相模川河川敷で巨大な凧が空を舞う!「相模の大凧まつり」が5月4・5日に開催
神奈川県相模原市南区の相模川新磯地区河川敷では、「相模の大凧まつり」が2025年5月4日(日・祝)・5日(月・祝)に行われる。江戸時代から約200年もの間、この地に受け継がれてきた大凧作り。その歴史や地域の人々の活動について、相模の大凧文化保存会の会長・八木亨さんに聞いてみた。
江戸時代から始まった相模の凧揚げ
相模原市の凧の歴史は江戸時代、天保年間(1830年ごろ)までさかのぼる。江戸で流行っていた凧揚げの文化を取り入れ、相模原でも5月に初節句の祝い凧として揚げるようになった。「江戸時代には『5月の河原にみんなで集まって凧を揚げるのはいかがなものか』といったお触書きが出たという記録も残っています」と教えてくれたのは相模の大凧文化保存会の会長・八木亨さん。
現代のように凧が大型化したのは明治時代に入ってから。界隈は絹の産業が盛んだったので、初節句の祝いだけでなく地域の五穀豊穣の願いも込めて地区ごとに大きな凧を揚げるようになった。戦時中は一時中断したが、1947年に新戸地区の西山一郎さんが凧揚げを復活させ、今もその思いを受け継いでいるという。
凧に書かれる題字にも注目!
まつり当日は新戸・勝坂・下磯部・上磯部の4つの地区がそれぞれ制作した大凧が揚げられる。一番大きい凧は14.5m四方、重さ950㎏もの八間凧で、毎年揚げられる凧としては日本一の大きさを誇る。また、凧に書かれる題字にも注目してほしい。“太陽”を表す赤と“大地”を表す緑でその時の世相を反映する2文字が書き込まれる。過去には、元号が変わった2019年の「令和」、東京オリンピックが開催された2020年の「輪風(りんぷう)」などがある。
「5月は南風が安定していて大凧を揚げるのに適していることから、題字に『〇風』と付けることも多いですが、2025年は『喜翔(きしょう)』。メジャーリーガーの大谷翔平さんの活躍で世界中の人々が喜んでいるので、今年はもっと羽ばたいてもらいたいという願いを込めて一般公募の中から決定しました」(八木さん)
約半年かけて作られた大凧が空に浮かぶ!
4つの地区で約400人が活動するという相模の大凧文化保存会。イベント当日に向けて一から大凧作りが行われるが、開始はなんと秋ごろ。毎年10月ごろに竹の切り出しから始まり、乾燥させた後に竹を割る作業が行われる。冬には手すきの和紙を張り合わせて、春に題字を書き入れ、凧全体を引っ張る43本の糸目を骨組みにつけて完成となる。「和紙には東秩父村の細川紙を使用する、糸目は43本付けるなど、ずっと昔から受け継がれた作り方を守り抜いています。一年の半分以上は凧作りに情熱を燃やしています」と八木さん。
相模の凧は正方形をしているのが特徴で、長方形に比べて安定感が出ないのだそう。巨大な凧を一旦立てて、いい風が来るのをじっと待つ。風を読んで、ここだというタイミングで100人の引き手によって揚げられる。「手塩にかけて作った大凧が揚がったときは何ともいえない感動や達成感があります。子供の成長や地域の発展を願って凧揚げをすることで地域がひとつにまとまっていると感じます」(八木さん)。先人たちの思いや凧作りを受け継ぎ、これから先もその伝統を継承していく使命があるという。
最後に大凧まつりの楽しみ方を聞いてみると、河原でレジャーシートなどを敷いてピクニックをしながら気長に凧が揚がるのを待つのも一興とのアドバイス。「凧は風任せ。揚がりそうで揚がらないヤキモキする展開も多いが、そんな凧とのやり取りが醍醐味。逆に揚がっていたいと思っているときは、凧を下ろそうとしても横にイヤイヤと首を振るような動きでなかなか下りてこないんです」と八木さんは笑う。地域の人々の思いものせて5月の澄んだ青空に揚がる大凧をぜひ現地で見学しよう。
開催概要
「相模の大凧まつり」
開催期間:2025年5月4日(日・祝)・5日(月・祝)
開催時間:10:00~16:00
会場:相模川新磯地区河川敷4会場(神奈川県相模原市南区)
アクセス:JR相模線相武台下駅から徒歩13分
【問い合わせ先】
相模原市コールセンター☎042-770-7777
URL:http://www.sagami-oodako.com/
取材・文=香取麻衣子 ※画像は主催者提供
香取麻衣子
ライター
1980年生まれ。『散歩の達人』編集部でのアルバイト経験を経て、2010年からライターとしての活動を開始。あだ名はかとりーぬ。『散歩の達人』では祭り&イベントのページを長らく担当。青春18きっぷ旅や山歩きなどのんびりと気ままにお出かけするのが好き。あとビールや美術館めぐりも大好物。