意地悪なクラスメイトがいる?自閉症中2娘、人間関係の揉め事にドキッ!面談で先生に確認すると…
監修:新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
ASD(自閉スペクトラム症)娘、学校では基本的に1人行動で……
広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の娘は、現在中学2年生。マイペースで、静かに過ごすことが好きなので、1人でいることを好みます。
学校では、基本的に1人行動で……
中学生女子ともなれば、友達同士グループで過ごす子が多くなります。自分の時代を思い出してみても、もし自分がグループに入っていなかったら……、想像するだけで登校したくなくなるぐらいの大問題でした。
娘のクラスも、女子はすっかりグループができていて、常に同じメンバーで行動しているそうなのですが、娘は望んで1人になり、そしてすごく楽しんでいました。これが娘のスタイルなのだと分かっていても、どうしても心配な私。
やはり娘はまったく寂しくなく、1人を満喫していました。
娘の1人行動は、クラスの子から見たら当たり前のようで、話すときは話すけど、それ以外は距離をとってくれているようでした。優しい友だちに恵まれ、ありがたいことで、私も嬉しくなりました。
意地悪なクラスメイトがいる!?娘の話を聞くと……
クラスの子への感謝を言うとしたら、娘が何か言いたげな顔をしました。まさか意地悪してくる子がいる!?と聞いてみると……
私の中学時代の記憶、うちの長男の男子すぎる行動との一致、そして旦那への確認をしてみても、私にはその男子に悪意があるように思いませんでした。しかし、娘は本当に嫌なようで……
先生との面談で事実確認をしてみると
娘が、先生に相談を考えるほど、嫌なことであれば、私たちが頭ごなしに「仕方ないから我慢して」と言うわけにはいかない。
タイミングよく翌週に面談があったので、私はまず先生に事実確認をしてみることにしました。
先生は娘のことを気にかけてくれ、見えないところで助けてくれていました。
しかし、先生ができるのはここまででしょう。それ以上はできないということは、私は理解できました。しかし、娘は「言ってもらえないのか……」という感情が残ったようでした。帰ってから、私は娘と話をしました。
1人で静かな状況を好む娘にとって、それを邪魔する人、テンションが高い人、関わってくる人は苦手という認識になるでしょう。気持ちは分かります。
しかし、そのすべてから、私たちが守ってあげることはできません。大人になるにつれ、自分で気持ちをコントロールしていかなければなりません。今、私ができるのは、自分ならどうするかを話すことでした。
小学校に入学してから、男子とのもめごとが、多かった娘。そのときの年齢に合わせて、いろんな対応や話をしてきました。
そのうちに、娘も少しずつ成長していきました。
今まではそれでよかったのですが、中学生になると、これから先のことも踏まえて、社会での常識的なふるまいを教えつつ、話していく必要があります。しかし、親としては1人が好きなら、1人で楽しく過ごしてほしい、苦痛で仕方ないという我慢はしてほしくないという気持ちです。まだよく分からない子どもでいてほしいような……たくましい大人になってほしいような……複雑な心境です。
親として、常識は教えていかなければなりませんが、ずっと常識の範囲内で動かせていては、娘が疲れてしまいます。時には愚痴を言ったり、息抜きをしたり、ということを教えながら、娘が成長していけるようサポートしていきたいと思います。
執筆/SAKURA
(監修:新美先生より)
中2の娘さんの学校での人付き合いについて詳しく教えていただきありがとうございます。中学生時期は、同質性を好む同世代の付き合いの難易度がとても難しくなる時期とも言えます。
ASD(自閉症スペクトラム症/広汎性発達障害)の方の対人面のタイプとして分かりやすく整理すると次の3つのタイプがあります。
1.他人への興味が薄いタイプ
2.他人の気持ちや考えに疎く自分ペースで付き合うタイプ
3.他人とどうかかわったらいいのか分からず合わせすぎてしまうタイプ
この3タイプは固定的なものでなく、時期や場面で変化します。エピソードを聞かせていただくと、あーさんはとりあえず1のタイプのようです。他人に興味が薄いというと心配されることもありますが、実はマイペースを貫いて他者の言動にそれほど左右されないのである意味、心の健康度は下がりにくいという面もあります。中学生時期の特に女子同士の付き合いはとても複雑で面倒くさいもので、1タイプの方にとっては、かかわりを最小限にしておいたほうがむしろ楽かもしれません。周囲に大きな迷惑をかけておらず、必要時にはふつうに話せるようなクラスメイトもいるなら、過度な友だち付き合いを強要しなくてもいいのかと思います。
最低限の関わり方のポイントについては、記事で紹介していただいたように、具体的に整理して説明してもらうのはとてもいいですね。こういう時はこう言おうというセリフを作ってマニュアルにするなどのSST的なレクチャーも有効です。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。