“人生はよろこばせごっこ”——やなせたかしの創作の原点に迫る、京都で初の大規模巡回展
7月11日(金)から、美術館「えき」KYOTOにて、〈やなせたかし展 人生はよろこばせごっこ〉が開催されます。 本展は、国民的キャラクター「アンパンマン」の生みの親として知られるやなせたかし(1919-2013)の、多面的な芸術活動に焦点を当てた初の大規模巡回展です。
「よろこばせごっこ」こそが人生——やなせたかしの創作哲学
やなせたかしは、漫画家であり詩人、絵本作家でありデザイナー、そして編集者でもあった希有な表現者。彼が生涯を通して貫いた信念は、「人を喜ばせること」でした。戦争の記憶や家族との別れなど、深い人生経験を経てたどり着いたその哲学は、見る者の心にやさしく、そして力強く語りかけます。
今回の展覧会タイトルにもなっている「人生はよろこばせごっこ」という言葉には、彼の創作活動そのものが凝縮されています。彼にとってアートとは、誰かを救う手のひらのようなものだったのです。
詩、絵本、漫画、そして「アンパンマン」へ——表現の旅路をたどる
本展では、2026年のやなせたかし記念館アンパンマンミュージアム30周年を記念し、原画を中心に彼の創作を5つのテーマで紹介
①やなせたかし大解剖
②漫画
③詩
④絵本/やなせメルヘン
⑤アンパンマン
中でも注目したいのが、詩と絵が織りなす独特の幻想世界。《詩とメルヘン》(1978年8月号)の表紙を飾った「ついにぼくは夜明けの光の矢をにぎったぞ」には、やなせが描き続けた“再生”や“希望”のモチーフが詩情豊かに表れています。
また、《絶望のとなりに》《夕陽の決闘》《雪の天使の2月号》といったイラスト作品も展示。これらのビジュアルは、キャラクターイラストや児童向け絵本とは一線を画す“詩画”としての魅力を放ち、やなせたかしのアーティストとしての顔をあらためて浮かび上がらせます。
ギャラリートークも開催
展覧会初日となる7月11日(金)には、学芸員によるギャラリートークも実施。やなせたかし記念アンパンマンミュージアム振興財団の仙波美由記氏による解説で、より深く作品世界を味わうことができます(①10:30~ ②13:30~、各回約30分)。
会場・会期・チケット情報
会場:美術館「えき」KYOTO(京都駅ビル内 ジェイアール京都伊勢丹7階隣接)
会期:2025年7月11日(金)~8月24日(日) ※会期中無休
開館時間:10:00~19:30(最終入館は19:00まで)
入館料(税込):一般1,000円(前売800円)、高・大学生800円(600円)、小・中学生500円(300円)
※前売は7月10日(木)まで販売中。
最後に
「なんのために生まれて、なにをして生きるのか」——この問いにまっすぐ向き合い続けたアーティスト、やなせたかし。彼のアートは、ただの“優しい絵”ではありません。社会に、人生に、そして自己に真摯に向き合う眼差しが、今も私たちを照らし続けています。
日常にひとしずくの希望を。アートとしての「アンパンマン」の源流に、あなたも触れてみませんか?