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堀内美里アナも虜!“日本で一番小さい市”の名物「なんこ」は「人が集まる場所」の味

Sitakke

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北海道の食を深堀りして、その価値を考えるシリーズ「食の未来を考える」。

【連載】「堀内美里の言いたいことは山々ですが」で山ごはんレシピを日々模索中の、HBCアナウンサー・堀内美里が大学時代から愛してやまない、思い出の味にしてちょっとクセの強い郷土料理「なんこ」を取り上げます。

「なんこ」は空知地方、「日本で一番小さい市」歌志内市で親しまれてきた郷土料理。

その原材料は、「馬の腸」!
味噌としょうがを効かせてじっくり煮込んだ料理なんです。

そんな「なんこ」は、まちの歴史と深く結びついています。

産炭地の歴史の中で

1948年のピーク時には、約5万人が住んでいた歌志内市。
当時、日本のエネルギーを支えていた石炭で栄えていました。

秋田県とつながりが深かった歌志内市 歌志内郷土館提供

歌志内市の炭鉱作業を担ったのは、石炭採掘技術と共に秋田からやってきた炭鉱マンでした。
さらに一緒にやってきたのが、秋田で食べられていた「なんこ」だったんです。

馬は、当時炭鉱で荷物の運搬に使われていました。

歌志内郷土館提供

作業中に命を落とすことも多く、弔いの意味も込めて馬の肉が食べられていたそうです。

「スタミナがつく」「馬力がでる」と言われていた馬肉料理。

歌志内郷土館の佐久間淳史さんがその由来の一説を教えてくれました。

「午の刻はちょうどお昼に当たる。その時に太陽が南を向いている、南向き、なんこうと呼ばれるようになった」

歌志内郷土館提供

炭鉱マンは、酒を酌み交わしながら、なんこで栄養を蓄え、仲間との絆を深めていたんですね。## 毎年おみやげに持たせてくれて…

中央が大学時代の私です…!

そんな「なんこ」と私の出会いは、よさこいチームで活動していた大学時代。

毎年、歌志内市の夏祭りにそのチームで足を運び、ボランティア活動をしながら踊っていました。

そのなかで地元の人が大きなお鍋でふるまってくれたのが「なんこ」。

それ以来ちょっと癖のある味がとりこになり、私の家の冷蔵庫には、「なんこ」が常備!

当時からお世話になっている三浦さんが、毎年「お土産に」ともたせてくれるものを、大事に大事に食べています。

自宅の冷凍庫に大事に入れています

そんな私の第二の故郷の味、「三浦さんのなんこ」の作り方を、お家におじゃまして教えてもらいました!

右が三浦勝子さん

炭鉱マンが愛した、故郷の味。

大学生の時に「なんこ」をごちそうになった三浦勝子さん。
夫、勇さんは、元炭鉱マンです。

勇さんが食べてきた「炭鉱マンの味」が、今このなんこにも受け継がれています。

元炭鉱マンの三浦勇さん なんこを頬張り「これ!この味だ」

お正月やお盆には多ければ5キロもなんこを作るといいます。

こうして、歌志内の家庭で食べられてきたなんこ。しかし、今作る家庭は減っています。

舌と手で覚えた味をどう受け継ぐか

手際よく切ったり混ぜたり…味付けのほとんどは「目分量」と「長年の感覚」

勝子さん自身は「嫁いできてから覚えた」というなんこの作り方。

お姑さんの横に立ち、一緒に作りながら「三浦家の味」を感覚で覚えてきました。
同じ味になるまでは「大体5~6年、かかったかな」と笑います。

ちなみに、勝子さん自身はほとんどなんこを食べないんだとか(笑)

夫の勇さんや子どもたちが大好きで、みんなで食卓を囲むときに欠かせないから作るのだそうです。

目分量で、舌と手が覚えている伝統の味。

世代が集まって一緒に食卓を囲む機会が減っている現代では、それだけなんこを一緒に作れる機会も減っています。そしてそれはそのままこの味を次の代に受け継ぐ難しさにもなっています。

「お嫁さんはなかなかうまく作れないって。何回か作ってはいるんだけど。覚えている途中ですね」

もうひとつ、「なんこ」が家庭でなかなか食べられなくなった理由があります。

材料である「馬の腸」が手に入りにくくなっているんです。

馬腸が手に入らない?閉店した精肉店が…

実は歌志内市には今、精肉店がありません。

2023年にマチ唯一となっていた精肉店が閉店し、市内ではここだけで買えていた馬腸も買うことができなくなってしまいました。

それでも、マチの郷土料理である「なんこ」を残したい。
精肉店が作る「本物の味」を伝えたい。

そんな思いで閉店後に設置されたのが、なんこが買える「自動販売機」でした。

自販機のすぐ後ろ「ナンコ」と書かれた場所で加工している

新鮮な肉を食べられるように、加工場は自販機のすぐ後ろ。

木村精肉店の「馬腸」はとてもキレイに処理されていて食べやすく、すでに味付けされた「なんこ」も売られていて、家で水や調味料を追加すると手軽な「なんこ鍋」として楽しむことができます。

一方、家庭で作る機会が減っている「ふるさとの味」を守ろうと、飲食店で「なんこ」を出す場所があります。
それはちょっと意外な場所なんです。

下処理だけで5時間!丁寧に作られたママの味

歌志内名物「なんこ」。

主に家庭で食べられてきましたが、今、歌志内市の2つの飲食店でも味わうことができます。

そのうちの一軒が…夜のイメージが強い「スナック」!

歌志内出身のママ、幸子さんは「スナックアルファー」で「なんこ定食ランチ」を始めました。

元々ランチ営業をしていたわけではなくて、「なんこを昼にも食べたい」という声に応えて、ランチ営業を始めたんですって!

昼時には、地元の人が続々集まって…。

スナックのカウンターが昼時にこうしてにぎわうのは新鮮!

市民に親しまれている味ですが、作るのは大変そうです。

この大きな塊がなんこの原料、馬の腸です!

黄色く見える部分は馬の脂。うまみにもなります

シンクで洗い始めますが…これがなかなか…結構…においます…。

「生の」馬の腸の独特なにおいがキッチン全体に広がります。

あぁ…独特のにおい…

下処理にかかる時間はなんと…5時間!

「3~4回洗って、1回湯がいて、それをまたさらに洗って、細かく切るの」

幸子ママは慣れた手つきでテキパキ準備を進めていきます。

煮込んだらもうあのにおいは消えて、食欲がそそられる~!

じっくり煮込んでおいたなんこに、玉ねぎとつきこんにゃくを入れて、完成!

人が集うところにある味なんだな…

やわらかく、ぷるぷるに煮込まれたスナックアルファ―の幸子ママ特製のなんこ!

これです!この味!独特の癖があるんですが、それがおいしいんです!

かつて、炭鉱で栄えていた時代には、家庭でも親しまれることも多かったなんこ。

幸子ママは「今は食べられるところがないから、だから定食を始めた」と話します。

「なんとか無くしてはいけない、歌志内の名物を」

そんな幸子ママのもとに、きょうも常連客が集まります。

「いつも変わらないおいしい味」
「昼間食べるより、夜に酒の肴の方が…」
「家庭ではもう食べないけど、やっぱり歌志内といったらなんこ」
「地方へ行った人も歌志内に帰ってきたらなんこを食べたいってなる」

「一杯飲みたくなるよね」

あって当たり前の「自分の家の味」

特別な日は「たけのこ」を入れる家庭も多いのだとか

今でも、人が集まるところにある、故郷の味「なんこ」。
お盆に家族で集まるそんな場所にも、やっぱり「なんこ」があがります。

作るのは荒岡利恵美さん。

おじいちゃんも、子どもたちも…。世代を超えて、一緒に味わい、分かち合います。

「親せきみんなで集まって、わいわいするときに作る、それがなんこ」

「あって当たり前の感じで育ってきた。この味付けは、自分の家庭だけの味なので、そのうち伝授して…」

それを聞いていた、長女の黒田紗保さんは「一度も作ったことがないのでこれから教えてもらいたい」と返します。

故郷に集う、そのときにいつもある「なんこ」は、歌志内市出身ではない私もあたたかい気持ちにさせてくれました。

故郷の味は当たり前のようにそばにありますが、たくさんの人の想いによって守られ受け継がれていくと学びました。

そしてこの「なんこ」を、大人気マンガ 『山と食欲と私』(Ⓒ信濃川日出雄/新潮社)と【連載】「堀内美里の言いたいことは山々ですが」がコラボして、「山ごはん」としてアレンジ!
マンガにも掲載されることになりました!

レシピ開発の模様と裏側、そして実際山で作った動画は後日公開します!

******

HBCアナウンサー・堀内美里(ほりうち・みさと)
北海道生まれ・北海道育ち。2021年入社。HBCテレビ「グッチーな!」「吉田類 北海道ぶらり街めぐり」、HBCラジオ「平野龍一のミライの扉」を担当。登山歴3年。おいしくごはんを食べるために山に登っています。登山の魅力はインスタグラムでも発信中

取材・文:HBC報道部・Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年8月19日)の内容に基づき、一部情報を更新しています。

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