジャーナリストの井出留美さんが問い掛けました。

主催は静岡県農業協同組合中央会(JA静岡中央会)。問いの正解はしょうゆが3%、みそが14%。豆腐や納豆も国産大豆の使用は30%以下で、日本の食料自給率の実態を具体的食材で示すとこうなります。

輸入食材が急速な人口増加と高度経済成長を支えてきたのは事実で、自給率の問題は一朝一夕に解決できません。しかし、そこに潜む危機に無関心でいると将来、ひどいしっぺ返しが待っているとシンポで学びました。

キーワードは「投票」

井出さんは「農家のために私たちにできること」と題して三つのコメントを紹介しました。共通するキーワードは「投票」です。

1.「ぜひ覚えておいてほしいのが、全ての食料品の購入が投票になることだ」(ジェーン・グドール:動物行動学者、霊長類学者、人類学者)
2.「買う行為は、未来へ何を残し何を残さないかを決める投票だ」(岩城紀子:スマイルサークル社長)
3.「私たちはフォークで投票することができる」(マリオン・ネスレ:ニューヨーク大名誉教授)


選挙で自分の将来を託す政治家を選択するのと同様に、売り場でどの食品を選ぶかは未来へどんな食品を残すべきかを投票するのと同じ。なぜなら、多くの人が選択する品は増産され、買わない品は市場から姿を消すから。私たち一人一人の消費行動の積み重ねが農業の盛衰を左右するのです。

食料安全保障という考え方

「農政の憲法」と称される改正食料・農業・農村基本法が昨年5月に成立しました。1990年の制定から四半世紀を経て初の改正。基本理念に据えたのが食料安全保障の確保です。

農林水産省は全国民が良質な食料を合理的価格で入手できるようにすることが国の責務とし、国内生産を基本に輸入や備蓄を組み合わせて安定的な供給を確保する取り組みを食料安全保障と位置付けました。

私たちが「安いから」「味に大差ないから」と外国産を選択し続けたら、食糧安全保障は絵に描いた餅になりかねません。

農水省によると、ロシアのウクライナ侵略などをきっかけに日本国内の肥料や飼料、高熱動力費は30~50%も上昇しました。なのに農作物の市場価格のアップは平均すれば10%ほど。

農業経営の環境は悪化し、ここ5年で新規就農者は2割も減りました。持続可能な農業経営は難題が山積しています。ここに着目せず、農作物や食料品の値上げだけを問題視する報道やインフレを声高に政治利用する政治家をうのみにしてはなりません。

井出さんは講演の中で「肉は肉屋さんで、米はお米屋さんで買いましょう」と呼びかけました。量販店が食材の安定供給に果たす役割は重要ですが、地産地消と国消国産を支える農業経営では地域で頑張る個店の存在が欠かせないからです。

皆さん、食料品を品定めするときもう少し産地表示に注目してみませんか。中島 忠男(なかじま・ただお)=SBSプロモーション常務
1962年焼津市生まれ。86年静岡新聞入社。社会部で司法や教育委員会を取材。共同通信社に出向し文部科学省、総務省を担当。清水支局長を務め政治部へ。川勝平太知事を初当選時から取材し、政治部長、ニュースセンター長、論説委員長を経て定年を迎え、2023年6月から現職。

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