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南区のアトリエで作家として再スタート。陶芸家の「うすだなおみ」さん。

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南区のアトリエで作家として再スタート。陶芸家の「うすだなおみ」さん。

「やきもの納屋」という屋号で活動する陶芸家の「うすだなおみ」さん。名刺に書かれている「田園風景広がる土地の古くて大きな納屋の一角が私のアトリエ」という言葉の通り、うすださんは豊かな緑に囲まれた静かな場所で創作活動を続けています。美術大学を卒業されてから作家になるまでの道のりなど、いろいろとお話を聞いてきました。

やきもの納屋

うすだ なおみNaomi Usuda

1976年新潟市生まれ。京都精華大学美術学部で陶芸を学び、卒業後は京都の陶芸教室でアルバイトを経験。28歳のときに新潟に戻り、創作活動を続けながらベーカリーショップなどで働く。結婚、出産、子育ての間は陶芸から離れ、美術の非常勤講師も経験。2019年に南区にアトリエ「やきもの納屋」を構え、陶芸家として本格的にスタートを切る。

どうしたら作家になれる? 創作活動を続けながら模索した日々。

——うすださんは、大学で陶芸を専攻されたんですね。

うすださん:幼少の頃からものを作ることが好きで、「美術に関係する分野に進みたい」と思っていたんですね。中学生のときに出会った美術の先生が、プライベートでは画家として活躍していらして。そのとき「作家っていうジャンルがあるんだ」と驚いたことも影響しているかもしれません。

——なぜ陶芸に興味を持たれたんですか?

うすださん:絵を描けば周りの大人たちから褒められる、ジュニア展に出展したら賞をいただくって体験をしてきたんです。作家活動をしている先生と出会って、「自分もこんな活動をしたい」と美術大学への進学を目指すんですけど、クラスメイトには美大専門の予備校に通っている友達もいて。そういう子と比べると「自分のセンスではやっていけないかもな」なんて気持ちが生まれてきたんですよね。そんなときに陶芸が気になるようになりました。インテリアショップでは、家具よりもそこに置かれているコップや壺に目がいくし「私、焼き物が好きなんだ」と思ったんです。焼き物には染付という技法もあるし、作品に絵を描くこともできます。いろいろなアプローチができるところにも魅力を感じました。

——大学を卒業されてからはどうされたんでしょう?

うすださん:当時は就職氷河期と言われる時代でしたし、大学卒業後は京都で陶芸教室で数年間アルバイトをしました。新潟に戻ってきたのは、28歳だったかな。陶芸窯も新潟に持ってきていたのに、どうしたら作家になれるのかわからなくて。アルバイトをしながら、創作活動をしていました。

——作ることはずっと続けていたんですか?

うすださん:一時期パン作りに夢中になって、本気でベーカリーショップを開こうとしたときもありましたね。焼き物って、結果が出るまですごく時間がかかるんですよ。パンだったらすぐに答え合わせができると思ったんです(笑)。結局そこまでのめり込めなかったんでしょうね。ベーカリーショップに数年間お世話になって退職し、結婚、出産、育児の期間もしばらく陶芸から離れていました。育児がひと段落してからは、美術の非常勤講師をしていました。

——でもやっぱり作家として歩む道を選ばれたんですね。

うすださん:生活スタイルに変化があって、非常勤講師の仕事を少しずつ減らして、作家業にシフトしてきた感じです。2019年にアトリエを使いやすくしようと手を加え、やっと製作に集中できるようになりました。屋号を「やきもの納屋」としたのも、その頃です。

作り出したものが、自分の代わりに人の生活の役に立つ。

――アトリエを整えて、何か変化はありましたか?

うすださん:大学を卒業して新潟に戻ってきた頃は、器がメインではなく、器とオブジェの中間のようなものを作っていたんですね。でもちゃんとしたアトリエを設けて「やきもの納屋」と名前をつけてからは、「お客さまに求めていただけるものを提供しよう」と変わったと思います。趣味ではなくて、経済活動としてきちんと成り立つっていうか、「これで食べていくんだ」「生活していくんだ」って意識を持つようにしています。

――どういう視点でものづくりをされているんでしょう?

うすださん:自分が見たいものを作る、出現させたいものを作り出すってことを軸に製作していると思います。きっと「お料理を入れる想定で」とかっていうふうに考えて製作されている方も大勢いらっしゃると思うんです。でも私はもうちょっとエゴが強くて。「自分で自分を楽しませる」じゃないですけど、自分が楽しめないものをよそ様が楽しんでくれるとは思わないんですね。こういうものがあったら自分はどう感じるだろうか。それを知りたいって気持ちなのかもしれません。もちろんできあがりを見て「えぇ~。こんなはずじゃない」って思うときはあります(笑)

――完成するまでどうなるかわからないところが陶芸にはあるみたいですもんね。

うすださん:ほんとうに、そういうものなんですよね、焼き物って。もちろん焼き上がりをある程度想定して作っていきますけど、ずっと自分の手元でコントロールできる絵画みたいなものじゃないと思っています。自分の手から一旦離して、委ねるみたいなところがありますよね。すべて自分で決めなくても、というか決められないんでしょうけど、手放して(窯へ入れて)また戻ってきたとき(焼き上がったときに)どうなっているか想像できない。そこも陶芸の好きなところです。

――ただ「自分が見たいものを作る」となると、さきほどお話してくださった「経済活動」とイコールにならないような気がします。

うすださん:そうですよね(笑)。やっぱり「商品」として作っているわけなので、例えばマルシェや展示会でお客さまの目に触れたときの反応はすごく大切にしています。私がその人の生活に入り込むことができないですけど、私が作り出したものは何かしらのかたちでその人の生活のお役に立つ。それはすごくありがたいことだなと思っています。

作家として生活し、社会と関わる。

――今後叶えたいことって何かありますか?

うすださん:県内だけでなく県外で個展を開いて、ちゃんと作家として食べていけるようになりたいですね。コロナ禍だったこともあり、今までそこまでできませんでしたので。

――県外での活躍も期待していますね。

うすださん:ありがとうございます(笑)。私、今になって、改めて人との出会いが自分を育ててくれていると思うんです。新潟の作家さんたちもそうですし、県外で活躍している大学時代の友達もそう。私は「作家になる」と決めて大学に入学したものの、卒業後はずっとその道を曖昧にしたまま生きてきました。人生の転機があって、5年前にやっと「陶芸で生きていく」と腹をくくったので、ちょっと遅いスタートになりましたけど、前を走ってくれている友人たちの背中を目指そうと思っています。

やきもの納屋 うすだ なおみ

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