Yahoo! JAPAN

デビュー50周年【天まで響け!岩崎宏美】ミュージックシーンに残したその偉大なる足跡

Re:minder

2025年03月05日 岩崎宏美DVD6枚組のボックスセット「HIROMI IWASAKI 50th TBS Special Collection」発売日

絶え間なく第一線で活動してきた岩崎宏美、デビュー50周年


今年(2025年)、デビュー50周年を迎える岩崎宏美。実に半世紀もの間、絶え間なく第一線で活動してきた稀代のポップシンガーの記念すべき年にあたる。

岩崎宏美は1974年に日本テレビのオーディション番組『スター誕生!』決勝大会で最優秀賞を受賞し、1975年4月25日に「二重唱(デュエット)」で歌手デビューを果たす。作詞は阿久悠、作曲は筒美京平。同じ作家コンビで作られた2曲目の「ロマンス」がチャート1位を獲得する大ヒットとなり、瞬く間にトップアイドルとして絶大な人気を獲得。これ以降、阿久悠&筒美京平コンビによるディスコ歌謡路線で「センチメンタル」「未来」などの大ヒットを放った。

初期のディスコ路線を受け継いだ、正統派ポップスシンガーとしての楽曲


その後もキャリアの節目で、幾つもの大きなヒット曲に恵まれた岩崎宏美だが、彼女の発表してきた楽曲には、いくつかのタイプがある。1つは初期のディスコ路線を受け継いだ、正統派ポップスシンガーとしての楽曲だ。作曲家が大野克夫に交代した1977年4月の「悲恋白書」に始まり、1978年2月には、穂口雄右が作曲した「二十才前」、1979年5月の馬飼野康二作曲によるサンバ歌謡「夏に抱かれて」。さらには同じく馬飼野の作曲で大人のシンガーへの脱皮を果たした同年9月の「万華鏡」など、多彩な作家陣によって随所で魅力ある楽曲を発表している。

今では彼女の代表作の1つとなった1978年7月の「シンデレラ・ハネムーン」や、久しぶりにポップス路線に回帰した1983年2月の「素敵な気持ち」など、筒美京平が随所で秀作を提供してきたことも大きい。ここから派生した、ヨーロピアンムードのイージーリスニング路線も岩崎宏美ならではの魅力。1978年11月の「さよならの挽歌」を皮切りに、1980年4月の「女優」、1983年6月の「真珠のピリオド」など、エレガントで芳醇な楽曲群は筒美京平の独壇場である。

チャート1位の大ヒットを記録した「聖母たちのララバイ」


もう1つの特徴が、スケールの大きなバラードや、映画・ドラマ主題歌として発表されてきたヒューマニズム溢れる大作。起点は1977年9月に発表された阿久悠作詞、三木たかし作曲の「思秋期」で、1980年8月発売の、宮川泰作曲による『宇宙戦艦ヤマト』関連のナンバー「銀河伝説」を経て、1982年には日本テレビ『火曜サスペンス劇場』のエンディングテーマとして発表された「聖母たちのララバイ」がチャート1位の大ヒットとなる。これ以降 “火サス” の主題歌は岩崎が務め、「家路」「橋」「25時の愛の歌」「夜のてのひら」を年1作ペースで発表した。

日本の風土に根差した叙情派の作品も岩崎宏美が得意としており、実はデビュー曲「二重唱(デュエット)」のB面「月見草」ですでにこの世界を歌っている。1979年2月の「春おぼろ」を経て、1981年3月発売の「恋待草」に始まる “草花シリーズ” で本格化。続く同年6月のジャッキー吉川とブルーコメッツのカバー「すみれ色の涙」、10月には「れんげ草の恋」をリリース。さらに1982年の「思い出さないで」や1986年の「小さな旅」などへと続いていく。

音楽ファンに強く支持された、クセがなく伸びやかなボーカルと、時代のリズムに対応する高い歌唱表現は、ポップス路線やヨーロッパ軽音楽風作品で大きく花開き、逆に高い歌唱力と清廉な声質の魅力は映画・ドラマ路線や叙情派作品でその魅力を聴かせた。岩崎宏美がコアな音楽ファンに加え、大衆的な支持を集めたのはこういった音楽性の豊かさ、幅広さにある。大衆的な支持、という意味では「聖母たちのララバイ」が、ふだんは歌謡曲を聴かない海外赴任の企業戦士たちがこの曲を聴いて癒された、というエピソードに代表される。

新境地を開拓した「決心」


1985年には所属事務所から独立し、同年4月5日に独立第1弾として発表された「決心」ではまた別の魅力を見せている。「聖母たちのララバイ」を書いた山川啓介の作詞、作曲は奥慶一、編曲はデビューから断続的に岩崎作品を手掛けてきた萩田光雄という布陣で、リッチなゴージャス感を纏った大人の女性のラブアフェアーを歌い、新境地を開拓。B面「夢狩人」と共にカメリアダイヤモンドのCMソングとなりヒットを記録した。

1986年には音楽ユニット、元・東北新幹線の山川恵津子の作曲によるワルツの傑作「好きにならずにいられない」を発表。1988年には濱田金吾作曲の「聞こえてくるラプソディー」で洗練の極みともいえるラブバラードを聞かせた。濱田は、岩崎が1979年に桑名正博と共演したロックミュージカル『ハムレット』の劇中音楽を担当して以来、断続的に楽曲提供しているが、その成果が実を結んだ1作となった。

1970年代、1980年代に発売されたアルバムは名盤揃い


岩崎宏美はアルバムにも名盤が多い。1970年代までの歌謡シーンでは、シングル曲に比べアルバム作品がフィーチャーされることは少なかったが、1976年2月のセカンドアルバム『ファンタジー』は筒美京平と穂口雄右による和製フィリーソウルの名曲選といった内容で、曲間を糸居五郎のDJで繋ぐというウルフマン・ジャック的アイデアがユニーク。また、1978年8月の『パンドラの小箱』は全曲を筒美が作曲した和製ディスコ歌謡の金字塔と呼べる名盤だ。

さらに、1980年の『WISH』も全曲筒美作品で固めたロサンゼルス録音盤で、中でも「Wishes」での筒美のピアノ1本と岩崎の歌唱による共演が聴きもの。スティーヴ・ルカサーやデヴィッド・フォスター参加による、やはりロサンゼルス録音の1984年作『I WON'T BREAK YOUR HEART』、山川恵津子とのコラボが一層のポップセンスを極めた1986年の『わがまま』、濱田金吾、和泉常寛らシティポップの名手が全面参加した1988年の『Me too』など、どれをとっても名盤揃いである。

加えて、前述したヨーロッパ系音楽路線と、映画・ドラマ主題歌路線の源流になったのが1979年3月発表のカバーアルバム『恋人たち』。ここで岩崎は「シェルブールの雨傘」や「黒いオルフェ」などの映画テーマ曲をカバー。この中でオリジナル曲として書かれた「恋人たち」は阿木燿子&筒美京平によるエレガントなヨーロピアン調の楽曲である。

同時に、叙情派路線が本格化する前の1978年10月にも、童謡・唱歌のカバー集『ALBUM』を発表。好評につき1980年2月にも第2弾がリリースされ、翌年11月の『すみれ色の涙から…』では「サルビアの花」「少しは私に愛を下さい」など叙情派フォークのカバーを多数収録。実に多彩な表現力で、日本のポップシーンを彩ってきたのが岩崎宏美というシンガーの歴史なのだ。

ボックスセット『HIROMI IWASAKI 50th TBS Special Collection』が発売


近年は、同じく大ベテラン・野口五郎との初のデュエット作「好きだなんて言えなかった」を2021年に発表。2023年には、ダンスチーム “アバンギャルディ" が、アメリカNBCネットワークの公開オーディション番組『アメリカズ・ゴッド・タレント』で、岩崎の「シンデレラ・ハネムーン」を使って鮮烈なダンスパフォーマンスを披露し、大きな賞賛を受けた。この時流れたのは、オリジナルの1.14倍速というかなりのアップテンポだが、これを受けて同年10月6日には、「シンデレラ・ハネムーン」のスピードアップバージョンも配信されている。

そして今年(2025年)3月5日には、デビュー50周年記念の一環として、DVD6枚組のボックスセット『HIROMI IWASAKI 50th TBS Special Collection』が発売される。『8時だョ!全員集合』をはじめ、『ザ・ベストテン』『ロッテ歌のアルバム』『サウンド・イン “S”』『BS-TBS』『日本レコード大賞』など、TBSが誇る音楽番組の岩崎宏美出演映像が一挙収録されることになった。トータルで実に約7時間。デジタルレストア&サウンドマスタリングを新たに施し、鮮やかな映像で、歌番組黄金時代に活躍した岩崎宏美の映像を観ることができる。

その充実した歌唱力を堪能できることはもちろん、彼女の美しく艶やかなロングヘアーの輝きまで楽しめる。惚れ惚れするほどの歌の上手さ、抜群のリズム感と歌唱解釈などなど、いつまで見続けても飽きない、数々のあざやかな場面をぜひ堪能していただきたい。

HIROMI IWASAKI 50th TBS Special Collection
・発売日:2025年3月5日(水)
・仕様:6枚組DVDボックスセット(三方背豪華BOX / 特製デジパック仕様 / 解説書付き)
・価格:29,480円(消費税込み)



・DISC1「in 8時だョ!全員集合」(約66分予定)
・DISC2「in ザ・ベストテン」(100分)*数々の名場面を久米宏&黒柳徹子とのトークも含め収録
・DISC3「in ロッテ歌のアルバム +(プラス)」(64分)
・DISC4「in サウンド・イン“S” +(プラス)」(71分)
・DISC5「in BS-TBS」(約68分)
・DISC6「award 日本レコード大賞 +(プラス)」(約75分)合計444分

【関連記事】

おすすめの記事