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Xで話題になった「芋掘りするトー横キッズ」 意外な組み合わせの裏側を探る

おたくま経済新聞

Xで話題になった「芋掘りするトー横キッズ」 意外な組み合わせの裏側を探る

 のどかなサツマイモ畑と、私服姿の若者たち。一見すると何の変哲もない、農作業体験の様子をとらえた動画が、先日、Xで話題になっていました。

 動画の投稿者が添えたコメントには「芋掘りするトー横キッズ」という文字があります。「芋掘り」と「トー横キッズ」。意外な組み合わせが気になった記者は、参加者と主催者の両方に話しをうかがいました。

【個性的な若者たちの「芋掘り」】

■ “トー横”コミュニティに所属する投稿者に、「芋掘り体験」の感想を聞いてみた

 「トー横キッズ」とは、「トー横」あるいは「トー横界隈」とも呼ばれる、若者たちのコミュニティのこと。明確な定義はないものの、メディアなどでは「新宿の歌舞伎町にある新宿東宝ビルの横(=トー横)に集まる若者たち」を指すのが一般的。

 Xに芋掘りの動画を投稿した「急アルゆーたぐ」さん(以下、ゆーたぐさん)も、「トー横」のコミュニティに所属している1人。ここ1年ほど通っているそうです。

 動画内ではざっと7~8人の若者が、畑の土をいじっています。画面奥には収穫済みと思われるサツマイモがゴロゴロ。ザ・芋掘りといった光景ですが、集まった若者たちの髪色、服装、髪型には個性が溢れていて、新鮮な雰囲気を感じさせます。

 芋掘り体験に参加したきっかけについてゆーたぐさんにうかがうと「界隈の友達から誘いを受けて参加しました!」とのこと。

 芋掘りは幼稚園のときに体験した覚えがあるというゆーたぐさん。久しぶりの芋掘りは、最初こそ乗り気ではなかったものの、終わってみれば「友達とやると意外と楽しかった」そうです。

 ゆーたぐさんに「芋掘り体験の前後で、なにか変化と呼べるものはありましたか?」と聞いてみると「少し知見が広がったなと感じました」と教えてくれました。

 サツマイモ畑には歌舞伎町とはまた違う刺激があったことでしょう。日ごろ、東京の雑多さに息苦しさを感じている記者としても、非常に羨ましい体験だなと感じます。

■ なぜ「芋掘り」だったのか?主催者に聞いた企画の裏側

 そもそもこの芋掘り体験は誰が、何のために開催したものなのでしょうか?

 ゆーたぐさんに尋ねたところ、一般財団法人「ゆめいく~You make~」(以下、ゆめいく)の代表者である・天野将典さんが、今回の主催者であることがわかったので、取材を申し込んでみました。

 天野さんが代表を務めるゆめいくは【シェルター事業】【教育事業】【イベント事業】など7つの事業を通じて、家庭や社会で孤立しがちな若者、教育や成長の機会に恵まれない子どもたちが、自身の力で豊かな人生を築くことができるよう支援しています。今回の芋掘り体験もゆめいくの事業の一環として実施されたものでした。

 「『芋掘り』は、子どもたちが農業に親しむ最初のステップとして最適なアクティビティと考えられました」と天野さん。

 サツマイモの収穫作業は体験内容がシンプルで、幅広い年齢層の子どもが楽しむことができるそう。また五感を使った学びにも期待できるとのことです。さらに天野さんは「達成感」という点にも注目しています。

 天野さんによれば芋掘りは「掘り出した芋という『目に見える成果』が得られることで、子どもたちに達成感と満足感を与えられるのも大きな特徴です」とのこと。

 さらに「達成感を味わうことで、努力と成果の関係を学び、自己肯定感を高める効果も期待されています」とも話しています。

 「多様な選択肢を提供する社会づくり」をビジョンに掲げて活動しているゆめいく。「芋掘り」を企画した狙いについて、天野さんは都市部の子どもたちが持つある特徴についても指摘します。

 「都市部で生活する子どもたちは、自然との触れ合いや土に触れる機会が限られています。そこで、こうした活動を通じて自然の大切さや食への関心を高めることを目的としています」(天野さん)

 また1人で達成感や喜びを感じるだけではなく、天野さんは参加者同士の「協力」も重視。複数人を集めることで「仲間と一緒に何かを成し遂げる喜びや、協力の大切さを共有する場となることを目指しました」と話しています。

■ 子どもたちの選択肢を増やし、日本の未来につなげたい!「芋掘り」イベントの長期的な視点

 さらに今回の活動には「子どもたちと第一産業をつなげる」という長期的な視点も存在します。

 昨今、農業など日本の第一次産業は人手不足・後継者不足が叫ばれています。人手不足の背景には「第一次産業の従事者になりたい」という人が減った、という理由ももちろんあるでしょうが、そもそも人生に「第一次産業の従事者の選択肢がない」という人も少なくないのではと思います。

 都市部で生活する子どもたちはその最たる例かもしれません。彼らにはこれまで選択肢として「第一次産業の従事者」が存在しなかっただけで、選択肢に触れることで「なりたい」と思うようになる可能性は大いにありえます。

 「なりたくない人」を無理に従事させるより、「選択肢のない人」に体験してもらい、選択肢として将来の候補に入れてもらう。後者の方がより、前向きな方法だと言えそうです。

 子どもたちの選択肢を増やすことで、日本の未来が少しでもいい方向に変わっていって欲しい。今回の「芋掘り体験」にはそんな狙いもあります。

 自然と触れ合うこと、達成感を得ること、仲間と協力すること、新しい選択肢を増やすこと。こうした経験を通じて「子どもたちに自分自身の可能性を信じ、未来への希望を抱いてほしいという願いを込めています」と天野さんは話します。

 今後も「ゆめいく」は芋掘り体験をはじめとする自然体験型のイベントを継続的に実施していく予定。活動の企画を季節ごとにすることで、四季の変化も含めた自然体験ができる場を提供したいと考えているとのことです。

<記事化協力>
「急アルゆーたぐ」さん(X:@___tag__616 Instagram:@tag._._616)

一般財団法人「ゆめいく~You make~」代表・天野将典さん(@Masanori_Amano)

(文:ヨシクラミク)

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By YoshikuraMiku | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2024121404.html

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