幼いけど、上級妃。思っていた以上に強かった里樹妃と気持ちをリンク――『薬屋のひとりごと』第2期、里樹妃を演じる木野日菜さんにインタビュー
大人気後宮謎解きエンターテインメント『薬屋のひとりごと』。2025年4月4日よりTVアニメ第2期2クール目が放送中! 第1期から続く未解決の謎が後宮を不穏な空気に包む中、猫猫と壬氏の前に新たな難事件が立ちふさがります。
今回、上級妃のひとり・里樹妃を演じる木野日菜さんにインタビュー! 第1期の思い出や先日放送された第37話、第38話を振り返ったお話を伺いました。
誰でも楽しめるミステリー作品
──作品の印象をお聞かせください。
木野日菜さん(以下、木野):人間ドラマや世界観の深さ、ミステリー要素が魅力的だなと思いました。キャラクターたちが丁寧に描かれつつ、それぞれの個性が大切にされているところも素敵ですよね。
1話だけしか出てこないキャラクターとか、一言二言しか喋っていないようなキャラクターでもしっかりと印象に残り続けるんです。今でも「あのときのキャラクター良かったな」とか、「あのキャラクターはもう見られないのか」みたいに心に残っているキャラクターがたくさんいます。
──ミステリーという部分は、第38話がまさにそうでした。
木野:そうですね。私自身、考えすぎることが苦手なのであまりミステリー作品に触れてきていなくて。でも、この作品のミステリーは、私たちにとって身近なものがトリックに使われているので、親近感が湧きますし、私でもわかりやすいです。どんな世代の人にも伝わるでしょうし、もしかしたらミステリーの中でも入りやすい作品かもしれませんね。
──主人公の猫猫についてはいかがでしょうか?
木野:普段は、冷静で淡々としていますが、珍しいものを見つけたときにかわいくなるのがいいですよね。第1期4話で、水晶宮の侍女たちに部屋から投げ出されたときに「ポーン、ポンポンポン」ってはねていたりとか! アニメならではの動きで、よりかわいくなっているキャラクターだなと思います。
──第1期で印象的なシーンはありますか?
木野:最終話、猫猫と羅漢のエピソードが良かったです。私の家族もこの作品を楽しみに見ているんですけど、特にお母さんが大好きで、何回見ても鳥肌が立つと言っています。お芝居もすごくて、最初に見た羅漢と、第24話の羅漢は全く別人のようでした。話数が進んでいくごとに変化していくのは、『薬屋のひとりごと』の魅力的な部分でもあるなと思いました。
あと24話での猫猫の舞も綺麗でした。第1期の第3話で芙蓉妃が舞っていたときも、こうやって感情を表すのか、届けるのか、と新鮮で。こういう世界観も良いなって思ったことがすごく印象に残っています。
──この作品、性別・世代を問わずに楽しめますよね。
木野:普段アニメを見ない方に「『薬屋のひとりごと』は見てるよ」と言ってもらえたり、小学生、中学生も見てくれているらしくてびっくりしました。難しい用語とか世界観の話もあるのに幅広く見てもらえるというのは、それだけ伝わりやすさが考えられているんだろうなって。
世界観だけじゃなく、恋愛とか今の私たちにも伝わりやすい部分がたくさんあるからこそ、誰もが見やすく、年代問わず人気なんだろうなと思います。
幼いけど、上級妃というバランス感覚
──演じられる里樹妃は第1期の第5話から本格的に登場しました。気高い上級妃たちの中では異色の存在で驚いた人も多かったと思います。
木野:本来、その場にいないような子が急に出てきてびっくりされたと思います。初登場のセリフは「フン」だったんですよね。ほかの妃にはない幼さが前面に表れていて、視聴者の目を引くキャラクターでしたね。
──最初は生意気な性格なのかなと思いきや、生い立ちを知れば知るほど気になるキャラクターです。
木野:可哀想な生い立ちですよね。普通は信用できるはずの侍女たちにいじめられているなんて。里樹妃は冷や汗を垂らしたり、緊張しているシーンが多くて、私も緊張しながら演じていました。
──猫猫のおかげで少し状況が良くなって、視聴者としてはスッキリしました。
木野:毒見役の河南に意地悪されていましたが、そこで猫猫が圧をかけてくれて(笑)。そのあと心を入れ替えた河南が、第2期からもそばにいるようになって。それこそ第2期の第13話では湯殿で転んだ里樹妃の肩を支えてくれました。そういうシーンを見ていると、「里樹妃にもこういう人が近くにいてくれるようになったんだ」と嬉しくなりました。
──設定的には、先帝の妃であり、現帝の妃でもあるという複雑な立ち位置のキャラクターです。
木野:理解が難しくて、猫猫が説明してくれるところとか何回も見返しました(笑)。改めてすごい世界観ですよね。
──演じるにあたってはいかがでしたか?
木野:ため息ひとつでもディレクションを重ねていただいたりして、最初はかなり探りながら作っていきました。里樹妃は上級妃の中で一番幼いけど位や立場は高いので、そのバランスが難しいんです。最初は少し幼くなりすぎてしまって、「もう少し上の立場で」とディレクションをいただいたりしたので、その都度、やりすぎていないかを調整しながら収録しました。
──上級妃ですけど、年齢的には少女ですものね。
木野:そうですね。上級妃であろうとして頑張っている姿を表現できたら良いなと思って演じています。
──では、ひとつのセリフを何パターンも録ったり?
木野:大きく、激しく、小さくみたいなものではなく、極小から小になって中になる、みたいな。そういう刻んでいく調整が多くて難しかったです。
──すごく大変そうなキャラクターです。
木野:特に第38話の長台詞は、今まではそんなに長く話すシーンがなかったからすごく緊張しました。あと、「湯殿(ゆどの)」は“ゆでん”と読むのかな?と思ったらほかにも難しい漢字があって(笑)。携帯片手に調べながらだったので、台本を読むのにも結構時間を割きました。
最初は「宦官(かんがん)」もなんて読むんだろう?から始まって、そこから調べてみたらこういう人たちなんだと。そういう意味では、一つひとつ知っていく毎に深みが増していく面白さがあるなと思いました。
──里樹妃はコミカルなシーンを担うこともありますが、都度、アドリブなどは入れているのでしょうか?
木野:アドリブはあまり入れていないです。やっぱり上級妃なので、リアクションは控えたほうが良いのかなと。ただ、等身大の女の子に戻るときは結構アドリブの指示がありました。
あと息だけのシーンですね。毒が入ったスープを飲もうとするところは緊張しながらも一つひとつ息を入れた覚えがあります。
──収録は常に緊張感を持っていたのですか?
木野:第1期はガチガチでした(笑)。分散収録でしたし、里樹妃の出番が少なかったということもあって、上手くこの世界観に馴染めるのかと。私自身、こういう世界観の作品にあまり出たことがなかったから、なおさら「これで合っているかな?」とドキドキでした。でも里樹妃もずっと緊張しているんですよね。びくびくしていたり、汗を垂らしているシーンも多いので、こちらも演じていてすごく肩がこりました(笑)。
──(笑)。ある意味、役とリンクしていたと。
木野:そうですね。第2期はリラックスできていたんですけど、第1期はそういうところでリンクしていたのかもしれません。
──第2期はみなさんと一緒に録られていると思いますが、実際に掛け合いをした感想をお聞かせください。
木野:やっぱり掛け合いができたことが嬉しかったですし、絶大な信頼を受けている方々とお芝居ができるのはすごいことだなと思います。演じていて居心地が良く、楽しかったです。
里樹妃は思っていた以上に強い子
──第37話、第38話では、再び里樹妃にスポットが当たりました。
木野:私としても、あれから里樹妃はどうなったのかと考えていました。そんな中、河南という唯一信頼できる人と一緒にいられる環境になっていたのはすごく嬉しかったです。あと、猫猫に対しての反応が少し柔らかくなった気がします。助けてもらったからなのかもしれませんが、そのおかげで等身大の女の子の部分を多く見ることができました。
そして第38話では里樹妃のお母さんのお話がありましたが、私としては「返して」というシーンとか、お母さんのことを話しながら泣くシーンは感情をどれくらい出して良いのかわからなかったので、台本や原作・コミックスを何回も読み返しました。
これまでの里樹妃は感情を抑えていたところがあるので、誰かに強く言い放つことがなかったんですよね。そういう意味ではこの第38話で彼女の強さが見られたんじゃないかなと思います。
ただ収録では「もっと激しく、ワンワン泣いてください」とか、鏡を取り返すシーンでは「リミッターが外れたように叫んでください」と言われて。それを受けて、私が思っていた以上に里樹妃は強い子なんだなって感じましたし、それだけ一生懸命演じたので楽しんで見ていただきたいです!
──鏡のシーンは溜まっていたものが吐き出されるような迫力でした。
木野:お母さんへの気持ちは、みなさんも共感できる大切な部分だと思うんですよね。自然と涙が流れるところとか、その気持ちがよくわかったおかげで自分の中からスラスラとセリフが出てきました。演じやすかったですし、すごく感情を込められたのかなと思います。
──今後の放送を楽しみにされている方々へメッセージをお願いします。
木野:第2期も『薬屋のひとりごと』をご覧になってくださってありがとうございます。ミステリーあり、恋愛あり、とたくさんの魅力が詰まった作品が第2期になってより世界観を増しました。新たに明らかになったことや、まだわからないこともあります。この先、どんどん楽しくなっていくので、ぜひ最後まで楽しんでいただけたら嬉しく思います。
[取材 MoA]