【船橋市】海神駅をめぐる人々をつなぐ絵本『ふみきりくん』
2017年、商店会、自治会の人々が心を一つにして船橋市海神の荒地を公園によみがえらせました。
その2年後に生まれた1冊の絵本の存在が、さらに地域の絆を育んでいます。
働き者「ふみきりくん」に感謝し絵本に
『ふみきりくん』(福音館書店刊)は、絵本作家・えのもとえつこさんが西船第6号踏切をモデルに書いた絵本。
えのもとさんは『ふみきりくん』誕生の秘密についてこう語っています。
私が親近感を持ったのは、駅入り口にある踏切(海神第1号踏切)ではなく、ホーム反対側(西側)の脇にある西船第6号踏切なんです。ここは道も大して広くなく、小さな踏切なのですが、電車が通過するとすぐに遮断機が上がり、通行人が待たされることは、ほとんどありません。通過した電車がすぐ脇のホームに停まっていても、遮断機が上がり、通ることができます。一日中ひっきりなしに遮断機を上げたり下げたりしているこの踏切に、『なんて働き者なんだろう!』とまるで人間のように感じ、感謝していました。そんなわけで、子どもが楽しめる絵本を作りたいと考えた時、この踏切を主人公にする案がまず頭に浮かびました。
調べてみると1時間に最大で上り18本、下り11本、合計29本の電車が行き交っています(2024年10月21日調べ)。
1日約6千人が利用する海神駅は、各駅停車しか止まらない住宅街の小さな駅。
駅前整骨院のスタッフは「踏切を走る電車を横から見ている幼稚園児や小学生たちがたくさんいます」と語り、駅北側にある海神商店会の中野松江会長は「海神駅開業100周年の2019年10月に偶然、ちょうどこの絵本が出版されました。駅や海神商店会、自治会の人たちで集まって100周年記念イベントを実施した際に『ふみきりくん』の話題が瞬く間に広がり、商店会の書店に何冊も注文が入ったそうです」と教えてくれました。
地域に根付いた海神5丁目トリトン公園
働き者の『ふみきりくん』は子どもに大人気のベストセラーになっただけでなく、海神地域に多くの絆を誕生させました。
見慣れた踏切が「ふみきりくん」として生き生きと描かれたことで地元に心を寄せるきっかけとなり、商店会や自治会、地域の人々の間に会話と笑顔を一層増やしたのかもしれません。
それが「海神盆踊り大会」の共同主催につながります。
会場はみんなで生まれ変わらせた「海神5丁目トリトン(海神)公園」。
災害時には避難用広場に、秋には「地域まつり」の会場として地域に根付いています。
今夏も共同主催の第9回盆踊り大会がにぎやかに行われました。(取材・執筆/マット)