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ずんだもんが巨漢の妖怪に……話題沸騰の「ずんだどん」拡散のきっかけを作った2人に話を聞いてみた

おたくま経済新聞

ずんだもんが巨漢の妖怪に……話題沸騰の「ずんだどん」拡散のきっかけを作った2人に話を聞いてみた

 ここ数日、SNSをにぎわせているキャラクター「ずんだどん」。東北地方の応援キャラクター「ずんだもん」の公式キャラクターではなく、ファンたちの“冗談”から生まれた、いわゆる二次創作キャラクターです。

【味噌グラムさんの投稿】

 元ネタとなった「ずんだもん」が小柄でかわいらしい風貌に対し、「ずんだどん」は関取やプロレスラーを思わせる巨漢。和服姿の雪駄履きで、ご飯の入った桶を抱えて「めしを喰うでごわす!」と怒鳴り散らすという破天荒な設定です。

 しかし、オリジナルとのギャップが受け、ずんだどんは一躍人気者に。今回は「ずんだどん」誕生から拡散に至るまでの経緯を振り返りつつ、そのきっかけを作った2名のXユーザーに話をうかがいました。

■ 発端は漫画家・霧隠サブローさんのつぶやき

 事の発端となったのは、2024年4月1日。「魔装番長バンガイスト」などで知られる漫画家・霧隠サブローさんが自身のXアカウントでこうつぶやいたのがきっかけでした。

ずんだもんは身長198センチ体重160キロの36歳の巨漢で、和服姿に長髪を後ろで束ね、雪駄履きでごはんの入ったおけを抱えて「めしを食うでごわす!!」と怒鳴り散らしながら他人の家に勝手にあがりこみ冷蔵庫の中身などをおかずにめしを食って帰っていく妖怪の一種。妖怪なので警察も手が出せない。

 エイプリルフール当日の投稿ではあったものの、この突飛な設定がずんだもんのファン界隈で話題に。これを元にイラストを描き起こしたのが、イラストレーターの味噌グラムさんです。

 霧隠さんのつぶやきに含まれる要素を完璧に再現しながらも、どこかコミカルでクスッとしてしまう巨漢のずんだもんは、当時も1万回ほどリポストされるなど、話題となっていました。

 しかし、これらの出来事はあくまできっかけに過ぎず、後に爆発的なブームを引き起こすことになったのは、霧隠さんのネタ投稿をGoogle AIが公式設定と誤認してしまったことです。

 元々ずんだもんに身長や体重といった設定が設けられていなかったため、あくまで推測ですが、Xに投稿されたもっともらしい情報を、AIが信頼しうる情報として認識してしまった……ということなのでしょう。

 以降「ずんだもん 身長」といったワードで検索を行うと、Google AIが「身長198センチ体重160キロの36歳の巨漢」と回答してしまう事態に。これがXユーザーの間で広まり、味噌グラムさんのイラスト投稿からおよそ5か月後となる12月に入ってから、大ブームが巻き起こった……という流れです。なお、現在(本稿公開時点)では、この検索結果は表示されなくなっています。

 その後さらに「ごわす」口調から「鹿児島の妖怪」とされたり、「ずんだどん」という名称で呼ばれるようになったりと、さまざまな設定が付随。

 加えて、ずんだもんの公式アカウントも、はっきりとした明言は避けたものの「イラストの改変はどんどんやってください」と歓迎の姿勢を見せたことで、ブームがさらに加速。有名漫画家もファンアートも投稿するなど、大きな広がりを見せました。

 源流である霧隠さんの投稿には1万6000件、味噌グラムさんのイラストには11万件ものいいねが付くなど、今もなおポストが伸び続けているようです。そんな両者は、今回の事態をどのように見ていたのでしょうか。話をうかがってみました。

■ 霧隠サブローさんにインタビュー 「特にエイプリルフールを意識したわけではない」

 まず話をうかがったのが、エイプリルフールにずんだもんにまつわるネタ投稿を行った霧隠サブローさんです。

―― 日にちが日にちであるだけに、エイプリルフールについたウソであるとは思うのですが、なぜずんだもんにまつわるウソをついてみようと思ったのでしょうか?

 自分はいつもこういうことばかり書いていますので、特にエイプリルフールを意識したわけではないと思われます。書いた時点でこの日がエイプリルフールだとわかっていたかどうかも怪しいです。

―― そうだったのですね。てっきりエイプリルフールのネタだったのかと……。となると、どこからこの発想が出てきたのでしょうか?

 多分、ずんだもんという言葉の響きから連想したキャラクターではないでしょうか。ずんずんと人の家に入ってきて、何かをするモンスターのような男という感じで。

―― なるほど、霧隠さんにとってそれが「ずんだもん」という解釈だったのですね。これをGoogleのAIが学習したことが元になり、味噌グラムさんが描いたイラストとともに拡散され、投稿が再度脚光を浴びることとなった流れかと思いますが、投稿当時の反響はいかがでしたか?

 いつもこういうことばかり書いていますが、まれにやけにウケる時がありまして。これも比較的いつもより反応がよかった気がします。爆発的に伸びたのは、味噌グラムさんが描いてくれた絵の力が大きいと思います。

―― それから数か月後に、さらに大きな反響を生むとは、予想だにしていなかったと思います。一連の流れを受けての、現在の率直な心境をお聞かせください。

 これが受けたことで私に何かあるとは思わないので、特に平常心と変わらないですが(笑)。この前には宮崎駿監督と庵野秀明氏と富野由悠季氏が出てくる「君たちはどう生きるか」のネタがやけにウケましたので、やはり話題になっている人物や人気のあるキャラクターを出すと反応がいいものだなと感じました。あとGoogleはもうちょっと人力でチェックした方がいいのではと思いました(笑)。

―― Google AIの検索は試験運用中ということですが、まだまだ課題が多いと言えそうです。お話を聞かせていただきありがとうございました。

■ 味噌グラムさんにインタビュー 「イラストはブームに乗ったもので、かなり後発」

 霧隠さんから意外な話が聞けたところで、次に話をうかがったのは、象徴的な「巨漢の妖怪」イラストを描いた味噌グラムさんです。

―― まず、7月にイラストを描いた経緯の確認なのですが、やはりGoogle検索での結果が面白く感じたため、その情報を元にイラストを起こした……といった形でしょうか?

 いや、そうではなく。実はあの絵を描いた時点で、霧隠サブローさんの例のネタ投稿はずんだもん界隈で軽くブームを起こしていまして。彼と私が長年の相互フォロワーの間柄ということもあり、7月ごろにTL上で自然と目に入ってきたと記憶してます。

―― なるほど、3か月空いてもTLに流れてくるということは、結構なブームだったのですね。

 そうですね、それを元にしたファンアートも自分以外にも既に数多く投稿されていて、自分の作品はそのブームに乗って描いたものになります。かなり後発だったと思います。

―― ブームの火はその頃から着々と大きくなっていたのですね。それを描いてみようと思ったきっかけはどういったものでしたか?

 自分はもともとアフガン航空相撲(※2002年ごろに流行したネットミーム)など、太ったキャラクターをネタとすることが多いので、霧隠サブローさんの投稿を見た瞬間に自分がビジュアル化しない手はあるまいと思いました。

―― かわいいずんだもんが「身長198センチ体重160キロの巨漢」になるわけですから、たしかに描いてみたくなりますね。イラストを起こす上では、どのようなことを意識しましたか?

 太った人を茶化すような表現はせず、逞しさを強調することを心がけました。後ろに束ねた長髪が隠れてしまったのが失敗でした。

―― イラストには結果的に11万件ものいいねが寄せられ、ファンアートも多く描かれる人気者となりましたが、自身のイラストが広く拡散されることとなった今の率直な心境をお聞かせください

 正直なところ、もともとはかわいらしいずんだもんをおちょくったようなネタ投稿だったので、ここまで拡散された事にはずんだもん公式さんに申し訳ないような気持ちがあります。とはいえ、現在では「ずんだどん」と名前が付けられたり、ずんだもんと身長差コンビとして描かれたり、もはや自分の手を離れてキャラクターとして自由な成長を遂げているところがありますので、これもまたネットカルチャーの面白さとしてお目こぼしいただけたら幸いでございます。長く愛してもらえたらうれしいですね。

* * * * *

 インタビューを通して、元々両者が相互フォローの間柄だったことや、実はエイプリルフールネタではなかったことなど、さまざまな誕生秘話をうかがい知ることが出来ました。

 ネットやSNS、そしてAIが普及し始めた今だからこそ誕生そして大流行するに至った巨漢の妖怪「ずんだどん」。味噌グラムさんと同じように、今後もその動向を見守りたいと思います。

 なお、ずんだもんPJの公式HPを見ると、キャラクターの利用方法は「利用手引」から確認でき、使ってはいけないケースとして「イメージが悪くなるもの、公序良俗に反するもの、政治、宗教が関係するもの」とありますが、基本的にイメージを極端に悪くするものでなければ大丈夫としています。

 また、二次創作を商用利用する場合は、別途ライセンス契約が必要になるなど、守らなければいけないルールは存在します。もしもこれからキャラクターを使った二次創作を考えている方は、しっかりガイドラインを読み込んだうえで、利用するようにしましょう。

<記事化協力>
メキシカン忍者 霧隠サブローさん(@combatzandig)
味噌グラムさん(@misogram)

<参考・引用>
東北ずん子・ずんだもんプロジェクト公式HP「東北ずん子・ずんだもんプロジェクト キャラクター利用の手引き」

(山口弘剛)

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 山口 弘剛‌ | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2024121207.html

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