サメの胎仔を<人工子宮>で育成? 装置は約1トン→40キロに小型化成功
一般財団法人沖縄美ら島財団は12月2日、サメの小型人工子宮装置の開発とその成果を国際学術誌で発表したことを報告しました。同財団は2017年より、胎生サメ類の早産胎仔の救命を目的とした「人工子宮装置」の開発を行っています。
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サメの約6割は「胎生」 人工子宮装置で深海サメを飼育
サメの約6割はメスがお腹の中で子を育ててから産む「胎生」で、数か月から数年の妊娠期間を経て出産することが知られています。
沖縄美ら島財団の研究チームは2017年、サメの胎仔を母体外で育成するため「人工子宮装置」の開発を開始。2020年には独自に開発した装置を用いて、深海性のサメ「ヒレタカフジクジラ」の胎仔を5カ月間飼育することに成功しました。
さらに、その翌年には世界初となる人工子宮装置で飼育したヒレタカフジクジラ胎仔の人為出産にも成功しています。
当初の人工子宮装置は総重量が約1トン 小型化に成功
2020年に開発された人工子宮装置はサメの血液を模した人工羊水に加え、良好な内部環境(水質や水温)を維持するための機器によって構成され、総重量は約1トンと非常に大型だったといいます。
非常に大型であるがゆえに水族館などの施設内での運用は限られており、大きな課題となっていました。
従来の装置の20分の1以下まで小型化
今回、開発された人工子宮装置では大幅な小型化に成功。その総重量は約40キロと従来の装置と比較して重量は20分の1になりました。
さらには、小型化により人力での移動や自動車への積載も可能になり、施設内だけではなく野外での使用も実現可能となったのです。
なお、小型化された人工子宮装置は沖縄美ら海水族館の「サメ博士の部屋」で展示中。実際に見ることができます。
小型化の鍵は<究極の単純化>?
今回、開発された装置で大幅に小型化された鍵は<究極の単純化>にあります。
「最小限の人工羊水で育成すること」「水濾過フィルターを省略すること」「水温維持に小型冷蔵庫を利用すること」などの単純化により、総重量を40キロまで減少させることに成功したといいます。
2023年12月~2024年2月に行われた検証では、ヒレタカフジクジラの胎仔を出生サイズまでに成長させることに成功。人為出産を迎え、装置の有用性を確認しました。
このサメの小型人工子宮装置の成果は「Portable-size artificial uterine system for viviparous shark embryos」国際学術誌「MethodsX」で発表。11月17日から同誌電子版で掲載されています。
絶滅危惧種保全への活用に期待
今回開発されたサメの人工子宮装置は早産胎仔の長時間運搬などを可能とし、将来的に絶滅危惧種の保全のために活用されることが期待されています。
人工子宮装置は今後、野生動物の保全に不可欠のものとなっていくかもしれませんね。
本発表の詳細は、一般財団法人沖縄美ら島財団の公式Webサイトで確認できます。
※2024年12月11日時点の情報です
(サカナト編集部)