EY新日本、建設・電力・金属業の2024年3月期会計監査で衛星データ活用
EYのメンバーファームであるEY新日本有限責任監査法人(以下:EY新日本)は、建設業、電力業、金属業の2024年3月期の会計監査において、人工衛星が取得した衛星データの活用を開始した
導入の目的と進捗
監査における財務諸表の適正性を保証するためには、グローバルかつさまざまな場所に展開するクライアントの事業活動の状況をタイムリーに把握することがますます重要となっているという。EY新日本は、株式会社Ridge-iによる衛星データ関連の知見の提供や技術的なサポートのもと、取得フローや分析手法を確立し、世界中に点在するクライアントの資産等の現場視察の補完手続や状況変化の確認への活用を開始している。
光学衛星画像データ活用による資産の現場視察の補完手続
クライアントの資産の現物確認や状況把握のために監査人による現場視察を行うが、海外や山地などの遠隔地や広範囲に存在している場合など、現地の往査や全体の状況把握が難しいケースがあるという。
そのような資産の実在性や稼働を効率的かつ効果的に確認するために、光学衛星画像データを利用するプロセスを構築し利用を開始した。世界中の衛星データのプロバイダーが提供するデータの中から、利用目的に適合するものを選択し、監査業務へ活用している。
異なる時点の光学衛星画像データ
異なる時点での同一地点の衛星データを比較し、変化を自動的に検知する技術を利用して、対象物の状況変化を把握するために活用してい。 ※活用による資産の状況変化の確認
鉱山の地形変化を自動検知(出所:EY)
※一般的な写真と同じく人間の目で感じることができる可視光線を使って観測したデータ
期待される効果
衛星データを監査に活用することで、俯瞰的な視点から資産の実在性の確認および現場理解の補完、時系列分析を行うことが可能となり、監査品質の向上と効率化、さらにはインサイト提供を通じたガバナンスの強化に貢献するとしている。
今後の展開
衛星データの分析による資産の自動検知や測定など、ディープラーニングなどのAI技術も活用した監査へのユースケースを研究開発している。また、衛星コンステレーションの発展が今後進む中、ビジネスにおける状況把握から、サステナビリティの領域など、衛星データが活躍するフィールドはより拡大していくと予想されるという。
EY新日本では、官民連携や宇宙ビジネスのIPO支援に加えて、衛星データの監査業務やサステナビリティ領域への活用に向けて取り組んでいくとしている。そこで得た知見やユースケースについて発信していくとともに、衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)などの業界団体や宇宙関連企業と連携を図りながら、宇宙ビジネスのさらなる発展に貢献していく方針だ。
各社コメント
EY新日本有限責任監査法人 宇宙ビジネス支援オフィス スペーステックラボパートナーの加藤信彦氏は、次のようにコメントしている。
加藤氏:宇宙ビジネス支援オフィスを設置後半年で監査業務への衛星データ活用が実現できたのは、クライアントの協力、セクター知見のある監査チームとデータアナリティクス経験豊富なSpace Tech Labの連携、そしてRidge-i社の衛星データ知見と分析技術のサポートのおかげです。 今後、監査法人内で衛星データの解析に必要な人材を育成しながら、スコープの拡大、サステナビリティ領域への発展など社会の期待の先にある監査の未来に向けて取り組んでまいります。
株式会社 Ridge-i代表取締役社長の柳原尚史氏は次のようにコメントしている。
柳原氏:今回の成果は、海外資産の実在性確認という重要な監査業務において衛星データを活用した事例であり、監査業界のみならず宇宙・衛星業界における民間利用の面でも大きなマイルストーンとなりました。実用に足る解析精度を実現するために、衛星データの選別や解析手法の助言を行ってまいりましたが、EY新日本の強いDX推進力のおかげで、わずか半年という短期間で業務利用段階まで進めることができたことをうれしく思います。 今後も、EY新日本と衛星データ及びAIの活用に向けたオープンイノベーションを推進し、監査業界のDX及び新たな利用事例の共創に向けて取り組んでまいります。
EY新日本
Ridge-i