定年後の継続雇用で給料が大幅にダウン。年金受給まで我慢して働くことは得策なのか
「人生100年時代は、まず女性にやってきます」──そう語るのは、女性向け求人誌「とらばーゆ」元編集長で、現在はライフシフト・ジャパンの取締役CMOを務める河野純子さんです。一般的に60歳は定年とされていますが、人生100年時代においては、それは人生の一つの転換点に過ぎません。その後の40年を「楽しく働き、自由に生きる」ことが重要だと河野さんは言います。『60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし』(KADOKAWA)は、60代以降、好きな分野で小さな仕事を立ち上げ、90歳まで続けるために必要な心構えや準備についてまとめられた一冊です。今回は、この本の中から、会社や家族のためではなく、自分の人生を生きるために知っておきたい情報やスキルを抜粋してご紹介します。
※本記事は河野 純子著の書籍「60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし」から一部抜粋・編集しました。
継続雇用で給料は50~75%に
皆さんの会社はいかがでしょうか。データが示す通り、60歳で定年を迎え、そのあとは継続雇用で65歳まで働けるという人が多いと思います。その場合、いったん退職金をもらって新たに「嘱託」(法的には定義はなく「契約社員」と同じ)として65歳までの雇用契約を結ぶのが一般的です。問題はその雇用契約の中身です。
リクルートジョブズリサーチセンターの調査では、定年後の継続雇用で仕事内容が全く変わらなかった人は54・4%。あまり変化がなかった人が28・9%。勤務時間は変化なしもしくは増えた人が44・9%です。一方で給与が変わらなかった人は18・8%のみ。81・2%の人の給与が下がっていて、もっとも多い回答は定年前の50〜75%未満(40・3%)になったという結果でした(「シニア層の就業実態・意識調査 2023 個人編60〜74歳」 数字は女性の回答)。
皆さんの中には50代半ばで役職定年を経験した人、これから経験する人もいるかと思います。年齢で一律的に役職からはずされる役職定年という制度も理不尽ですよね。役職定年によって約6割の人の働くモチベーションがダウンしているという調査結果もあります(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)。給与も管理職手当がなくなるなどして役職定年前の50〜75%にダウンする人が多くなっていますが、ただこれは役割が変わった結果なのでまだ理解できるように思います。けれども定年後の継続雇用で、仕事内容や勤務時間が変わらないのに、給与が大幅に下がるというのは納得がいかないという人は多いはずです。
にもかかわらず、60歳で定年を迎えた人のうち87・4%が継続雇用を選んでいます(厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告」2023年)。その理由は、「職場や勤務地などを変えたくなかった」(52・8%)、「今まで培ったスキルやノウハウをそのまま生かせるから」(51・1%)、「会社から継続を頼まれた」(33・9%)、「転職していちから新しい人間関係を構築したくない」(24・4%)、「転職活動が面倒」(21・7%)、「転職して新しい仕事を覚える自信がない、覚えるのがいや」(19・4%)、「転職しても待遇が下がるのは一緒だから」(16・7%)、「転職しても自分の希望に合う仕事がなさそう」(16・1%)と続きます(前述「シニア層の就業実態・意識調査 2023 個人編60~74歳」 数字は女性の回答)。
こうしてみてみると、転職市場は厳しそうだし、新しいことを学んだり、人間関係を築いたりするのも面倒、だったらいまの職場で65歳まで我慢して働くのが得策、いわば継続雇用の5年間は「年金が支給されるまでの待ち時間」という意識が強いように感じます。