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「徳光和夫 とくモリ!歌謡サタデー」15周年記念コンサートレポート

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左から石川みゆき、徳光和夫

4月17日、東京国際フォーラム ホールAでニッポン放送「徳光和夫 とくモリ!歌謡サタデー」15周年記念「昭和100年!人生の名曲に喝采を!コンサート」が開催された。毎週土曜日の朝5時から放送中の人気ラジオ番組が手掛ける初めてのコンサートということで、平日の開演16時にも関わらず会場内は大盛況。番組リスナーを中心に、懐かしい歌謡曲やポップスを愛する音楽ファンで客席は埋まった。

ベイビーブー

幕開けの一番手を務めるのは、5人組コーラスグループのベイビーブー。「昭和歌謡メドレー」と題して、「川の流れのように」「高校三年生」「青い山脈」などヒット曲を1曲に繋げて歌う、息の合ったハーモニーがとても爽やか。華やかな雰囲気の中、歌のバトンを受け取った二番手の堺正章がザ・スパイダースのヒット曲「あの時君は若かった」を歌い上げると、早くも盛り上がりは最高潮へ。曲の途中で本日の出演者を呼び込み、総勢10名で歌う華やかなシーンを満場の手拍子が包み込む。

「帰ってきた昭和の名曲たちで、みなさんを迎えさせていただきました。本日はようこそお越しいただきました」(徳光和夫)

「みなさんと昭和の時代に戻って、一緒に楽しみたいと思います」(石川みゆき)

渡辺真知子

御年84歳にして声の艶も軽妙な語り口も健在どころかますます好調、徳光和夫と、ラジオ番組のパートナーでもある石川みゆきアナウンサーの司会進行でコンサートはテンポよく進む。次に登場した渡辺真知子は、純白の衣装に身を包み、昭和52年のデビューヒット「迷い道」と、翌年の大ヒット「かもめが翔んだ日」を圧巻の声量で歌い上げる。近年、自身の曲が人気女性ダンスチーム「アバンギャルディ」のレパートリーになって世界的に再注目されたことに触れ、「若者たちが歌を受け継いでくれることを嬉しく誇らしく思います」と語り、白いショールをかもめのように羽ばたかせて歌う。元気みなぎる、パワフルなパフォーマンス。

トワ・エ・モワ

続いての登場は、トワ・エ・モワの二人。昭和47年の札幌オリンピックのテーマ曲になった「虹と雪のバラード」と、シャンソンの楽曲をポップスにアレンジしたヒット曲「誰もいない海」の2曲を歌う声は、あの頃と変わらぬみずみずしさ。芥川澄夫と白鳥英美子、日本のフォークソングやポップスの黎明期の香りを漂わせる男女デュエットの存在感は、今はほとんどいないスタイルだからこそとても新鮮に感じられる。「まさかあの頃、50年以上たってこの歌を歌っているとは思いませんでした。嬉しいものです」(芥川)としみじみ語る、その言葉にも歌声にも深い説得力がある。

左から上柳昌彦、石川みゆき、徳光和夫

井上芳雄

クミコ

井上芳雄 with クミコ

歌い終えた渡辺真知子とトワ・エ・モア、徳光と石川の5人で楽しいフリートークを繰り広げた後は、「届かなかったラヴレター」と題した朗読と歌の特別コーナーへ。2010年と2011年に開催された、徳光が朗読とナビゲーターを務めた人気企画の再演に、当時の出演者である上柳昌彦アナウンサー、シャンソン歌手のクミコ、ミュージカル俳優の井上芳雄が参加。一般の方々から寄せられた、“伝えられなかった思い”を綴ったベストセラー書籍を朗読と歌で届けるスタイルで、上柳の朗読のあとに井上芳雄が「瑠璃色の地球」(松田聖子)を、徳光の朗読を受けてクミコが「乙女のワルツ」(伊藤咲子)を、井上とクミコの朗読を経て二人で歌うオリジナル曲「車輪」をと、ドラマチックなシーンの連続に会場全体が静まり返り、あまりに切ない朗読の物語に対して嗚咽のような声もあちこちで聞こえる。素晴らしい声の力、そして歌の力。

小椋佳

クミコ、井上、徳光、石川、上柳の、15年前の初演を振り返るトークをはさみ、第一部を締めくくったのは小椋佳。「昭和の名曲集の中に、僕が作った歌を数えていただくのは本当に光栄です」と前置きして、梅沢富美男に提供した昭和57年のヒット曲「夢芝居」を歌い、制作の舞台裏をコミカルに笑いを交えて大いに語る。さらに、これまで300人以上の歌手に楽曲提供してきた中で、美空ひばりの偉大さを絶賛しながら、昭和61年に世に出た「愛燦燦」を心を込めて歌い上げる。胸に沁み入る歌唱、深い抒情、ユーモアと毒を交えた一流の話術で、会場全体を小椋佳ワールドで染め上げる、素晴らしいステージだ。

井上順

岡崎友紀

20分間の休憩をはさみ、第二部は賑やかなトークコーナーからスタート。徳光、石川、堺正章、岡崎友紀、井上順と、旧知の仲でしかもおしゃべり上手が集まれば、楽しい話が止まらない。堺と井上のザ・スパイダース時代の思い出や、岡崎友紀の代表作「おくさまは18歳」の名シーンをスクリーンで見せるなど、観客を大いに沸かせたあと、歌手として変わらぬ魅力を見せてくれたのは岡崎友紀だ。代表曲「ドゥ・ユー・リメンバ-・ミー」と「私は忘れない」の2曲を、軽やかにステップを踏みながら歌う姿はまさに永遠のアイドル。「みなさんを笑顔にしたい」という人生のテーマを語る、その言葉通りの明るく愛らしいパフォーマンスに、客席にも笑顔の花が咲きほこる。

タブレット純

中村中

ここからの4曲は一人1曲ずつ、昭和を代表するムード歌謡/ポップスの名曲たちをカバーするコーナーだ。元・マヒナスターズのボーカルであり、芸人でもあり、昭和歌謡の研究家としても知られる多芸の持ち主、タブレット純が歌う「ラブユー東京」(黒沢明とロス・プリモス)は、中性的な歌声の魅力を生かして切なく艶やかに。井上芳雄の歌う「ブルースカイブルー」(西城秀樹)は、ミュージカルのワンシーンのようなドラマチックな情熱を込めて伸びやかに。クミコによる「喝采」(ちあきなおみ)は、歌詞に込めた物語性を目の前に浮かび上がらせるように劇的に。中村中(あたる)の「人形の家」(弘田三枝子)は、真っ赤な衣装と真っ赤な照明で、恋に命をあずけた女の思いを鬼気迫るような歌唱と共に。4人とも楽曲に深く感情移入した、名曲名唱の連続だ。

五木ひろし

コンサートもそろそろ終盤、満を持してステージに現れたのは、今年歌手デビュー60周年を迎えた五木ひろし。バックバンドの力強い演奏に乗って昭和46年の大ヒット「よこはま・たそがれ」と、2年後に日本レコード大賞を受賞した代表曲「夜空」を、右こぶしを握り締める得意の身振りを交えて熱唱。デビュー後の苦労話を含めて60年の歌手活動を振り返る、その人生の深みと歌の重みとが重なって聴こえる。直後の徳光とのトークコーナーでも、「これまで、歌手以外のことはまったくやってきませんでした」と、生涯一歌手の信念を快活に語る姿が印象的だった。

堺正章

そしていよいよ最後のステージ、全出演者のトリを取るのはこの人、堺正章だ。歳を重ねてもまったく変わらない明るさと軽やかさ、豊かな声量も高音の伸びもそのままに、「さらば恋人」「街の灯り」と、ザ・スパイダース以降のソロのヒット曲を歌い上げる。「五木さんのあとはやりにくくてしょうがない」と笑わせながら、よくしゃべり、よく動き、よく歌い、満場の聴衆の心を一つに繋ぐエンタテイナーぶりはさすがの一言。客席のあちこちではペンライトが振られている。若々しいステージだ。

「「とくモリ!歌謡サタデー」は15周年ですが、まだまだ続きます。これからも応援よろしくお願いします!」(井上順)

「ぜひみなさんとまたお目にかかりたいと思います。本日はありがとうございました」(徳光)

徳光の、今日のバックバンドを務めたミュージシャン紹介、そしてコーラスとして出ずっぱりのベイビーブーを讃える紹介に続いて、出演者がほぼ揃ってのグランド・フィナーレは、全員による「また逢う日まで」(尾崎紀世彦)の大合唱。ステージに上に溢れる笑顔と、客席から惜しみなく送られる拍手の大きさが、この日のコンサートの充実を雄弁に物語る。出演者も観客も含めたそれぞれの人生の名曲に喝采を送る、3時間15分に及ぶ満足度100点のコンサートだった。

なおこの日のコンサートの模様は、ケーブルTVやIPTVで視聴可能な「映画・チャンネルNECO」にて7月にテレビ初放送を予定、詳しくはチャンネルNEKOの公式ホームページにて。また逢う日まで、この日の記憶を新たにするために、ぜひチェックすることをお勧めしたい。

取材・文:宮本英夫

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