第28回「責任」についてどう思う?
「私たちの未来は、私たちで作る!」
あなたの「困りごと」、「モヤモヤ」、「お悩み」、もしくは、「変えていきたい社会の課題」などを通して、みんなで一緒に「これから」を考えていく番組です。
今回も、リスナーの方からいただいたメッセージに、スタジオの3人がこたえました。
小泉今日子さんがNHK「あさイチ」に出演された時、独立された時のお話がすごく印象に残りました。「誰かの責任にしてしまう環境が心に重かった。やっと自分の責任で行動できる立場になれた」という内容です。
今の若者の責任について少し調べてみたところ、ある調査で「出世欲のない20代は77%」というものがありました。出世したくない理由は「責任のある仕事をしたくない」がトップということでした。
昭和生まれだからかもしれませんが、どうしたら成長できるかを常日頃考えている私からすると、なんか、モヤモヤしました。今日子さん、英司さん、彩子さんは「責任」についてどう思われていますでしょうか?
小泉:若い人が会社の中で責任のある仕事をしたくない、っていうのはなんとなくわかるんじゃない?
大石:ですね。
小泉:だって、怒られるの嫌だし、失敗して大変なことになったらどうしようって。私だって、よく思います。私の場合は長年働いてきて、もうこの仕事から逃れられない、やっていくしかないなって思った時に自分の責任にしてしまった方が気が楽っていうふうになっていったんですけどね。
大石:これね、管理職の人が疲れているんじゃないかと思うんですよ。板挟みになっちゃってね。若い人からすると、すぐ上の人が管理職じゃないですか。社長は意外と身軽なんですけどね。
小泉:そういうのを見てたら「大変そうだな」って思っちゃうって感じ?
大石:そうそう。
上村:30代の私からしても、上の人は大変そうだなって思いますね。
小泉:そうなんだよね。得意なことと、得意じゃないことって人間だから絶対あるわけじゃないですか。でも、出世してしまうと自分がそんなに得意じゃないことまでしなくちゃいけない。
ドラマとかでも、プロデューサーの下に「アシスタントプロデューサー」っているじゃないですか。当然、みんなプロデューサーになりたいだろうと思うじゃないですか、でもそうじゃない人がいて。自分はそこには行きたくない、怖くて行けない。だけど、その才能たちを支えるっていうのが本当に楽しくて生き甲斐なんだ、って言ってそのポジションにいるとか。映画監督とかもそうで、助監督の立場が自分に合っていると思っている人がいるから。上に行くことが幸せなのか、っていう。
大石:本当にそう。
上村:最近、ADさんでもいますね。ディレクターさんの補助に入ってお手伝いするのが好きだけど、自分がディレクターとしてリーダーになったりとか、自分が作りたいもの、取材したいものがあるかと言ったら、特にない、みたいな。
小泉:それはそれで責任のある立場なんだよね。だからね、あんまり気にしないでいたらいいかなって思います。
上村:そして、きょんさんの言葉といえば、Xで新聞のインタビューを切り取った投稿がバズっているそうです。そこに書いてあるのは「16歳の私が頑張ったから今の私がある。逆もアリで今、58歳の私が頑張ったら16歳の私も報われるし、70歳の私にも感謝されると思うんです。(中略)時間はタテだけではなく、ヨコにも広がっている、と思っていて…」という記事です。
大石:ええ話や。
小泉:この考えを思いついた時「わぁ!」って思ったんです。過去って変えられないと思うじゃない。だけど、今の私が頑張っていて、過去の私を肯定してあげられたら、その過去すらよくなる気がして。結局今頑張るしかないんだよな、って思ったんです。
大石:どんなタイミングでこの考えが降りてきたんですか?
小泉:忘れちゃいましたけど、なんか、本を読んだり、映画を観たり、わりと多次元の話が好きだったりするんですよね。
私は、あのイメージ…昔ビジーフォーがお人形を何体も棒でつなげて並べて一緒に踊る、みたいなのあったじゃないですか。横に繋がっているキョンキョン、あんな感じ。
上村:(笑)
小泉:頭の中のイメージではああいう感じ。それが無限に繋がっていくの。そう思うと、いろいろなことが許せるし、今も頑張ろうっていう気になるじゃないですか。
大石:なりますね。
小泉:今、すごく辛いし面倒だけど、「今日頑張ったら未来の私が喜ぶだろうな」とか。未来に行った時に少し楽できるんじゃないかな、っていつも考えてます。「めんどくさい!」って思った時に「いやいや、65歳の私が感謝すると思う」って、そういう感じで。
大人が気軽につながる場
東京・赤坂「スナックひきだし」
お悩みから視点を広げて、こんな話題も紹介しました。
上村:コロナ禍の2020年にオープンしたこのお店、2つの大きな特徴があります。一つは、昼も営業をしていること。二つ目は、「ママやマスターが日替わり」ということです。昼スナック「ひきだし」オーナーママの木下紫乃さんにお話を伺いました。
普通にお仕事をしている方で「スナックのママやマスターに憧れる」っていう人は、結構たくさんいて。代わりばんこで月に1日とか、そういう人たちが今、30人くらいいますね。日替わり、週替わりみたいな感じでママさん、マスターさんがいるっていうお店になっています。
50代以上の世代の人たちって、会社以外の人たちとつながる機会ってなかなかないし、大人の友達って少ないので、そういう人たちがつながったらおもしろいよな、って始めた感じです。
みんな会社の役割を背負いすぎている感じがして、お店に来てもいきなり名刺交換とか始めちゃう人がいてね。当たり前ですけど、その会社のすごさがわからない人もいるんですよ。一旦、会社の自分じゃなくて、素の自分に戻る場所とか時間を持たないと、社会とつながるところまで行かないんじゃないかなと思います。
「ごちゃまぜの、自然のつながりができる場」は、スナックではある程度作れるかな、っていうのはお店にいて感じることかな。
小泉:ナイスアイデア!
上村:本当ですね。
小泉:私も、40代まではすごい、スナックにいたんです。あらゆるスナック。地方に行っても、その辺のスナックに行くくらい好きだったんです。それはやっぱり、異文化交流じゃないけど、自分と全然違う職業の人とお酒を飲みながら話ができて、それがつながっていく。
横につながりができていったっていうのもある。名刺交換しいちゃって「あ、違うんだ」ってなっちゃうの、すごくかわいい話ですよね。そういうのに気がつく瞬間ってすごくいいことじゃない?
大石:うん。
小泉:「スナック再生」もありますよね?
大石:オフィスにあるんですよ。今日もオープンして、みんなでワイワイやってますよ。
小泉:スナック再生も、そういう場所になってるでしょ?
大石:なってる。お客さんが来て、うちの社員が混じって、また違うお客さんが混じって…って新しいつながりになって。スナックって、ママを中心にみんな平等じゃないですか。
小泉:スナックとかバーって、すごく、仕事とか役割を脱いで楽しめるからね。すごくいいアイデアかもしれない。
上村:また、いろいろな方がお店に立つと、おもしろそうですよね。
小泉:私も、本当に心配なんですよね。大人の人たちが仕事以外の友達を作るっていうの、やりにくそうって思ってるから。ママ、すごいですね。きちんとした支えも社会に必要だけど、こんなふうにカジュアルに社会につながって、助けになっているって、かっこいいですね。
大石:コラボしましょうよ!「スナックサステバ」!
小泉:1日マスターやればいいのよ!
大石:僕ね?
小泉:私、お酒とか作れるよ。
上村:私も、手伝います!
大石:いつか実現するといいですね!
(TBSラジオ『サステバ』より抜粋)