「どこに持っていけば金になるのか」 上越市の通年観光計画 対話集会で中川幹太市長に直談判の業者を選定
新潟県上越市の中川幹太市長の看板公約である通年観光計画。初年度の2024年、個別計画の策定や社会実験を行うコンサルタントなど5事業者が公募型プロポーザルで決まった。この中には公開の市民対話集会の場で「どこの誰に資料を持っていけばお金になるのか」などと中川市長に直談判した業者が選ばれている。通年観光計画をめぐっては昨年、市と選定された業者との近密な関係などが問題( https://www.joetsutj.com/2023/08/03/180800 )になった。
屋台会館活用で2860万円の社会実験事業を受託
通年観光計画は、7年間で49億円の事業費を見込んでおり、本年度の当初予算額は8661万円。このうち、直江津屋台会館活用の社会実験業務(予算額2860万円)のプロポーザルは今年7月に行われ、5つの事業者らが応募。選定委員会で最高得点を得て業務を受託した事業者は、市が昨年8月に通年観光をテーマに市内3会場で開いた「市民と市長との対話集会」に、いわば組織的に出席しており、複数の担当者が通年観光計画について受注関係の質問をしたり、要望したりしていた。
業者「どこに行けばお金に」中川市長「わたしも本気」
昨年8月17日、中央1のレインボーセンターで開かれた「市民と市長との対話集会」直江津会場。中川市長が通年観光計画について説明した後、スーツ姿の男性が手を挙げ「株式会社◯◯の◯◯(名字)です」と切り出した。男性は直江津地域のブランディングについて持論を述べ、「わたしもそうだが、ここには本気の方々がたくさんいる。市にお願いする際に、どこの誰にどういった資料で渡せば具体的に予算化、支援してもらえてお金に反映されるのか。お答えいただきたい」などと中川市長に求めた。
中川市長は「わたしも本気でやろうと思っている。投資の手立てというのは、私達も徹底的に考えたい」と応じた。
また、さらに別のスーツの男性が「株式会社◯◯の◯◯(名字)です。ターゲットはどういう方たちか。20代の女性、ファミリー、インバウンド、それによって打ち出し方とか、見せ方とか伝え方が変わってくる。私たちも仕事で観光に携わらせてもらう中で、そういったものが分かると、より直江津の魅力を伝える手伝いにつながってくる」などと質問した。
同社はさらに8月28日の春日地区でも「メインのターゲットを教えてほしい。年齢、性別、地域が分かると、私たちも提案させていただくにあたって、すごく参考になる」と質問したほか、8月30日の高田地区の対話集会では通年観光計画に盛り込んでほしい内容などを要望した。
《画像:市民対話集会終了後、中川市長と名刺交換して直接話す事業者の担当者》
「直談判」の会場にプロポーザル選定委員が同席
業者選定のプロポーザルは、地元の商工会代表や観光の有識者ら6人で作る選定委員会が、企画提案書とプレゼンテーションを見て、採点・評価する。この選定委員のうちの1人は同市文化観光部長で、この部長は事業者が中川市長とやりとりした市民対話集会のすべてに出席していた。部長は取材に対し「出席していたのは事実だが、選定は客観的に公正に行っている」としている。
市民対話集会での事業者の営業活動
一方、市民対話集会は、市広報対話課が所管して市民と市長がさまざまなテーマで直接意見を交わす場として開催しているもので、ほとんどの参加者は生活全般や地域課題、市政の重要課題などについて個人や市民団体といった立場から質問している。
市広報対話課は取材に対して「市民対話集会は基本的に市民個人を対象としたもので、企業による営業活動などは想定しておらず、適切ではなかった」としている。
事業者「軽率だった」
この事業者は取材に対し「中川市長の通年観光がどういうものなのか理解したかったので情報収集しようと思った。正直に言ってそれ以上の深い意味はなかったのだが、軽率だった。今後気をつけたい」と話した。