サッカー東アジアE-1選手権優勝を支えた“清水エスパルス代表”宇野禅斗が韓国の地でつかんだ代表基準
【サッカージャーナリスト・河治良幸】
森保一監督が率いる日本代表はE-1選手権の3試合目で、地元の韓国に勝利。3戦全勝で2022年に続く連覇を達成した。
清水エスパルスからA代表に初招集されたMF宇野禅斗は2試合目の中国戦でスタメン起用されてA代表デビュー。フル出場で2−0の勝利を支えた。そこから中2日の韓国戦はベンチスタートだったが、ジャーメイン良(サンフレッチェ広島)の大会5点目となるゴールでリードして迎えた後半32分に、DF植田直通と同時に投入されると、しっかりと役割を果たして1-0の勝利に貢献した。
宇野は「前の試合が評価されたかどうかは全然わからないですけど、あの時間帯で出る選手の役割はだいたい決まってますし、最終的に結果として無失点で終われたので良かった」と語った。
宇野の第一の役割は相手がロングボールを蹴ってきた後のセカンドボールを拾うことだった。韓国のホン・ミョンボ監督は大型FWイ・ホジェに加えて、宇野が昨年夏まで所属していた町田時代の同僚でもある元清水のFWオ・セフンを投入し、パワープレーのような戦い方にシフトした。すると森保監督もすぐに動き、左ウイングバックで躍動していたゲームキャプテンの相馬勇紀(FC町田ゼルビア)を下げて、DF植田直通(鹿島アントラーズ)を左センターバックに。代わりに古賀太陽(柏レイソル)が同ポジションから左ウイングバックに回った。
平均身長187cmという日本代表の過去に例を見ない五枚の壁が並ぶ前で、宇野は経験豊富なMF稲垣祥(名古屋グランパス)とともに徹底してセカンドボールを拾い、韓国の2次攻撃を許さないために奮闘した。「もちろんセカンドボールを拾うってところは第一の仕事としてやらないといけない部分でしたけど」と前置きしながら、宇野は森保監督から託されたもう一つの役割を明かした。
「相手のちょっと下に落ちる選手にも、ちょっかい出してほしいって言われていたので。そっちにもちょっかい出しながら、セカンドを拾うことは意識しました」
韓国はイ・ホジェとシャドー気味にポジションを取るオ・セフンがターゲットマンになると同時に、高速ドリブラーのムン・ソンミンが左シャドーのポジションからドリブルを仕掛ける傍らで、途中出場のカン・サンユンがいやらしいポジションを取って、中盤で起点の仕事を担っていた。
そうした選手に対して宇野がプレスをかけ、稲垣が後めでカバーする関係を構築しながら、ロングボールが来れば稲垣と並んでセカンドボール拾いに奔走した。
終盤になると韓国は明確な2トップに。2列目にはスピードのある二人のセカンドアタッカーを並べる形で攻勢を強めてきたが、宇野は粘り強く中盤でプレッシャーをかける役割とロングボールのこぼれ球を回収する役割をやり抜いた。
宇野は「(オ・セフンは)さすがですね。でも僕たちのセンターバックもしっかりと競ってくれてましたし、だからこそセカンドを拾うことができた」と振り返る。
「こういうレベルというか、緊張感のある試合のピッチに立てたことをしっかり、これからに生かさないといけないと思いますし、生かしたい。僕はこれからの選手だと、自分でも思っているので。この代表での活動期間を自分の中で受け止めて、これからに生かしながら成長に繋げていければ」
清水サポーターにも感謝
清水から唯一、E-1選手権のメンバーに選ばれた宇野は”清水代表”としての思いもある。「清水の選手もできるんだぞと。代表にどんどん入っていくような選手が、清水にはいるんだぞということを示す役割も僕にはあったと思います」と宇野は言う。
21歳と清水の中でも若手の部類に入る宇野は、名古屋との対戦時から「自分の理想に近い」と言っていた稲垣ともA代表で一緒のピッチに立った。代表基準を清水に持ち帰ることで、自分自身の成長はもちろん、チームに刺激を与える存在になる意識が強まっている。
韓国の地まで駆けつけ、スタンドに横断幕を掲げてくれた清水のサポーターに対して、宇野は「ありがたいっすね。韓国まで、ああやって(横断幕を)持ってきてくれるのも嬉しいですし、ユニフォームだったりタオルだったりを持ってきてくれるファンサポーターもいたので。本当に力になりました」と感謝する。
もちろん日本から応援してくれた人たちに向けても「本当に温かいチーム、温かいファンサポーターで。だからこそ、そういう期待に応えていける選手になっていきたい」と気持ちを明かしてくれた。
熾烈な競争に割って入っていくために
ここからは“国内組”という枠から外れて、フルメンバーのA代表を目指していくことになる。宇野が本職とするボランチにはキャプテンの遠藤航(リバプール)をはじめ、欧州の第一線で活躍するタレントが揃う。
その競争に割って入っていくためには「まずは意識レベルから、向上させていく」こと。それが自分より若い選手も含めた清水の仲間たちにも伝わり、刺激し合うことで、日本代表という高みにつながるはずだ。
ただし、宇野には意識の向上の他にもやるべきことがある。清水を目の前の試合で勝利に導くことだ。「今チームとしては勝ててない状況が続いているので、まずは勝利のためにということを考えながらやっていきたい」。そう明るい表情で言葉を結んだ21歳は選手たちが待つ代表のチームバスに向かって行った。