空から見るニッポン。ただいま、群馬県・新潟県 谷川岳の上空です!
群馬県みなかみ町と新潟県湯沢町の県境にある谷川岳は標高1977m、トマノ耳とオキノ耳の二つの峰がある。首都圏からのアクセスがよく、ロープウェイやリフトもあり、麓のトレッキングコースも整備されていることから、多くの観光客が訪れる。その一方で、1930年代からの記録以来、遭難死した人の数は800人以上に上り、世界一ともいわれている。
美しい雪の稜線の向こうに現れる険しい山容と、すぐ麓にある市街地
谷川岳には何度か登ったことがあるが、空撮をしたことはなかった。
山の麓は平坦な場所が少なく、なかなかモーターパラグライダーで離陸できる条件の場所がないのだ。そのため30㎞ほど離れた赤城山の麓、昭和村から離陸。水上(みなかみ)方面へ飛行、谷川岳山頂を目指した。
実は以前、同じルートで飛んだことがある。だがそのときは風の影響もあって、谷川岳まで辿り着くことができなかった。今回はリベンジだ。
月夜野(つきよの)のあたりまでは土地が開けているため、万が一の緊急時にも不時着できる場所がたくさんある。だがその先は谷が狭くなり、少し緊張感が増してくる。
それでもエンジンの調子も風の条件もよく、思ったよりスムーズに山頂上空に着くことができた。
登山した場所を上空から見ながら飛ぶと、自分が歩いた場所を確認できておもしろい。
この時期の谷川岳はすっぽりと雪に覆われており、そこにいくつか足跡やスキーで滑った跡がついている。この白銀の世界をスキーで滑るのも気持ちがいいだろう。
美しい雪の稜線を眺めながら通り過ぎると、今度は一ノ倉沢の荒々しい絶壁が見えてきた。ここをクライミングする人がいるのか、と思うと信じられない気持ちになった。そんな険しい山容のすぐ麓には水上の街が見える。谷川岳は見る角度でまったく印象が変わる。
ひととおりの空撮が終わり、離陸場所に戻るには、南東方向に見える赤城山に向かって飛んでいく。往復約60㎞のフライトとなった。
取材・文・撮影=山本直洋
『旅の手帖』2025年2月号より
山本直洋
空飛ぶ写真家
1978年、東京生まれ。モーターパラグライダーによる空撮を得意とする”空飛ぶ写真家”。現在、世界七大陸最高峰を空撮する、成功すれば世界初のプロジェクト「Above the Seven Summits Project」を計画中。