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【高梁市】【12/15(日)まで開催】高梁市成羽美術館開館30年記念特別展「日本洋画130年 珠玉の名品と児島虎次郎」~ 絵画好きにこそ来てほしい!日本洋画の名品がそろう展覧会

倉敷とことこ

【12/15(日)まで開催】高梁市成羽美術館開館30年記念特別展「日本洋画130年 珠玉の名品と児島虎次郎」~ 絵画好きにこそ来てほしい!日本洋画の名品がそろう展覧会

高梁市にある高梁市成羽美術館(以下、「成羽美術館」と記載)は、当時の成羽町の人々が地元の偉人「児島虎次郎(こじま とらじろう)を顕彰したい」と設置した岡山県初の町立美術館です。

成羽美術館では現在、近代洋画史に名を遺す40点の作品とともに児島虎次郎の代表作がずらりと並んだ特別展「日本洋画130年 珠玉の名品と児島虎次郎」が開催されています。

開館30周年の節目である特別展の会場を、館長の澤原一志(さわはら かずし)さんとともに鑑賞してきました。

高梁市成羽美術館開館30年記念特別展は一部エリアを除き、撮影禁止です。本記事では、撮影可能エリアの写真のみを掲載しています。

高梁市成羽美術館 とは

成羽美術館は、高梁市成羽町下原にある美術館です。成羽町の町政50周年を記念して、成羽町出身の画家児島虎次郎の作品を購入したことがきっかけで、1953年に岡山県初の町立美術館として始まった美術館。

現在の成羽美術館は三代目の建物で、1994年に安藤忠雄(あんどう ただお)さんが設計しました。安藤建築の代名詞ともいえるコンクリート壁と周囲の自然とが調和した建物の美しい景観を楽しめる施設です。

成羽美術館の原点ともいえる児島虎次郎の遺作をはじめ、彼が外遊中に収集した古美術のほか、成羽地域で産出した約2億年前の植物化石を収蔵しており、植物化石は常設展示もあります。

植物化石の常設展示

児島虎次郎とは

児島虎次郎は、現高梁市成羽町に生まれた画家です。東京勧業博覧会美術展に出品した「なさけの庭」が一等賞を受賞して宮内省買い上げとなった後、倉敷美観地区にある大原美術館の創始者である大原孫三郎(おおはら まごさぶろう)の支援を受けてヨーロッパに留学しました。

その後も大原美術館の基礎となる絵画・陶器類の収集を手掛けた児島虎次郎。収集の傍ら自作の制作も続け、700点近い作品を残しました。

「日本洋画130年 珠玉の名品と児島虎次郎」とは

「日本洋画130年 珠玉の名品と児島虎次郎」は、笠間日動美術館所蔵の明治草創期から平成に至る作家作品40点のほか、成羽美術館所蔵の児島虎次郎の代表作が一堂に会する日本の洋画史130年を振り返る特別展です。

成羽美術館の入り口は二階にあり、二階には茨城県笠間市にある笠間日動美術館所蔵の明治草創期から平成に至る作家作品40点が展示されており、一階に児島虎次郎の代表作や児島虎次郎とゆかりのある作家の作品が展示されています。

展示室二階のようす

成羽美術館の入り口は、長いアプローチを抜けた二階に位置します。

入り口までのアプローチ

安藤建築らしい長いアプローチに、展示へのワクワク感が高まりますね。

今回展示される近代洋画史に名を遺す名品は、茨城県笠間市にある笠間日動美術館所蔵の作品たち。笠間日動美術館を創立した長谷川仁・林子(はせがわ ひとし・りんこ)夫妻の、作品収集における思い出エピソードとともに38点の油絵作品と2点の彫刻作品が展示されています。

二階展示室のようす

高橋由一(たかはし ゆいち)の《鮭図》や岸田劉生(きしだ りゅうせい)の《村娘之図》など、名だたる作家の作品が並ぶ展示室。

高橋由一《鮭図》《丁髷姿の自画像》

美術や歴史の教科書に名を重ねるような作家の作品の数々に、圧倒されます。

澤原館長お勧めの作品のひとつは、五姓義松(ごせだ よしまつ)の《人形の着物》。着目すべき点は、作品が描かれたのが1883年だということです。この年は、児島が生まれてまだ2年の頃。明治時代にパリへ行き、ここまでの西洋画を描き上げた人がいるとわかるこの絵は貴重な資料なのだそう。

五姓義松(ごせだ よしまつ)の《人形の着物》

それらの作品とともに児島虎次郎の作品も展示されています。

児島虎次郎ヨーロッパ留学前の作品《登校》
児島虎次郎ヨーロッパ留学後の作品《秋》

澤原館長によると、これらの児島の作品はヨーロッパ留学に行く前後の作品なのだとか。留学前はなめらかで透き通った色味のタッチでしたが、ヨーロッパ留学後は彩色がより豊かになりタッチも点描などの技法が使用されていることがわかります。

その他にも、児島虎次郎が東京美術学校で師事した藤島武治(ふじしま たけじ)や黒田清輝(くろだ せいき)の作品も並んでいました。

左:藤島武治《ヴェニス風景》、右:黒田清輝《黒田清兼像》

二階には、いずれも教科書やTVで見かけるような有名作家の名品がそろっています。これほどの名品が高梁で一堂に見られるのは大変貴重なことなんだとか。

これらは笠間日動美術館からの借用品であるため、会期を逃せば、ほぼ見ることはできませんよ。

二階の展示室は最初の部屋を除き、写真撮影不可。

展示室一階のようす

展示室一階には、成羽美術館所蔵の児島虎次郎コレクションが並びます。

展示室一階のようす

まず目に入ったのは、児島が16歳の頃に模写したといわれる《井上こう肖像》。こちらは、模写の原本である井上啓次(いのうえ けいじ)の作品も並べてあり、東京美術学校入学前から児島の模写力の高さが伺えます。

《井上こう肖像》

《コーヒーを飲む夫人》の作品は、下絵と完成した絵の両方が展示されていました。通常は完成した作品のみを鑑賞することが多いので、下絵と完成した絵を見比べられるのは新鮮な体験です。

《コーヒーを飲む夫人》(左が下絵、右が完成した絵)

歌舞伎の演目や着物の帯を題材とした作品も、児島が生涯「日本人としての油絵(西洋画)を描きたい」と模索していたことが伺える貴重な資料です。

児島虎次郎が日本文化を題材とした作品

展示の最後には「児島虎次郎を囲む画家」として、児島と親交があった画家や郷土出身の画家の作品が展示されています 。

一階の展示は全作品撮影可能

ミュージアムショップのようす

展示室を抜けると、出口の手前にミュージアムショップおよび喫茶があります。

ミュージアムショップでは、特別展に関連するポストカードやクリアファイルが豊富に取りそろえられていました。お気に入りの作品を選びながら鑑賞し、ミュージアムショップでポストカードをはじめとしたお気に入り作品のグッズを購入するのも楽しそうですね。

また、特別展や児島虎次郎に関連する書籍も豊富に取りそろえられているので、特別展を鑑賞してさらに詳しく知りたい人にもおすすめです。

ミュージアムショップおよび喫茶は観覧チケットを購入しなくても利用できます。
成羽美術館のオリジナルグッズも並んでいるので、こちらもぜひチェックしてみてください。

高梁市成羽美術館の館長への特別展の見どころインタビュー

館長の澤原一志さんに、「日本洋画130年 珠玉の名品と児島虎次郎」の見どころを聞きました。

澤原一志館長

──児島虎次郎は日本の西洋画史においてどのような存在ですか。

澤原──

日本における西洋画は、明治維新をきっかけに始まりました。児島虎次郎さんは、明治時代にヨーロッパへ留学に行った貴重な画家のひとりです。

令和の現在、世界に文化の中心といえばアメリカのニューヨークをイメージされるでしょう。でも、この頃の文化の中心はフランスのパリ。西洋画を学ぶ画家はみな、パリへ留学しました。

しかし、児島虎次郎さんはパリが合わなかったようで、ベルギーのゲントという地域に留学したんです。日本からヨーロッパへ留学するだけでも珍しかった時代に、パリ以外のヨーロッパで西洋画を学んだ彼の功績は大きいと思っています。

また、彼は大原美術館の大原孫三郎さんの支援により、作品の買い付けにも力を入れていました。彼の買い付けた作品の多くが、今も大原美術館に展示されていますね。

──児島が買い付けた西洋画を見て、制作に励んだ画家も多くいたのではないでしょうか。

澤原──

児島虎次郎さんが西洋画を収集した目的のひとつに、その時代本物の西洋画を見る機会のない日本の学生に本物の西洋画を紹介したいという気持ちがあったんです。だから、児島虎次郎さんが収集してきた絵が、日本の西洋美術に与えた影響って大きいと思いますよ。

彼が収集してきた作品を契機に画家になったとか、美術の道に入ったとか……。

だから、今回の特別展で二階の展示室に飾られている40点のなかにも、児島虎次郎さんが持ってきた絵を見て感化された人もいると思うんです。

彼の収集作品では西洋画が有名ですが、実はエジプト美術の収集もしているんですよ。ちょうど彼が生きた時代はツタンカーメンが発見された頃で、日本からエジプト入りしたのは京都大学の考古学者と児島虎次郎さんだけだそうで。それ以外には、中国や朝鮮にも行っています。

それらはどれも「日本人としての油絵、つまり日本人としての西洋画」を追求していたから。日本のルーツ人類のルーツに原点回帰していく児島虎次郎さんの姿勢を尊敬しています。

──二階の展示室ではどのような作品が鑑賞できますか。

澤原──

二階には、明治維新から平成までの130年間をよく表す珠玉の名品がそろっています。このような作品が一堂に会して、じっくりと眺められるのはぜいたくではないでしょうか。

そういった意味で、絵画鑑賞が好きなかたにとっては作品集などで目にしたことのある作品をナマで見られる機会となりますし、あまり絵画鑑賞をされないかたにとってもさまざまな作品を観ていろいろなことを感じ取ってもらえるような幅広い作品がそろっていますよ。

──澤原さんお勧めの鑑賞方法を教えてください。

澤原──

私はいつも展示室に入ったら「自室に持って帰りたい作品を一つ選ぼう」と思って、作品を眺めます。すると「この作品が好きだけれども、大きすぎて持って帰れないな」「この作品も好きだけれども、この場所に置きたいからこちらにしよう」などと、思いを巡らせてしまいます。

絵画や作家の知識の有無にかかわらず楽しめる鑑賞方法なので、ぜひやってみてください。

──最後に、読者へメッセージをお願いします。

澤原──

成羽美術館は、周りが自然豊かで美術館への道中の旅も楽しめる美術館です。

ぜひ成羽美術館へ来ていただいて「あぁ、来て良かったな」「私はこの絵を一点持って帰りたいな」というような絵を一点見つけて帰ってください。

みなさまのお越しを楽しみにしています。

おわりに

昼休みに成羽美術館周辺を散歩しているとあちこちで今回の特別展のポスターを目にし、成羽町の人たちにとって馴染みのある施設で開催される今回の特別展を、地域のみんなで盛り上げようとする雰囲気が伝わってきました。

紅葉しはじめた山々が大変美しく、空気の澄んだなか安藤建築ならではのコンクリートと水が織りなす建物を目いっぱい味わえます。そして、重要文化財に指定されるような作家の作品や成羽の人々が顕彰し続ける児島虎次郎作品の数々を穏やかな気持ちで鑑賞できる時間となりました。

文化の秋、芸術の秋に、高梁市成羽美術館開館30年記念特別展「日本洋画130年 珠玉の名品と児島虎次郎」はいかがでしょうか。

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