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ひきこもりが続く自閉症息子。もっと早く出合いたかった「訪問看護」利用までの道のり

LITALICO発達ナビ

ひきこもりが続く自閉症息子。もっと早く出合いたかった「訪問看護」利用までの道のり

監修:新美妙美

信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教

閉ざされた訪問看護への道

息子が児童精神科に通い始めたのは、小学校3年生の頃でした。不登校をきっかけに受診したのが始まりです。最初の頃は一緒に受診できていたのですが、本人の調子がどんどん悪くなるにつれ、外出自体が困難になりました。そんな状況を心配してくださった特別支援学校の先生が「訪問看護を検討されてはどうですか?」と提案してくださいました。先生ご自身も障害のあるお子さんを育てていらっしゃるので、息子の様子を特に気にしてくださっていました。

しかし当時、子どもが利用できる精神科の訪問看護は圧倒的に少なく、いくつか問い合わせをしてみましたが、子どもは難しいということでほとんどの事業所に断られてしまいました。唯一受け入れてくれると仰ってくださった訪問看護ステーションの方は、ご自分のお子さんがうちの息子と同じ年だということで、かなり親身になって話を聞いてくださいました。

そして、児童精神科の担当医に「訪問看護を利用したい」と相談をしました。先生は「私の方針として、精神科の訪問看護は、お子さんにはお勧めできません。また、息子くんは学校の先生との関わりによる心の傷が深いので、もし訪問看護で新しい人との関わりが生まれ、再び大人への信頼を失うようなことになったら……という危惧もあります」とのことでした。

※訪問看護は認知症以外の精神疾患も対象になります。精神科訪問看護を受けるためには、医師の精神科訪問看護指示書が必要です

コロナ禍で増えた?子どもの訪問看護

次に訪問看護を検討することになったのは、それから3年後のことです。息子の状況が大きく変化しました。過度の緊張をすると発作が起きるようになり、心因性非てんかん発作と診断されました。学校どころか、いつ発作が起こるか分からないので日常生活もままならず、私も勤務途中に息子から連絡を受け、大きな発作が起きる度に職場と自宅を何度も往復する日々でした。そして精神科を受診した際、改めて訪問看護の利用について相談してみると、快諾されました。その旨を相談支援の方にお伝えすると、すぐにたくさん資料を持ってきてくださり、すでにいくつかの訪問看護ステーションに問い合わせをしてくれていました。

資料を見て驚いたのは、この3年で子どもが利用できる精神科を専門とする訪問看護ステーションが増え、そして不登校支援も行っているところがかなり多かったことでした。コロナ禍で不登校の子どもが増えたことも原因かもしれません。私たちにとっては渡りに船の状況でした。

相談支援の方から「この訪問看護ステーションは男性の看護師さんがほとんどなので息子くんに合うかもしれません。とても良い事業所ですよ!」と勧められた2つの事業所に問い合わせました。家の近くの事業所は既に利用枠が埋まっていたのですが、最後の事業所は奇跡的に空いていました。すぐに面談と体験利用が決まりました。

障害のある人が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう身近な市町村を中心として以下のような相談支援事業を実施しています。
(厚生労働省|障害のある人に対する相談支援について)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/soudan_shien.html

もっと早く出合いたかった……短時間ケアと温かな寄り添い

担当の看護師さんとはすぐに打ち解け、訪問看護がスタートしました。訪問看護の内容は、病院との連携による心身状態の観察や服薬管理、日常生活への助言やサポートなどがあるそうです。息子の場合は服薬は夕食後なのでお願いせず、毎回の検温と血圧測定、そして体調の変化の共有をお願いし、残りの時間は話し相手になっていただきました。以前から利用している週2回のホームヘルパーに加え、週2回の訪問看護を利用することで、息子の日常的な見守りの体制が整いました。

ホームヘルパーの利用は1回1時間で、訪問看護の利用は1回30分と短いのですが、長時間他人と接するのがしんどい息子にはその短さがちょうどよかったようです。その短いようで長い時間を、主にゲームの話をして過ごします。「ゲームが好き」と相談支援の方があらかじめお伝えしてくださったので、ゲームの話ができる看護師さんを派遣してくださったようで、訪問時には「うちで担当している子どもたちはゲーム好きな子が多いので、練習用に事務所にゲーム機を置いてもらえないかなぁ」と話してくださいました。なかなか学校に行けない子どもたちに寄り添ってくれているのが、その言葉からも滲み出ていました。

また、入院した際は退院時のカンファレンスなど一人で悩んでいたことや退院後の生活調整のアドバイスをいただいたことは本当にありがたかったです。こんなことならもっと早く訪問看護を利用したかったなぁ……と思ったりもしました。

親子の強い味方に!

発達特性のある子どもは、病院が苦手な子も少なくありません。特に外出が困難な子は「病院で受診する」ということの前に「定期的に病院へ行くこと自体の負担」が勝ってしまい、保護者も連れて行くことの困難さや子どもの心身を思うと、軽微な症状であれば受診をためらってしまうことがあります。そんな時、訪問看護を通じて主治医と連携がとれた看護師さんに気軽に相談できるのは本当に心強いです。先日も息子の体調が思わしくなく、病院へ行くほどではないかもしれないと悩んだ際、的確なアドバイスをいただきました。

訪問看護の利用を始めて、もうすぐ半年になりますが、わが家は利用できてよかったと心から思っています。

もっと頼ってもいい!さまざまな選択肢

不登校のお子さんの保護者の方と話していた際、発達障害や精神疾患がある子どもの不登校へのサポートをしてくれる訪問看護ステーションがあることをほとんどの方が知りませんでした。私自身も、息子の調子が再び悪くならなければ、知らなかったことだと思います。

訪問看護は「家族への支援・相談」も行ってくださいます。特性があり、学校生活に困難を感じた子どものサポートは、家族だけでは不可能です。カウンセリングに行くまででもないけれど子どものことで悩んでいる、あまりに環境が違いすぎて周囲の人に相談できない、相談しても否定されてしまうような状況のことでも、医療者として話を聞いてくれる訪問看護はとてもありがたい存在です。障害のある不登校育児はどうしても抱え込んでしまいがちですが、なるべくこういったサービスを積極的に利用して、親子共々心の負担をできるだけ軽く、子どもの長い人生に寄り添っていきたいと思っています。

執筆/花森はな

(監修:新美先生より)
訪問看護利用についてのエピソードを聞かせてくださりありがとうございます。
訪問看護は、訪問看護師などがご自宅などに訪問して、療養生活を送っている方の看護を行うサービスです。看護師以外に、リハビリスタッフが行う訪問リハビリもあります。医師が治療上必要と判断して、訪問看護ステーションに指示書を出すと、医療保険が適用されるため、負担は病院での診療と同様になります。以前は、小児では医療的ケアが必要な方を中心に利用されてきましたが、近年発達障害や精神疾患があって、在宅で過ごすことの多い不登校、ひきこもり傾向のあるお子さんにも、訪問看護や訪問リハビリを利用すると、お子さんにとってメリットが大きいことが注目されてきて、小児や発達障害の方を対象とする訪問看護ステーションも広まりつつあるようです。とはいえ、このような利用のされ方が広まってまだ日が浅いので、こうした利用の仕方になじみのない地域、発達障害のあるお子さんを対象としていない看護ステーションも多いです。指示を出す医師の方も、経験がなくて戸惑うケースも少なくないかもしれません。
お子さんにとっても、安心安全の拠点であるべき自宅に、慣れない人が来ることで、領域侵犯されたと感じる方もいます。花森さんの場合、担当医の先生が初めは「お勧めしない」とおっしゃったのには、そのように判断されたのかもしれません。
自宅ということや、頻度も比較的多く利用できることから、かえって負担にならないように、利用に際して、担当医や訪問看護ステーションのスタッフと利用の仕方についてはよく話し合い、ご本人の意思をしっかり確認して、また実際に利用してみてからの本人の感触をしっかり聞き取って、よりよいやり方で継続できるといいですね。
訪問看護や訪問リハビリは、不登校・ひきこもり傾向の発達障害のある方にも、相性のよい利用の仕方が見つかると、利用の幅が広くとても使いやすい制度だと思います。どのような利用の仕方があるかのアイデアを、どんどんシェアしていけたらいいなと思います。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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