中山間地域 バス廃止で乗合タクシー拡大へ 運転士不足理由に 市が説明会
中山間地域のバス路線の統廃合などを含めた公共交通再編の説明会が4月下旬に津久井、相模湖、藤野の各総合事務所で行われた。説明会では、市交通政策課の担当者が神奈中バスの路線の統廃合、乗合タクシーの導入計画などについて解説した。
公共交通再編のきっかけについて市は、2024年6月に神奈川中央交通株式会社から申し出があったと説明。運転士不足を理由にバス路線の統廃合、他の交通モードへの転換についての内容で、市はそれを受けて三ケ木より西側のバス路線について協議を進めてきたという。
2路線継続11路線廃止
説明会では、交通再編について「バス車両でないと乗車人数に対応できない路線は維持」「ピーク時でも大人数の輸送が必要ない路線は現行の乗合タクシーのエリアを拡大」などの基本的な考え方を提示。その上で、三ケ木からJR相模湖駅間の2路線は運行継続を前提に協議、その他の11路線は現在の乗降人数を踏まえ廃止する方向で協議していくと示した。
路線が廃止される地域は、現在運行している乗合タクシー(定員8人)のエリアを拡大して4台で対応するとし、乗り継ぎができるように再編し駅へのアクセスを可能にするとした。
神奈中による現行の運行体制は最長で27年3月までの予定で、今年10月からは市が乗合タクシーの実証運行を始めると発表した。詳細は各利用促進協議会を通じて、地域の意見を取り入れ決定すると説明。実証運行の運賃については、タクシーの迎車料金400円+初乗り料金500円を参考に、同一運賃区域内は大人900円程度とした。
「切り捨てだ」住民は反発
24日に津久井総合事務所で行われた説明会には14人が参加した。住民からは「現在の乗合タクシーは利用しづらい。せめて定刻で走らせてほしい」、「運賃が高い。『子育てするなら相模原』と言うが、こんな政策はおかしい」、「中山間地域を切り捨てるような計画だ。大きな決断をしてほしい」などの意見が飛び交った。
藤野に続き、この日も説明会に参加したという男性は、「運転士不足なら、市の職員が免許を取りドライバーを派遣して、バス路線を維持するくらいしてほしい」と迫ると、「この地域を4台でカバーできるのか。一カ所に8人以上の予約が来たらどうするのか」などと問い掛けた。担当者は発言に理解を示した上で、「8人以上の場合はピストン輸送を想定している。4台で対応というのは実質数字を見ての想定で輸送力としてはまかなえると判断した」と回答。さらに男性は「陣馬山ややまなみ温泉など、登山客が不定期にたくさん来る場合はどうするのか。地域活性化に観光は大事であり、それを切り捨てるシステムはありえない。観光課とどう連携するのか具体策を早く決めてほしい」とまくし立てると、「乗合タクシーは地域交通を守ることを想定している。観光課とは話し合って連携していく」と話した。また、同席した神奈中の社員が労働時間の規制や採用がなかなか進まない実情を述べ「苦渋の決断の中で市と協議している」と理解を求める場面もあった。
説明会は4月19日から24日まで6回行われ、参加者は延べ200人弱だった。市は今後、実証運行に向けて仕組みを調整していくという。