「斧でセルフ頭カチ割り」「腐臭を放つ風船人間」グロすぎ“悪魔感染”を描く『邪悪なるもの』の恐ろしさ
アルゼンチン発『邪悪なるもの』の衝撃
南米アルゼンチンから、またしても超残酷ホラー映画が登場。監督は、前作『テリファイド』がギレルモ・デル・トロ製作でハリウッドリメイクが決定したことでも話題を呼んだ鬼才デミアン・ルグナ。そんなルグナ監督が前作の反響に応えるべく作り上げた最新作『邪悪なるもの』は、悪魔の憑依が伝染病のごとく拡大するという一層ツイストの利いた設定のオカルト・ホラーだ。
シッチェス映画祭で中南米初の最優秀長編映画賞を獲得
教会が終わった、神なき世界。悪魔に魂を乗っ取られ、体が腐敗していく者――“悪魔憑き”の存在が人々の生活に暗い影を落としていた。“悪魔憑き”は処理人によって適切に処理されなければならず、古くから伝わる7つのルールを守らなければ、悪魔の力がまるで伝染病のように広がって人々を蝕み、やがてこの世の終わりが到来するという。
ある日、ペドロとジミーの兄弟は村の外れに変死体を発見し、さらには近隣の住民が家族に出た“悪魔憑き”を隠していることに気付く。二人は7つのルールに従って慎重に対処しようとするが、伝承を信じない人々の無謀な行動によってタブーは犯され、周囲は“悪魔憑き”で溢れかえってしまうのだった。
最愛の家族を守るべく、ペドロとジミーは感染から逃れようと姿の見えない悪が蔓延るアルゼンチンを途方もなく彷徨い始めるが……。
容赦のない残酷な物語とショッキングな映像表現が評価され、ジャンル映画の権威<シッチェス・カタロニア国際映画祭>ではラテンアメリカ作品初の最優秀長編映画賞受賞という快挙を成し遂げた本作。米映画レビューサイトRotten Tomatoesの批評家スコアでは、脅威の96%フレッシュ(24/10/30 現在)を記録している。
とにかくグロ描写がエグい!
まるでド田舎を舞台にしたゾンビ映画のように始まる本作だが、静寂はすぐに破られる。悪魔に憑かれたという男性は不気味に腐敗し膨れ上がり、家族は“処理人”によって殺すしかないと云う。生理的嫌悪を刺激する映像と閉鎖的な田舎の空気、疫病のように“悪魔憑き”を恐れる人々。そんなホラー下地の上に、続々と死体が積み重ねられていく。
登場人物がヒステリックに狂気を爆発させていく様子や主人公が我が子を守りたいと必死になる姿からか、多くのホラーファンが「南米版『哭声/コクソン』」と例えるのも納得だ。まず最初に動物がおかしくなり、まもなく周囲の人間の言動が凶暴化していくという設定はテンポも良いが、巨大すぎる恐怖に飲みこまれているようにも見える。
ルチオ・フルチみも感じさせるゴアゴア残酷ホラー
どちらにしても悪魔に憑かれた人間の末路はひどいもので、血しぶきや臓物を撒き散らしながら人々に“死”を拡散させていく。そういえば、数年前に『エクソシスト』(1973年)のモデルとなった子どもの症状は脳炎の一種によるものという説が医学誌等で紹介されたが、本作には『エクソシスト2』(1973年)に登場した自閉スペクトラム症者のシーンを参考にしたような描写もある。
“教会が終わった世界”という設定のとおり、神の救い=エクソシストの活躍は期待できない。しかし本作には“ハンター”的存在の処理人がいて、後半にかけてその存在がキモになってくる。また、前述した『哭声/コクソン』だけでなくルチオ・フルチ御大の『地獄の門』や『ビヨンド』、『墓地裏の家』、『マッキラー』なども彷彿させる仕上がりなので、ユーロホラー好きや、ファニーな要素皆無のガツンとエグいホラーが観たい! という人には絶対にオススメだ。
『邪悪なるもの』は2025年1月31日(金)より新宿武蔵野館ほか全国ロードショー