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深刻さ増す薬不足いつまで?咳止めや抗生剤など欲しい薬が手に入らない!長引くその要因と対策は!?

アットエス

3800品目、医薬品の2割以上が供給不足

インフルエンザやマイコプラズマ肺炎が流行する時期ですが、最近は病院で処方される薬が不足しているという話を聞きます。処方薬不足の現状について、薬剤師で医療ジャーナリストの吉澤エリーさんにSBSアナウンサー松下晴輝が聞きました。

松下:早速ですが、薬不足はどの程度深刻なのでしょうか?

吉澤:非常に深刻です。実は2019年頃からじわじわと問題が表面化し、2020年にはさらに拍車が掛かりました。さらに2023年から感染症が爆発して、現場は対応に追われています。

不足している薬は約3800品目と言われていて、医薬品全体の2割以上を占めています。このため、処方箋があっても薬がない状態になっています。

松下:特に不足しているのは、どのような薬でしょうか?

吉澤:2023年はRSウイルスや手足口病など日常的な感染症が爆発的に流行し、それに伴い咳止め薬や痰を抑える薬が不足しました。また最近は、マイコプラズマ肺炎が例年にない規模で拡大しており、抗生剤が足りなくなっています。

抗生剤の不足が引き起こすリスク

松下:抗生剤の不足は具体的にどのような弊害が出るんですか?

吉澤:影響は本当に深刻で、例えばペニシリン系やセフェム系の抗生剤は、重い病気だけでなく、呼吸器感染や皮膚感染、小児の中耳炎、ちょっとした手術時の感染予防など幅広い用途で使われます。抗生剤があれば難なく回復していく病気が無いせいで重症化してしまう可能性もある訳です。

松下:私も経験がありますが、小さなお子さんの中耳炎は痛みがかなり強いですからね。薬がないからと薬局を探し回るのはかなり苦痛ですね。

吉澤:そうなんです。夕方の遅い時間に何軒も回ったという話もあります。近年また、梅毒の感染が拡大しています。梅毒の治療にもペニシリン系の抗生剤がまず必要なので、これが出せないとなるとちょっと怖い状況になります。

長引く薬不足の要因とは?

松下:そもそも、なぜこうした薬不足の事態に陥ったのでしょうか?

吉澤:いくつかの原因が重なっています。まず、コロナ禍で咳止めや解熱剤の需要が増えました。そこに2021年に、今はなくなったジェネリック医薬品(後発薬)メーカーの小林化工が、本来入るはずがない成分がある薬に入って死亡事故が起こり、それが薬不足が深刻化させる一端となりました。

加えて、日本は医薬品の原料を海外に依存しているのですがコロナ禍くらいから輸入が滞ると薬の供給が大きく影響を受けます。

松下:薬価が低いことも関係しているのでしょうか?

吉澤:はい。咳止め薬や解熱剤は薬価が低いので、製薬会社が十分な利益を得られません。このため、設備投資をして工場を増やし、生産量を増やすことが難しい状況です。

背景にジェネリックへの信用問題も

松下:製薬会社側の利益が少ないと、増産体制を整えるのは厳しいですよね。

吉澤:もう一つ、薬不足の原因があります。抜き打ちの立ち入り検査で、製造工程が申請内容と違うなどジェネリック医薬品の不正が発覚すると、工場が一定期間、業務停止となります。これが複数の工場で発生し、さらに薬不足が深刻化しました。ジェネリックメーカーの体質というのも要因です。

松下:ジェネリック医薬品はここ10年ぐらいでよく耳にするようになりました。手頃な価格で利用できる一方、こうした問題も抱えているのですね。

吉澤:メーカーからすると、作っても作っても間に合わないため、どうしても手抜きが起きてしまうことがあり、これがジェネリック薬への信用問題につながっています。

松下:いつになったら薬不足は解消されそうですか?  

吉澤:残念ながら、すぐには改善しないと考えています。2年前にとある政党の事務所へ相談に行ったんですね。国や医療機関、薬の現状と、患者さんが困っていることを伝え、「製薬会社と協力して改善に取り組む」という回答をもらいました。

しかし、現状はむしろ悪化しています。単価の安い薬や日常的に使う薬は、国が主体的に乗り出して工場を建設するために金を出す支援などしないと、いつまでもこの状態が続くのではないかと思います。

松下:インフルエンザやマイコプラズマなど今もまさに流行しています。確実に何かしらの手立てを打ってほしいですね。

吉澤:インフルエンザの時期に入りましたので、怖いですよね。現状のままでは患者さんに薬が行き渡るかどうか心配です。

松下:我々としては、まず病気にかからないよう予防を徹底することが大切ですね。吉澤さん、本日はありがとうございました。

※2024年12月3日にSBSラジオ「IPPO」で放送したものを編集しています。

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免責事項今回お話をうかがったのは……吉澤エリーさん
薬剤師、医療ジャーナリスト。1969年12月25日福島県生まれ、1992年東北薬科大学(現・東北医科薬科大学)卒業。医療記事を中心に多数メディアに執筆。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」ニュース(Business Journal)

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