“血がつながらない親子”【養子縁組】の幸せとは? 「育てられてよかった」子と「育ててよかった」親が90%以上!
4月4日「養子の日」に考える日本の養子縁組の現在地・第2回。特別養子縁組の仕組みや養親の心構え、養子と養親の幸せとは。全2回。
【画像➡】日本と諸外国における里親等の委託率の比較を見る4月4日は「養子の日」だと知っていますか?養子制度には「普通養子縁組」「特別養子縁組」の2種類がありますが、特別養子縁組は、子どものために作られた制度です。
日本ではまだ認知度が低いですが、近年法改正が進み、取り巻く環境も改善されてきています。
今回は、養子縁組や里親制度の支援を続けられている日本財団の「子どもたちに家庭をプロジェクト」の高橋恵里子さんに、「特別養子縁組」と、子どもに養子であると告げる「真実告知」の重要性について、くわしく伺いました。
養子・里親の制度は3つ 違いを分かりやすく図解
現在、日本では何らかの理由で生みの親のもとで育つことが困難とされている子どもは約4万2000人います。
そんな子どもたちを支援するための制度が「特別養子縁組」と「里親」で、①子ども②生みの親③育ての親、この三者間の親権や子どもの年齢などによって異なります。
子どもの幸せを目的に作られた「特別養子縁組」とは、どんな制度なのでしょうか。
「特別養子縁組は、子どもが生みの親との親子関係を終了し、育ての親へ親子関係を移します。子どもと育ての親は一生離縁ができず、法的には実子と同等の扱いがされる制度です。
また、2020年の民法改正によって対象とされる子どもの年齢が6歳未満から15歳未満までに大幅に引き上げられたこともあり、これからさらに支援の輪が広がっていくと期待されています」(日本財団・高橋恵里子さん 以下同)
制度の違いは、大きく分けて3つ。検討する場合はどこを重視するのかを考えることが必要だ。 出典:「はじまりの連絡帳」日本財団
養親になることを考えたら?
では、養子の“育ての親”に当たる「養親」(ようしん)を検討したいとき、何から始めればよいのでしょうか。
「里親制度は児童相談所、養子縁組は児童相談所と民間のあっせん団体が取り組んでいます。まずは、どちらかに問い合わせをすることがファーストステップですね。
児童相談所では相談会や里親・養親として子育てをしている人の体験報告会などを行っていますので参加して情報を得ることもおすすめです。
また、民間のあっせん団体にはホームページがある場合が多いので、まずは不安に思っていることや疑問などについて調べてみるのがいいかもしれません。
日本財団のホームページでも、養子縁組あっせん法に基づく認可を受けている団体の連絡先を掲載しています」
児童相談所と民間あっせん団体の違いとは?
養子縁組に取り組んでいるのは、児童相談所と民間のあっせん団体の2ヵ所。しかし、どちらに相談にいけばよいのか。はたまた両方なのか。それぞれどんな特徴があるのでしょうか。
「児童相談所で養子縁組をあっせんしてもらうには、都道府県が認定する養子縁組里親に登録することが必要です。研修や家庭訪問などを経て登録できます。研修から登録までの費用は無料です。
ただ、実際の紹介までに時間がかかること多く、スピード感はあまり望むことができないかもしれません。また、対象となる子どもの年齢も幅広くなっていますので、新生児以外を迎えることを望んでいる方は児童相談所へ問い合わせてみるほうがよいでしょう」
一方、民間のあっせん団体はどのような特徴があるのでしょうか。
「研修や登録までの手続きなど、紹介までのスピードは各団体によって異なります。児童相談所と違って費用がかかる場合が多く、その額も異なります。
民間団体の場合は、養親さんたちのネットワークがあるところも多く、縁組後に養育に関しての悩みなどを同じ立場の人たちと共有できたり、相談できたりする体制が整っている団体もあります。
また、生後間もない赤ちゃん(新生児)のあっせんがほとんどです。生まれた数日後に、病院などから養親さんのところに赤ちゃんがやってくるということが多いと思います。
また、民間団体はそれぞれの考え方(ポリシー)のもとで活動されているので、ご自身の考え方がその団体と合っているのかどうかの見極めはとても重要です。
児相と民間の両方に登録することも可能だと思います。ですが、民間団体ごとにルールがあるのでその辺は確認しておきたいですね」
養親は“誰のための制度”かの覚悟が必要
養親になることを望み、子どもを迎え入れる準備を始める前に一度考えておいてほしいことがあると高橋さんは続けます。
「まず、前提として『養子縁組や里親制度は子どもの福祉を目的としたもの』ということを認識していただくことが大切だと思います。
決して、子どもを育てたい大人のための制度ではない、と理解することがとても重要。子どもが幸せに育つためには、子どもを支える家族が必要です。そのためにこの制度があります。
実際に養親になることを希望される方には、子どもを望みながらも実現できなかったという方が多くいらっしゃいます。長くつらい不妊治療を経験された方も少なくありません。それゆえに、子どもや子育てに関して期待値が上がってしまっている場合もあるようです。
例えば、子どもが成長するにあたって思い描いていた理想と違う現実が目の前にふりかかることもあると思います。さらに、養子であるということから生じる悩みが表面化してくることもあるでしょう。
ですが、常に子どもの声を聞いて、ありのままを受けとめてほしいと思います」
子どもへ養子だと告げる「真実告知」は重要
もう一つ、養親になることを考える際に知っておきたいのは「真実告知」という言葉。いわゆる、子どもに実子ではなく養子であると伝える行為です。
これは養子縁組家庭が幸せに人生をともに歩むための大切なプロセスとされていて、多くの養親たちが悩み迷ってきたことでもあります。
「真実告知に関しては、昔はしないほうが良いという風潮もありましたが、今では早いうちにちゃんと伝えるべきといわれています。なぜならば子どもには自分の出生について知る権利があることが第一にあげられます。
実際、幼いころに告知する家庭が増えているようです。日本財団の調査では1歳未満で真実告知する家庭が一番多く、平均でも真実告知までの期間は4.6年でした。
また、子どももより幼いころに真実告知を受けると『父母が“育ての親”である』ということを前向きに受けとめられる割合が多くなるという調査結果も出ています。
さらに自己肯定感が高くなるというデータもあるのは注目すべき一面です。
〔子どもが『自分自身に満足している』〕という問いでは、7歳未満で告知を受けた子どもの場合、68%がそう思えているのに対して、13歳以上で告知を受けた場合は38.5%と差が出ました。これも、より低年齢で真実告知をすることを推奨する要因のひとつでしょう」
真実告知をした子どもの年齢別の調査では、真実告知が早いほうが子どもはポジティブに受けとめられている結果が出た。 出典:日本財団「養子縁組をした762人の親子のこえ」
“子どもの幸福度”は一般家庭より養子家庭が高い
もはや養子である事実を「秘密にするべき」という考えは、“昭和の旧常識”といえるようです。
隠す理由の大きな理由には「かわいそう」という思いがありますが、それらは戦中から戦後と続いた日本が貧しかった時期に「養子になったけど食べ物を与えられなかった」「親戚をたらい回しにされた」などと祖父母や親たちから聞いた話や、昔の物語で継母・継父が意地悪役だったことが頭に残っているのからかもしれません。
でも現代は大きく様変わりしています。日本財団の15歳以上の養子縁組家庭を対象とした調査では、養子となった子どもの90%は「養父母に育てられてよかったと感じている」と答え、さらに74%が「養子であることで嫌な思いをした経験はない」。養親側も95.6%が「子どもを育ててよかったと感じている」という結果が出ました。
さらに、子どもの幸福度を問う質問「わたしは幸せだと思う」の問いに対し、一般家庭は平均6.41点だったのに対し、養子縁組家庭はそれを上回り平均7.6点だったという興味深い結果もあります。
子どもも養親も幸せである以上、〈養子はかわいそう〉などの古い先入観から私たちもアップデートする必要がありそうです。
養子縁組をした家庭で、養子の「育てられてよかった」は90.4%、養親の「育ててよかった」は95.6%と、子ども・親ともに高い幸福度だ。 出典:はじまりの連絡帳/日本財団
子どもの幸福度は、一般家庭より養子縁組家庭のほうが高い点数となった。 出典:はじまりの連絡帳/日本財団
子どもたちが幸せな家庭で暮らすために
アメリカやカナダ、オーストラリアでは、社会的養護が必要な子どもの80%以上が里親制度で保護されているのに比べ、日本では約25%程度。韓国、台湾といった東アジアの中でも最下位です。
2018年前後の10ヵ国を対象とした里親委託率の割合では日本が最下位となった。 出典:社会的養育の推進に向けて/こども家庭庁支援局家庭福祉課
では、これから多くの子どもたちを守っていくためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。
「まず、養子縁組や里親制度について社会的な認知度や理解度が進むことが大切なのではと思います。
例えば、身近に養子縁組をした親子がいたら、それを聞いたママ友や友だちが素直に『おめでとう!』と言えるような社会になっていけたらいいですよね。大切な子どもたちを社会全体で育んでいくという意識がさらに強くなり、それが当たり前の世の中になれば素晴らしいです。
また、妊娠・出産や、里親や養子縁組制度などに関する子どものころからの包括的な教育もまだまだ足りていないと思います。長年、日本では性教育がタブー視されてきたこともありますが、これこそすぐに改善していかなければいけないことですよね」
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今回取材してわかったのは、養子縁組・里親制度において日本は試行錯誤しながら、よりよい道を模索中だということです。しかし、法改正などのハード面は急ピッチで整いつつあるのだということもわかりました。
そんな中で、私たちにできることは、理解を深めながら一人でも多くの子どもが幸せな家庭環境で育つことができるように願い、考え、行動していくことなのかもしれません。
日本財団では、2014年に養子縁組・里親制度の認知度アップのために4月4日を「よ~し(養子)の日」として普及イベントや報告書の公開などをしてきました。
2025年度は現時点で未定とのことですが、養子や養親などの生の声や、それらが集まったサイトなどをみることで、多角的に情報を得ることができます。
●高橋恵里子PROFILE
2013年、日本財団にて「ハッピーゆりかごプロジェクト」(現:日本財団子どもたちに家庭をプロジェクト)を立ち上げる。生みの親と生活することが難しい子どもが、あたたかい家庭で暮らすことのできる特別養子縁組や里親制度を啓発するべく活動を行っている。
取材・文/関口千鶴