大分トリニータ 片野坂体制、通算8年目の挑戦 【大分県】
昨季、大分トリニータは苦しい戦いを強いられた。J1昇格に遠く及ばず、残留争いに巻き込まれ16位に終わった。巻き返しを図る今季は、大分市出身で元日本代表の清武弘嗣を含む9人の新戦力を加え、新たなシーズンに挑む。目標はJ1昇格プレーオフ圏内の6位。片野坂知宏監督の下、反撃ののろしが上がる。
チームが始動して1週間が経過した。片野坂監督は「今年は勝つための準備を徹底する」と力強く語った。その言葉には、昨季の反省と決意が込められている。特に、選手の自主性を尊重し過ぎた結果、具体的な指示の不足に陥ったことを振り返り、今年は戦術の徹底を図る方針を掲げた。また、昨季、低迷した大きな要因の一つは負傷者の続出だった。17人もの選手がシーズン中に故障。これを解消するべく、今年はメディカル部門を大幅に強化した。その中核を担うのが、大友仁ストレングスコーチだ。鹿島アントラーズから招へいされた大友氏は、リハビリから復帰までの過程を効率化し、再発を防ぐ役割を担う。「今年は負荷管理を徹底し、選手のコンディションを万全に保ちたい」(片野坂監督)と期待している。
新シーズンをスタートした大分トリニータ
攻撃面の課題も明確だ。昨季の得点数はリーグワースト2位。この壁を打破するため、いわきFCで10得点を挙げた有馬幸太郎が加入した。片野坂監督は「躍動感とスタミナがあり、得点感覚も鋭い万能型のストライカー」と高く評価している。有馬の加入により、ゴール前の迫力が増すことが期待されている。
中盤の層も厚みを増している。昨季、チャンスクリエイト総数でリーグ3位の記録を持つ野村直輝は、今季も冷静なプレーでチームをけん引するだろう。また、即戦力として期待される榊原彗悟や天笠泰輝が加わり、ボランチのポジション争いも活発化している。
注目すべき存在の一人は清武だ。片野坂監督は「持ち味のクオリティーで違いを生み出せる選手」と太鼓判を押す。フル出場にこだわらず、状況に応じた起用で清武の経験とアイデアを最大限生かす方針だ。清武のプレーは、若手選手に大きな刺激を与えるだろう。
片野坂監督が復帰し、2年目を迎えたトリニータは、昨年の悔しさを力に変え、挑戦を始めた。指揮官が目標に掲げるのは「勝ち点60、50得点以上、40失点以下」という具体的な数値。戦術の徹底、新戦力の融合、負傷者の減少など、課題に対する改善策が整いつつある。
「応援してくれる方々に喜んでもらえるフットボールを見せたい」。その言葉に嘘はない。戦力としては十分なポテンシャルを秘めている。上位との差を埋められるかは、その手腕にもかかっている。
「J1昇格を目指す」と語った片野坂知宏監督
(柚野真也)