新本殿整備事業完遂祝う 澤田八幡神社(栗林町)例大祭 黄金色の秋風景の中、鹿踊&虎舞に住民歓喜
釜石市栗林町沢田の澤田八幡神社の例大祭は15日に行われた。昨年、本殿の建て替え工事が行われた同神社は、周辺の環境整備が全て終了。今年の祭りは事業完遂を祝って、郷土芸能の披露などが盛大に行われた。また今年は、三閉伊一揆の指導者の一人として活躍した郷土の偉人、三浦命助の関係資料が県の文化財に指定されたことも記念し、命助の生誕地・上栗林でも踊りが奉納された。
同神社は江戸時代後期、文政(1818-30)年間の建立。木造の本殿は1955年に屋根のふき替えのみ行われていたが、建物の老朽化が顕著となったことから、地元住民組織・沢田新生会(川崎浩一会長、100世帯)が中心となって、一昨年から建て替え事業を進めてきた。本殿は昨年6月に完成していたが、参道整備や新しい扁額の設置などがこのほど終了。例大祭が住民へのお披露目の場となった。
14日夜に宵宮祭、15日は神社での神事の後、関係者が上栗林の「三浦命助顕彰碑」に足を運んだ。同碑は命助の没後100年にあたる1963年に町民一同によって建てられたもので、裏山には命助の墓がある。今年4月に命助関係資料が県指定文化財となったことを記念し、碑の前で澤田鹿踊と澤田虎舞が踊りを奉納した。命助が信仰した観音堂の前では、郷土の人々を救った命助ら先人の御霊を慰め、感謝の祈りをささげた。
写真⑤ 住民らが見守る中、伝統の舞を披露する鹿踊の踊り手
命助の関係親族の女性(81)は「地域の皆さんが文化財指定を祝ってくれてありがたい。自分のためではなく、みんなのために事を起こした命助さんに敬意を表したい。これからも地元の歴史としてつないでいければ」と願った。
昼食をはさんで午後からは、神社境内で両芸能が披露された。澤田虎舞(大丸広美代表、30人)は跳虎(はねとら)、笹喰み(ささばみ)、甚句など多彩な踊りを披露した。同虎舞は片岸虎舞の流れをくむもので、明治時代から踊られているとみられる。少子高齢化による担い手不足などで、10年ほど前から近隣の砂子畑道々虎舞と相互交流。両地区神社の祭典では踊り手を出し合い、継承の一助としている。
祭りでは“子虎”も大活躍。小学生らが小さな頭(かしら)を振って踊り、観客から盛んな拍手を浴びた。栗林に母方の祖父が暮らす長谷川諒さん(9、野田町)は幼いころから同虎舞に親しむ。今回も祭りに向けて「頭をちゃんと振るところや笹で歯磨きするところ(笹喰み)を頑張って練習しました」と自信をのぞかせた。出来を聞いてみると「100点!」とのこと。「虎舞はみんなで協力してやるところが楽しい。これからも続けたい」と目を輝かせた。
澤田鹿踊(川崎充代表)は祝入羽(いわいりは)、向返し(こがえし)、花踊りなど5演目を披露した。メンバーは小学1年生から77歳まで約20人。同鹿踊は約330年前、房州(現千葉県)生まれの唯喜伝治という人物が沢田地区の名家に雇われた際、地区の若者たちに教えたのが始まりとされる。市内の鹿踊伝承の先駆けで、1980年に同市指定無形民俗文化財となっている。
鹿踊も担い手育成は大きな課題。事務局の小澤英樹さん(53)は「とにかく続けていくことが大事。地元小学校統合の話もあり、子どもたちへの継承は難しさを増すが、何とかつないでいきたい」と伝統芸能の誇りを胸に刻む。この日は同祭りの評判を聞きつけ、県外から足を運んだ客もいて、「地域の良さを内外に広めていければ」との思いも強くする。
沢田地区に暮らす菊池ウメさん(79)は終始、笑顔で郷土芸能を楽しみ、「祭りって本当にいいなあと思って。小さい子どもたちの踊りもかわいくてね…。昨日の宵宮祭もすごく良かった」と心を躍らせた。同神社の本殿が新しくなったことも喜び、「これからもみんな元気で暮らせる地域になれば」とご加護を願った。
同神社氏子総代長も務める新生会の川崎会長(61)は「多くの皆さんのご奉賛をいただいて本殿を新しくでき、感謝の気持ちでいっぱい。祭りは伝統芸能の継承にも欠かせない。力を合わせ、芸能を含めた地域文化の継承に努めていきたい」と思いを新たにした。