役場にカフェ&ライブラリー!「人が集まり、想いがめぐる、大屋根のあるまち」 鞍手町新庁舎(福岡・鞍手町)【まち歩き】
2025年1月6日。ひとつの節目を迎えた福岡県鞍手町に、町の未来を映すような新たな拠点が誕生した。
鞍手町役場の新しい庁舎だ。けれど、そこには「役場」という言葉から想像する堅苦しさは、どこにも見当たらない。むしろ、ふらりと立ち寄りたくなる温もりと開放感に満ちていた。
【空を包む大屋根、町をつなぐ拠点へ】
新庁舎の外観でまず目を引くのが、ダイナミックな大屋根だ。まるで、空と地面をふわりと包み込むようなその姿には、“自然と人が調和する町でありたい”という思いを感じさせる。
建物は環境共生庁舎として、太陽光発電や蓄電池、地中熱利用などを取り入れた「Nearly ZEB」仕様。自然エネルギーで庁舎が自立するだけでなく、周辺施設への電力供給も可能なレジリエンス性能も兼ね備えている。
まさに、“町を守る家”としての安心感と、“町に溶け込む家”としての柔らかさを併せ持った存在だ。
【ここから始まる、未来への約束】
庁舎は3階建てで、1階には窓口業務や多目的ホール。2階には産業やインフラ、教育部門と共に、住民がふらりと立ち寄れる空間が設けられている。3階は防災の中枢としての機能が集約され、いざという時に力を発揮する設計だ。
新庁舎は、ただの建物ではない。人と人とがつながる場であり、過去と未来が交わる“まちの縁側”なのだ。
【“晴れる”がテーマの、小さな虹の図書館】
そして、この庁舎の中でもひときわ心を惹かれたのが、「ブックライブラリ にじいろ」だ。出版大手の日販が手がけた、町民参加型のライブラリである。
約50㎡の空間に並ぶのは、専門のブックディレクターが選んだ400冊と、町民のおすすめ本140冊。テーマは“晴れる”。「笑って」「泣いて」「動いて」など、7つの“晴れ”の感情に沿った棚が並ぶ。貸し出しはなく、その場で読むスタイルだが、それがかえって“この場所で過ごす時間”を愛おしく感じさせる。
【ふらっと寄れる町のキッチン「てらすカフェ」】
本を読み終えた後は、お腹も心も満たしたい。そんなとき、2階の「てらすカフェ」へと足を運んでみよう。
ここは、障がいのある方々の就労支援を目的とした「カフェソアレ」が運営するカフェ。木のぬくもり溢れる空間で、チキンフィレバーガーや、ハリケーンポテトが楽しめる。バンズの香ばしさとチキンのジューシーさに、野菜もたっぷりで、思わず顔がほころぶ。味も一級品だ。
そして、価格も驚きの良心設定。このレベルのバーガーで350円とは……庁舎とは思えぬクオリティとホスピタリティに、思わず“住みたい”とさえ思ってしまう。
【大屋根のすぐそばで、遊んで、ふれて、感じて】
鞍手町新庁舎のまわりには、日常に彩りを添える場所がいくつも点在している。すぐ隣に広がる「こども広場」では、滑り台やクライミングエリアで子どもたちがのびのびと遊び、小さな子向けの安心スペースも完備。さらにもう一歩歩けば、「石炭資料展示室」が現れる。ここでは、坑道を模した空間や音と映像の仕掛けを通して、かつて炭鉱で栄えた鞍手の歴史にふれることができる。
遊びと学び、そして町の記憶と未来。どれもが徒歩圏内にギュッと詰まっていて、暮らしと文化が自然に重なり合う。大屋根の下から、鞍手町の物語はそっと広がっている。
未来をつくるのは、建物そのものではなく、そこに息づく暮らしと人の営みだ。
鞍手町の新庁舎が完成した今も、それはゴールではなく、あたらしい“まちの物語”のはじまりにすぎない。
本を通して誰かの思いに触れ、
コーヒーを飲みながら日々の出来事を語り合い、
すぐそばの広場では子どもたちが走り回り、
少し歩けば、かつての炭鉱の記憶にふれることができる。
穏やかな日常の中に、学びがあり、支え合いがあり、笑いがある。
そんな風景のひとつひとつが、この町の“らしさ”を育んでいる。
大屋根の下から広がるのは、ただの空間ではない。
そこには、鞍手町の時間と記憶、そして未来がやわらかく流れている。
■鞍手町役場
住所:福岡県鞍手郡鞍手町大字小牧2080番地2
電話:(0949)42-2111 駐車場:あり
開庁時間(1•2階共有スペース):8時30分から22時00分まで
業務時間:平日8時30分から17時15分まで(一部の業務は木曜日のみ19時00分まで)
てらすカフェ営業時間:平日9時00分から16時00分まで
閉庁日:12月29日〜1月3日
[HP]
https://www.town.kurate.lg.jp/