<島根県立宍道湖自然館ゴビウス>の見どころをダイバー目線で徹底解説! 体験型展示が充実【島根県出雲市】
島根県出雲市にある水族館「島根県立宍道湖自然館ゴビウス」は、宍道湖や中海の汽水域に生息する生き物を中心に、約200種・1万点以上を展示しています。
透明な体が光を反射するシラウオや、絶滅危惧種であるハゼの仲間などの貴重な生物を、宍道湖水族館ならではの体験型展示で観察できます。
子どもから大人まで楽しみながら学べる同施設の魅力を、ダイバー目線で徹底解説します。
島根の汽水湖の魅力を体感できる水族館「宍道湖自然館ゴビウス」
島根県出雲市にある「島根県立宍道湖自然館ゴビウス」は、宍道湖・中海を中心とした汽水湖や河川に生息する水生生物を展示する水族館です。
館内には約58の水槽が並び、飼育されている生物の種類は約200種、数にして1万点以上にのぼります。
ゴビウスの名前は、ラテン語で「ハゼなどの小さな魚」を意味する言葉に由来しています。館名は島根県内の小中学生の応募で決定され、地域に根付いた水族館として親しまれています。
「汽水域」という特殊な環境を舞台に、淡水と海水の中間に暮らす生き物たちの生態を学べるのが大きな魅力です。水槽を覗き込むと、地元の川や湖に生息する魚や昆虫、水草まで、日常では見られない自然の世界を観察できます。
絶対に見逃せない! ゴビウスの見どころ3選
ゴビウスの展示は、単なる水族館ではなく生態系を体感できる工夫が満載です。ダイバーの視点で観察すると、魚たちの群れの動きや光の反射、泳ぎ方の違いなどが一層面白く感じられます。
1. ハゼや小魚の魅力をじっくり観察
館名の由来にもなったハゼの仲間は、ゴビウス館内のあちこちで観察することができます。
一見すると同じ種類に見えるハゼでも、よく観察すると体色の微妙な違いがあったり、鰭(ひれ)の形や大きさ、さらには体表の模様や斑点の配置が異なったりすることに気づきます。
例えば、光の当たり方で銀色に輝く個体や、地味な色合いで隠れるのが得意な個体など、個体ごとの特徴を比べると観察の面白さが増します。
また、館内には各水槽に詳しい説明パネルが設置されており、どの部分に注目すると種類を見分けやすいかが分かるようになっています。これを参考にしながら、魚たちの微細な違いを見つけ出すのはまるで自然の中でダイビングしているかのような体験です。
子どもから大人まで、じっくり観察することで魚の生態や特徴を学べるのはゴビウスならではの楽しみ方であり、何度訪れても新しい発見があります。ハゼの群れの動きや習性を観察することで、生き物の世界の奥深さに触れられるのも魅力です。
2. シラウオの輝きは必見
中でも特におすすめしたいのが、ゴビウスで展示されているシラウオです。シラウオは体がほぼ透明で、その体表が光を受けるとキラキラと反射し、まるで水中で舞う小さな宝石のように見えます。
同種は、非常に飼育が難しい魚として知られており、自然環境でも寿命や環境変化に左右されやすいことから、展示されている水族館は限られています。
しかし、ゴビウスでは専門の飼育チームが長年の研究を重ね、繁殖に成功。これにより、1年を通して安定的に群れを観察できる貴重な展示となっています。
群れの動きは非常に繊細で、照明が差し込む角度や水流によって異なる表情を見せます。
ダイバー目線で水槽を覗き込むと、光を受けて群れが一斉に動く様子はまるで水中に広がる銀色の絨毯のようで、まさに自然の神秘を間近で体感できる瞬間です。子どもから大人まで、光と群れの美しい共演に目を奪われ、何度見ても新たな発見と感動が味わえる展示です。
3. 絶滅危惧種も間近で観察
館内では、ニホンイトヨやオヤニラミ、タガメなど、絶滅危惧種に指定されている貴重な生き物たちも展示されています。 また、アメンボやザリガニなど一部の生き物については、実際に手で触れられる体験型水槽も用意されています。
アメリカザリガニに触れられる水槽では、小さな子どもが恐る恐る手を伸ばし、ザリガニの硬い殻や動きの仕組みを直に感じながら、新しい学びを得ている姿を見ることができました。
また、館内にはヘルメット型の水槽もあり、これに頭を入れて覗き込むと、まるで自分が水中に潜っているかのような臨場感を体験できます。魚たちが頭上や周囲を泳ぎ回る様子を、実際のダイビングのような感覚で観察できるため、子どもはもちろん大人でも好奇心が刺激されます。
こうした体験型の展示は、視覚だけでなく触覚や空間認識も活用して生態を学べるため、遊びながら自然や生き物の知識を深められる学習効果の高い仕組みになっています。ゴビウスは、安全に、そして楽しく生き物と触れ合える工夫が随所に施された水族館です。
生息域ごとの展示と特徴が学べるわかりやすい説明
ゴビウスの館内の一部には、宍道湖と中海を隣り合わせにおいた大きな水槽があります。
宍道湖側の水槽にはヒイラギの群れが泳いでおり、メタリックな体表が光を反射し眩しく輝いていました。
一方で、中海側の水槽にはコイやスズキが重量感のある身体を潜ませる姿を観察でき一目で「生き物の棲み分け」を感じられます。そこに宍道湖・中海の塩分濃度のちがい、面積、最大深度などの補足でより実際に近い生態系をイメージしやすくなっていました。
また、汽水域周辺の郷土料理(宍道湖・中海七珍)の紹介や、島根県東部のほぼ全域に流れる「斐伊川水域」についての説明など、島根県の地形・風土の情報や知識の発信も精力的に行っているのが感じられました。
ゴビウスは子連れにもおすすめできる水族館
生き物と触れ合えるタッチプールと子どもたち(写真提供:島根県立宍道湖自然館ゴビウス/撮影:ほりぐちよしき)
取材当時(2025年8月)は特別展として「夏の金魚展」が開かれており、島根県の天然記念物である「出雲なんきん」や「和金」など多くの種類の金魚が展示されていました。
施設内にあるビオトープ池やレクチャールームでは、飼育員が提供する「生き物観察会」といった子どもでも楽しめるイベントも行われています。
島根県立宍道湖自然館ゴビウスは、じっくり生き物を観察したい方にも、子どもを自然に触れさせたいご家族にもおすすめできる水族館です。他の水族館では見られない、“コアな生き物”に出会いたい方は、ぜひ訪れてみてください。
(サカナトライター:ほりぐちよしき)
参考文献
宍道湖自然館ゴビウス