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【市議会の議会改革】なぜ静岡市議会の改革論議は低調なのか?来春の市議選に向けて注目すべきポイントは?議員に求められる役割を解説します!

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静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「市議会の議会改革」です。先生役は静岡新聞の市川雄一ニュースセンター専任部長です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年7月29日放送)

(山田)今日は静岡市議会の話題ですね。

(市川)7月14日付の静岡新聞の1面に「静岡市議会 議会改革議論低調」という大見出しのトップの記事が出ています。山田さんは議会改革というとどんなイメージを浮かべますか。

(山田)議会改革だから、議会の必要性だったりとか定数のことだったりですかね。

(市川)議会制度は古くからありますが、時代によって社会状況や人々の意識が変わっていくので、それに合わせてアップデートする必要があるということが第一の目的としてあります。旧態依然とした議会ではだめではないかということで、議会改革というのは常に求められています。

以前このコーナーで、2013年に公職選挙法が改正されてインターネットによる選挙運動ができるようになったという話をしたと思いますが、それもまさにインターネットの登場に合わせた改革、アップデートだと思います。

地方議会の目的というのは住民の声を行政に反映させるということだと思います。そのためには市議会議員選挙の投票率をいかに上げるか、住民が地方議会にいかに関心を持てるようにするかが大事です。そのためには、議員自らそのことを考え、議会をアップデートすることが総意ではないかと思います。

今回の静岡新聞の記事ではそういうことが書いてあります。ポイントとしては来年春に行われる静岡市議会選挙。4年に1回迎える任期満了に伴う市議選ですが、前回の投票率は40.13%と過去最低でした。議会としては、これで大丈夫なのか、市議会に対する関心が薄れているのではないかなどと考え、この4年間で議会改革に取り組むべきはずだったんです。

前回の投票率でそのことを突きつけられているにもかかわらず、議会改革があまり進まないまま次の選挙を迎えてしまいそうだというのが、今回の記事の趣旨でした。

(山田)それが静岡市議会の議会改革が低調という表現になっているということですね。

基本条例制定以来、12年間1度も開かれていない推進会議とは?

(市川)その象徴的な話があります。静岡市議会は2012年に市議会基本条例というものを制定しているのですが、その中で必要に応じて議会改革推進会議を開くと明記しています。議会改革推進会議の役割は何かというと、社会情勢の変化に応じて条例の見直しをしたり、さまざまな改革を検討したりすることです。ところが、12年たった現在に至るまで、1回も開かれていません。「必要がなかったから」という言い訳があるのかもしれませんが、現状の投票率などを考えると通用しませんよね。

(山田)何で開かないんですか?

(市川)記事の中では理由の一端が書かれています。市議の1人は「会議設置を提案したこともあるが、議員間で考えが一致しない」とこぼしているそうです。議会改革推進会議は多数派の議員が賛成しないと開かれません。1人、2人が開催したほうがいいと言っても、過半数の議員が賛同しないとなかなか物事が進まないんです。静岡市議会で多数を握る自民党市議団が、おそらく「うん」と言わなかったのではないかと思います。「別にしっかりとした議会活動をしているのだから、今は必要がない」と判断したのではないでしょうか。

今回の任期中には議員の定数と報酬を見直すべきだという意見もあったけどそれがたち消えになったというような話もあります。これもやはり自民党市議団が議論しようと言わないと動き出さない。それがなかったというのが現実なんだと思います。

(山田)定数を減らして、仲間の人数が減ってしまったら、自分たちの意見が通らないということがありますからね。

(市川)その部分が議会改革のものすごく難しいところです。例えば報酬では、自分たちで報酬を増やそうというのはいやらしいし、減らそうというのも大変だと思います。定数にしても減らせば自分たちの身が危うくなるというような話もあります。

(山田)そうすると保守的になりますよね。

(市川)そうなんです。外部の人の議論じゃなく、自分たちのことを自ら決めなければいけないというとなると、なかなか痛みのある改革はできないという構造的な問題があります。

委員会のネット中継がない政令市は静岡市議会含め3つだけ

(市川)今回の記事でもう一つ象徴的に取り上げているのが、委員会のインターネット中継の問題です。地方議会には、議員全員が出席して格式張った議場で行う本会議と、専門的なことをやり取りする委員会があります。委員会というのはより深く細かい議論をする場になります。

静岡市議会で言えば、予算や人事の話をする総務委員会、建設事業などの話をする都市建設委員会などさまざまな委員会があり、それぞれ議員が7、8人所属しています。この委員会のネット中継をしていないのは、全国20政令指定都市のうち、静岡、新潟、岡山の3市だけです。

(山田)これにも理由があるんですか?今の時代当たり前じゃないですか。

(石川)静岡市議会の議会事務局によると、ネット中継を提案する議員もいるけど全体の合意が取れていないそうです。

(山田)出たー。

(市川)おそらく、多数の議員がいるどこかの会派などが反対していて実現に至ってないんだと思います。

(山田)世の中的に言うと、広島県の安芸高田市の石丸伸二前市長がネットを活用して話題になりましたよね。ネット中継を行えば、注目も集まると思うんですが。

(市川)僕は静岡市政の担当だった2020年に、実はこのことをコラムで書きました。2021年の市議選の1年前です。市議会の委員会は誰でも傍聴することができます。ただ、静岡市議会の委員会の部屋は、議論している議員席と傍聴席が遠いんです。

(山田)そうなんですか。

(市川)議員が座っている席があり、その後ろに市の職員が何十人と座っているんですよ。議員の質問に答えるために各課の課長や課長補佐が大勢来るので、60人近くいるんです。そのさらに後ろの方に傍聴席があるので、議員の声もあまり聞こえないし、顔の表情なんかは全く見えません。

(山田)そんなに遠いんですか。

(市川)その当時のコラムでは、これはあまりにひどいのではないか、委員会の傍聴席が議員と市民の距離感を象徴しているのではないか、と書きました。せめてネット中継してはどうかという提言もしました。4年経ちましたが、当時と何も状況は変わっていませんね。

(山田)そういうものはネット中継するのが当たり前かと思ってました。

(市川)今は本当に当たり前で、浜松市は2016年から委員会のネット中継を行っています。前にも少し話しましたが、本会議は答弁書を読むだけの台本的なやり取りになりがちなんです。それに対して、委員会はいわゆる課長級などより実務に近い人が答弁し、意外とガチンコで議論する場面もあるので、市民が見るとより議会との距離感が縮まるのではないかと思うのですが…。

(山田)われわれはどういうところに注目して選挙に向かえばいいんですか。

(市川)議会改革は低調。委員会を傍聴しようと思っても遠くて何を言っているのかよく聞こえない。そういった状況で、僕らが選挙の前にどうやって市議をチェックすればいいのかが難しいところです。

(山田)市議の普段の仕事をチェックしにくいということですか。冒頭の話に戻ると、市議というのは一般市民のわれわれと市政をつなぐ役目で、われわれの声を聞いてくれるということなんですよね。

(市川)本来はそういう役割です。それを考えたときに、やはり市議選の投票率が高くないと「それって市民の代表と言えないんじゃないか」ということが根本的にあります。

(山田)ですよね。

市議会を動かすのはやはり選挙!

(市川)議員定数のことにも1点触れておきます。記事の中でも指摘されていますが、議員一人当たりの人口というのが一つの指標になります。静岡市は全国20政令指定都市の中で、議員一人当たりの人口が一番少ないんです。2023年12月現在で、1万4120人。つまり、今の静岡市議はそれぞれ市民1万4120人の代表なんです。

例えばこれが横浜市になると、4万3828人に1人という計算になります。そうなると、専門家によって意見は分かれますが、静岡市の議員定数はまだ減らせるのではないかとも言われています。

(山田)でも、逆に言うと、計算上ではより市民一人ひとりの意見を聞いてくれる議会になってるわけですよね。

(市川)そうなんですが、だとすると、投票率も上がってきてしかるべきではないかと思います。このままでは40%を切ってしまうのではないかと言われるぐらい関心が低い。現役の市議会議員やこれから選挙に出ようとする候補予定者が、「私はこんなことをやる」と訴えて政策論議を活発に行わないと、住民は関心を持てないと思います。

制度としても、委員会のネット中継を行わないとか、定数や報酬の議論をしない、議会改革推進会議を開催しないという現状は、ちょっとどうなのかなと思います。

(山田)そうですね。でも、過半数がないと物事が動かないという点が難しいですね。

(市川)それを変えるのが選挙なんです。ただ、市議会議員選挙というのは地域代表が強い選挙でもあるので、定数を減らすと支援組織が強い人だけが勝てて、いわゆる「地盤」「看板」「カバン」がない人たちが落ちてしまうという悪循環になる恐れもあります。定数を減らせば質が良くなるとも言い切れないところが難しさでもあります。

(山田)市議会を変えたいと思うなら、やはり選挙が大切だということですね。

(市川)静岡市議選は来年3月23日に行われます。

(山田)静岡市だけじゃなく、各市町の議会に注目していきましょう。今日の勉強はこれでおしまい!

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