まあるい窓から眺める舞子の景色。古き良き純喫茶文化を紡ぐ『RIIA珈琲』 神戸市
時代の変化とともに変わるものもあれば変わらないものもある。『RIIA(リア)珈琲』(神戸市垂水区)は、舞子にある純喫茶文化を守り続ける珈琲店です。
JR舞子駅につながるビル「Tio舞子」の2階。決して人通りが多い場所ではありませんが、同店には絶えずお客さんが訪れます。
外観から想像するよりも広い店内、約100席もあるそうです。
奥に進むと、パッと目を惹くまあるい窓。レトロなランプの吊り下がる先には明石海峡大橋が美しく伸びています。思わずカメラを構えたくなる、『RIIA珈琲』ならではの風景です。
「インスタグラムで話題になったみたいで、最近若い人も来られるんですよ」と優しく教えてくれたのは店主の林さん。
レコード会社勤務を経て、両親の経営する喫茶店で勤務。2001年の「Tio舞子」オープンとともに現在の場所に店舗を構え、以来店主として古き良き風情を残す喫茶店を守り続けています。
同店のコーヒーは「飲みやすい」と好評です。単品で飲める良質なアラビカ種の豆を店主自らブレンドし、店舗内に設けた焙煎工房で焙煎しています。鮮度のよい豆で淹れられるコーヒーは上品で癖がなく、噂どおりとても飲みやすいです。
ケーキもできる限り手作りされているそう。奇をてらわないシンプルなショートケーキは、ふわりと柔らかい生地に懐かしさを感じるホイップクリーム。手作りの丁寧さを感じるほっこり優しい味がします。
驚くのはそのお値段です。手作りケーキと淹れたてのコーヒー・紅茶のセットで550円(税込)というのは、今時なかなかないのではないでしょうか。
同店では日替わりランチやおでん定食、パスタなどの食事もいただけます。なかでも、鶏ガラからスープをとり、香辛料を複数種類混ぜ合わせてイチから作るというカレーは、知る人ぞ知る名物。
じんわり辛くて、でも辛すぎず、滋味深い。ゴロゴロと牛肉が入っていて食べ応えもあります。シンプルに見えて奥深い味わいのカレー、8時間もかけて作られるというのも納得です。
失礼ながら、取材するまでは色々なものをこんなに丁寧に手作りされているとは知りませんでした。何を食べても飲んでも“ちゃんと美味しい”。また訪れたくなる所以です。
“落ち着く”という言葉がぴったりの店内。そのわけは、間隔が広めに取られた座席なのか、昭和の雰囲気を残す内装なのか、はたまた窓の外の景色なのか…。
喫茶店経営の師として多くの店舗の開業を支援したり、様々な場で講演を行ってきた林さん。喫茶店は「日本のお家芸」だと語ります。アメリカのように広い家に招待してコーヒーを振る舞う文化は日本にあまりなく、喫茶店で待ち合わせて語り合う。「応接間」の役割を果たし、そこには美味しいコーヒーと心地よい接客がある。
様々な形態のお店が増える中で、純喫茶ならではの心地よさは確かにあると感じました。
忙しく過ごす人の多い今こそ、こういうお店が大切なのかもしれません。会社帰りにほっと一息つける場所、友人と語らえる場所、休日にゆっくり新聞や本を読める場所…。
「地域に密着した心の通った喫茶店を続けていきたい」という林さんの思いのこもった場所が、末長く続くことを願います。
場所
RIIA珈琲
(神戸市垂水区東舞子町10-1 Tio舞子2階)
営業時間
10:00~20:00
土・日・祝日は10:00~18:00
定休日
月に一度不定休
駐車場
Tio舞子駐車場あり