学生街・早稲田から減っていく書店
ここ数年、書店が減っているというニュースをよく聞きますが、「学生街」も例外ではないようです。
早稲田大学近くの書店「文禄堂早稲田店」閉店
昨日9月16日、早稲田大学の近くの書店「文禄堂早稲田店」が閉店しました。
早稲田大学に通う学生に話を聞いてみました。
・「マイルストーン」っていう、授業の情報とかサークルの紹介とか書いてある早稲田の情報誌を買いに行きました。大学の図書館とかあるので、事足りたりはしますけどね。
・やっぱり学校の近くに本屋さんがあると、資料集めにすごく役立つので閉店するのは悲しいと思います。電子書籍の方が身近だったりするので、そういうのも関係しているのかなと思います。
・文禄堂さんで本を買って喫茶店に行って、そこで本を読むことが結構多かったので、無くなるって聞いたときは結構ショックでしたね。いいなと思う本に出会えたときの感動は、やっぱり本屋でしか味わえないなと思っているので、学生街の早稲田でどんどん書店が減っていくのは、時代も変わっちゃうのかな。生協も結構利用しているんですけど、本屋さんにしかない本だったり、本屋さんで買うというのがやっぱり楽しいのかなと思いました。
「最近はスマートフォンで読めるようになって便利だとも思うけれど、かと言って紙の本屋さんが少なくなるのは寂しい」という声もありました。中には「自分はよく書店に行っていたけれど、周りの友人はインターネットで買う人が多い」という声もあって、この時代ならではの流れも感じました。
文禄堂早稲田店は、1989年(平成元年)にあゆみBOOKS早稲田店としてオープンし、2018年に文禄堂にリニューアル。私も実は学生時代、まだ「あゆみBOOKS」のときによく利用しましたが、大学のキャンパスと早稲田駅の間にあって、空き時間にも利用しやすかったのを覚えています。
出版サークルにも影響
文禄堂の閉店は利用者だけでなく、大学の出版サークルにも影響が出ています。「早稲田魂」という、早稲田を目指す受験生などに向けた雑誌を発行する「早稲田大学英字新聞会 ザ・ワセダ・ガーディアン」の2年生 大澤慧人さんのお話です。
早稲田大学英字新聞会 ザ・ワセダ・ガーディアン 2年生 大澤慧人さん
他の書店さん等にも置かせていただいているんですけど、その中でも群を抜いて一番売れているのが、文禄堂さんです。正直ショックで、当たり前にあるものが無くなってしまうというのは、すごくショックに感じました。閉店後は、他の出版サークルとも協議して「一緒に新しい営業先を決めていこう」という形になっています。今の段階ではカフェや飲食店さんに置いていただけるようにお声がけさせていただいている形です。新しい営業先を決めて、交渉してっていうところに人手も割かないといけないのは結構、大きな痛手かなと思います。
手に取ってもらいやすい店舗だったということで、サークルのみなさんもショックを受けていました。「早稲田魂」は毎年約1000部を発行し、全国の書店などで販売、この文禄堂には50部を置いていたそうですが、今年度の分はすでに完売しているそう。書店の減少を受けて、出版サークルの「出版文化」をどう繋いでいくか、という点も課題になりそうです。
大学近くでは今、近くの高田馬場駅周辺も含めると「芳林堂書店高田馬場店」や、法律書などを扱う「成文堂早稲田正門店」、大学の生協などが営業していて、本を購入することができます。
古本屋もかつての半数に「面白い街でもあり厳しい街」
そして早稲田というと、新刊書店だけではなく古本屋が多い街としても古くから知られてきました。今、その古本屋も少なくなっているようです。西早稲田にオープンして来年で50年、5000冊ほどの古本を扱っている「古書現世」の店主 向井透史さんに伺いました。
「古書現世」店主 向井透史さん
店舗は、90年代、僕が入ったころは40軒近くが、この早稲田通り沿いに、早稲田大学から高田馬場の間に古本屋がずっとあって、今もう20軒は無いくらいですね。SNSでの発信とか、古本屋さんって買い取りが大事なんですよね、お客さんから本を売ってもらうのが。双方向性でいろいろな形でお客さんと、やりとりはこまめにするようにしていますね。ここの早稲田で古本屋をやっていると、本当に大学頼みしかないんですよね。今もそうですけど、夏休みとか、休みが本当に大学って実は多いんですよね。だから、インターネットに力を入れるとか、その隙間を、お店が売れない時期をどういうふうにやっていくか。やっぱり本屋が好きな人って「何を探しに行く」ではなくて「何かないかな」って探しに行く人が多いので、新刊書店とか古本屋とか、ちょっと余裕のある本の触れ方っていうですかね。本屋をまわるような人がもっと増えたらと思いますけどね。
今は基本的に午後を中心に営業しているそうですが、昔は1日中、学生が来るので、朝8時ごろから夜9時ごろまで営業していたそう。早稲田は「大学の影響を丸ごと受ける街なので、だからこそ面白い街でもあり、やっぱり厳しい街でもある」という向井さんの言葉が印象的でした。コミュニケーションを楽しみに来てくれるお客さんも多いそうで「これからも頑張って続けていきたい」と話していました。
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:西村志野)