初心者でも手軽(?)といわれる「タイラバ」に挑戦!明石の乗っ込みマダイの実態はいかに?
釣り人の醍醐味といえば? それは、「新鮮なお魚が食べられること」につきますよね。船でジギングを経験して青物を釣った私が、次に釣りたいと思ったのがマダイでした。美味しいマダイをねらうために、「タイラバであれば一定の速度で巻き続けるだけで釣れる…」と聞いた私は、「それならばっ」と挑戦しようと思ったのです。しかし、後々になってよく考えると、楽観的過ぎてとても恐ろしい発想だったなと笑ってしまいます。
とはいえ、このタイラバに挑戦したことにより新たな学びがあり、驚かされました。「なぜマダイなのか?」そして「何に驚いたのか?」について、春の釣行の模様をまじえてお届けします。
旬の魚を求めて「タイラバ」に初挑戦
3~5月の産卵期を迎えたマダイは「桜鯛」と呼ばれており、体色がとても鮮やかで春に咲く桜のようにとてもキレイです。そして明石のマダイは、「明石鯛」とブランド名で呼ばれています。潮の流れが速い明石海峡では泳ぐだけで身が引き締まり、筋肉質で旨味成分も多く蓄えられるのが特徴です。そんな環境で育った明石鯛は、日本有数の高級魚といわれています。
しかも、春は産卵期です。運がよければ白子が入っているかも…。見た目にキレイな高級魚で美味しいうえ、「白子や真子が入っているかもしれない」と考えると、釣らずにはいられませんでした(笑)。
タイラバとはいったい?
「タイラバ」とは、ヘッド(オモリ)にネクタイ(仕掛)とフック(ハリ)を付け、落として巻くだけの単純明快な釣りです。
その釣り方ですが、まずポイントに到着したら、船長の合図で釣り座の真下にタイラバを落とします。その際、落ちる速度はかなりのものですから、そのまま落ちているのを眺めているだけだと、着底(オモリが底に着く)した瞬間に、反動でリールのスプールから糸が余分に出て絡まる「バックラッシュ」という現象が起きてしまいます。そんなトラブルを防ぐために、親指で軽くスプールを押さえる(サミング)とバックラッシュを防ぐことができるといった具合です。
そして、着底したらすぐに巻き始めます。ここでのんびりしていると、根掛かりしてしまうので要注意。あとは一定の速度で巻き上げるだけといった釣り方です。
タイラバの仕掛はこんな感じ
【ヘッド】
「ヘッド」と呼ばれるオモリは、水深=グラム(g)数で重さを考えるとよいそうです。そして、ヘッドには2種類あるとのこと。タングステンと鉛が主な材質だそうです。
「タングステン」はシルエットが小さく、比重が重いので沈下速度が速く、硬度が高いので感度がよい(底取りしやすい)そう。一方「鉛」は、とにかく値段が安い。タングステン製の1/3程度の値段です。
左奥:タングステン60g、左手前:鉛60g、右奥:タングステン80g、右手前:鉛80g
【ネクタイ】
ヘッド(の下)に付けるネクタイは、シリコンとゴム(ラバー)の2種類があります。アピールが控えめなストレート系、強い波動のカーリー系などです。カラーチョイスとしては、オレンジ、赤、黒の3色があればとりあえずといった感じではないでしょうか。時期によってカラーや大きさは変化するので、旬な情報のチェックも必要です。
また、まったく反応がないときには、ワームを付けると釣れたりもするそうです。
【フック(アシストフック)】
アシストフックに関しては、「軸の太さ」「ハリ先の角度」「サイズ」に注目して、ネクタイにフックが絡まないような長さのものを選ぶとよいそうです。ハリ数は増やせばフッキング率は上がりますが、逆に根掛かりのリスクが増えるので、まずは2本バリを基準にするのがおすすめとのこと。
「巻くだけ」でマダイが釣れるってホント?
例年通りとはいかない厳しい現実
「乗っ込みとは、産卵のために浅場に移動して荒食いすることです」なんて聞くとかんたんに釣れちゃうと思いますよね。そんなシーズンを迎えたというので、早速出掛けたワケです。実際に船でタイラバを巻き巻きし、マダイを釣り上げることができました。そして、釣ったマダイはお腹もパンパンでした。
しかし実は、そうかんたんには釣れませんでした…。今年(2025年)は3月になっても気温が低く、寒い日が続いた影響で海水温の上昇が遅れ、マダイの活性が低かったようです。17℃くらいからマダイの活性が高くなるそうですが、4月に入り暖かくなってきたとはいえ、水温は13℃と厳しい状況でした。
人は四季を視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚の五感で感じていると思いますが、魚は「日照時間で感じる」といわれています。そして、海水温は気温と2ヵ月の遅れがあるそうです(1つの目安として)。ここにタイムラグが発生して、春がきたはずなのに海水温が低いままなので、マダイの活性が上がらず厳しい状況が続いたように感じます。そのうえ当日は、2枚潮により底が取りにくかったなど、厳しい条件が重なり苦しみました。
「巻くだけ」というセオリー通りではダメ
当日は、とにかくマダイが口を使ってくれませんでした。ネットや動画で予習したことが役に立たなければ、船の上で学ぶしかありません。
ネクタイは汎用性の高いシングルカーリーをチョイスし、巻き速度はスロー。アタリはあるものの掛からない…。そんな状況でした。アタリがあるということは今の状況に合っているので、巻きスピードに全集中して巻き続けました。
マダイは底に集まっているそうなので、バーチカルに釣っては(上下の釣り)すぐに集まっている層を抜けてしまいます。そこで角度(ナナメ)を意識しました。角度をつける(ヘッドを潮の流れに乗せて斜めに落とす)ことによって、同じ距離を巻いたとしてもマダイのタナを通過する時間が違うので長くアピールできます。基本、角度をつけるにはスピニングタックルを使うそうですが、ベイトタックルで実践しました。しかし、この釣り方はほかの人と同じ角度に落とさないと、オマツリをしちゃうので注意が必要な釣り方です。
さらに、セオリーを完全に無視した、まったく学んでいなかったテクニックも実践しました。それはアタリがあった際、「送り込む」という作業。これは、活性が低くなかなかハリ掛かりしない状況で、一瞬ですが巻きを止めて食わせる間を与えるというテクニックです。このテクニックが功を奏しました。
水深や潮流を意識してヘッドの重さやネクタイのカラーを考え、最適な巻き速度を導き出したうえでヒットにつながったときは最高でしたね。
乗っ込みシーズンに釣れるマダイはお腹がパンパン?
春に釣れたからといって、マダイのすべてが“お腹パンパン”というわけではありません。これは釣り上げてみないと分かりませんので、釣り上げる最後の最後までドキドキできます(笑)。
明石は潮流も速く磯も荒いので、産卵場所がいくつもあるそうです。ほかの海域(明石以西の瀬戸内海)のように産卵場所がある程度分かっているところに比べると、乗っ込みマダイをねらうというのは難しいことのようです。
とはいえ、この時期の明石鯛の白子はとても美味しいので、難しくてもねらいに行くのでしょうね。
海の上にもルールがある…??
ところでみなさんは、「漁業権」をご存じですか? 漁業権は一定の水域において、排他的に一定の漁業を営む権利であり、「共同漁業権」「区画漁業権」「定置漁業権」の3種類があります。堤防釣りならば「立入禁止」や「釣り禁止」といった看板などがありますが、海上にはそんなものは一切ありません。
明石では海苔の養殖も盛んで、海苔の養殖棚が設置されている場所がいくつかあります。そして、この海苔をマダイがエサにしていることから、この春時期は「海苔パターン」ともいわれ、海苔の養殖棚の近くに集まるマダイをねらうと聞きました。しかし、ここで問題になってくるのが「区画漁業権」だそうです。
海苔棚は「区画漁業権」という、県からの漁場計画を定められ決められた位置に海苔養殖棚を設置しています。区画内では養殖施設を破損するなどのトラブルや、人命に関わる事故の原因となりますので、養殖施設には近づかないように決められており、養殖施設への係船は絶対にしないよう、注意が必要なのです。
出典:
漁業権について | 兵庫の海釣り
そして、海苔棚の海面下の見えないところには多数のロープが張られているのですが、このロープに無数のオモリやサビキのハリが刺さっている現状をみなさんにも知ってもらいたいのです。
話を聞くところによると、漁師さんが海苔棚のイカリを上げたときに、オモリが飛んできてケガをするそうです。このオモリの重さを想像してください。10gとかの重さじゃないのは容易に想像できますよね。そして、ロープには無数のハリが刺さり再度使える状態ではないそうです。「係船していない」「離れているから大丈夫」というだけではなく、海苔棚の海面下には斜めにロープが張られているので、こちらも注意が必要なようです。
海底から引き揚げられた無数のオモリと、絡まっていたサビキなどの仕掛
現状は注意のみだそうですが、改善されなければ釣れる場所が1つ、2つと禁止になり、罰則の対象になるかもしれません…。
今回の釣行を通じて、マイボート・プレジャーボート・遊漁船、私のような乗り合いの釣り人など、1人1人のマナーとモラルをいま一度考えなければいけないと気付かされました。
出典:
5月中旬まで、のり養殖漁場への乗揚げ事故に注意してください! | 兵庫県庁
漁業権について | 水産庁
といったわけで、今回は初挑戦の「春の明石でのタイラバ」で学んだこと、驚かされたことなどをおお届けしてみました。
「巻き続ける」という単純な作業のタイラバではありますが、ときには「巻きを止める」「ワームを付ける」など、イレギュラーなことが有効であったりするタイラバ。また、潮流とネクタイのバランスで巻き速度を変えるなど、単純なようで奥が深いからこそ飽きずに楽しめるように感じました。
そして、なによりも白子が絶品でした! 新鮮な魚を余すことなく美味しくいただけるのが、釣り人の特権だといつも感じます。この特権がこれからも、未来の子どもたちにも感じてもらえるように、安全な海を守っていかないといけませんよね。
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レポーター
プロフィール:デカ白メガネ
大阪から和歌山での堤防釣りを初めて数年。アウトドア好きがこうじて釣りを始めた初心者アングラーです。四季を通じて釣りをメインにBBQをしたり、キャンプを楽しんだり…。冬はスノーボードも楽しみつつ、1年中アウトドアを満喫しています。