「もう、サルノ?」「グッチ」をデ・サルノに託した2年あまりでケリングの株価は半減していた
「グッチ(GUCCI)」ほど浮き沈みが激しいブランドはないかもしれない。2月6日にサバト・デ・サルノ(Sabato De Sarno)がクリエイティブ・ディレクターを退任した。2月25日に開催される「グッチ」の2025年秋冬コレクションのショーを待たず、突然の退任となり、「グッチをもう去るのか?」と驚きの声があがった。在任期間はわずか739日だった。
ただ、親会社であるケリング(Kering)」の株価を見ると、決して早すぎる退任ではなかった。サバト・デ・サルノが「グッチ」のクリエイティブ・ディレクターに就任したのは2023年1月28日、週末を挟んで1月30日の始値は555.80ユーロで、退任を発表した2025年2月6日の終値は251.90ユーロ。サバト・デ・サルノの2年あまりの在任期間中にケリングの株価は54.68%下落しており、旗艦ブランドの立て直しは急務であった。
ケリングにおける「グッチ」の売上高構成比は2024年12月期の中間期決算で44.4%(40億8500万ユーロ)を占めており、「サンローラン(Saint Laurent)」の14億4100万ユーロ、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」の8億3600万ユーロ、さらに「バレンシアガ(BALENCIAGA)」や「アレキサンダー マックイーン(Alexander McQueen)」の17億1700万ユーロを合算しても「グッチ」の売上高には追い付かず、ケリングにとっていかに「グッチ」が屋台骨であるかがわかる。
ここで、ケリングの屋台骨である「グッチ」の上半期売上高を振り返ってみる。
・2024年1〜6月:40億8500万ユーロ(約6821億円=決算当時のレート167円で換算、前年同期比18%減)
・2023年1〜6月:51億2800万ユーロ(約8050億円=決算当時のレート157円で換算、前年同期比0.9%減)
・2022年1〜6月:51億7300万ユーロ(約7087億円=決算当時のレート137円で換算、前年同期比15%増)
・2021年1〜6月:44億7930万ユーロ(約5823億円=決算当時のレート130円で換算、前年同期比50%増)
・2020年1〜6月:30億7200万ユーロ(約3809億円=決算当時のレート124円で換算、前年同期比34%減)
2020年はコロナ禍の影響で各国でロックダウンとなり、ケリング全体でも30%の減収だった。その後、「グッチ」は回復基調にあったが、今度は中国市場の減退という大きなインパクトの影響で、サバト・デ・サルノが就任して以降、「グッチ」が本来の売上高を回復するまでには至らなかった。デザイナーひとりにその屋台骨のすべての責任を負わせるのは酷だが、デ・サルノがクリエイティブ・ディレクターに就任した際にCEOだったマルコ・ビッザーリ(Marco Bizzarri)も2023年9月23日にすでに「グッチ」を去っている。
今後、旗艦ブランドの立て直しは誰に託されるのか。後任は後日発表するとしているが、「セリーヌ(CELINE)」を退任したエディ・スリマン(Hedi Slimane)や「ディオール(Dior)」を退任したキム・ジョーンズ(Kim Jones)などの名前がすでに取り沙汰されている。