故・かこさとしさん 孫が受け継ぐ思い 『くらげのパポちゃん』刊行
故・かこさとしさん(1926年〜2018年)が70年前に描いた未発表原稿『くらげのパポちゃん』が5日、講談社から刊行された。挿絵を担当したのは、孫の中島加名さん(31)。反戦の思いが込められた同作品を次世代につなぐ。
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物語は従軍し、南の海で亡くなった父に、子の成長を伝えにいくクラゲの冒険譚だ。「戦争を総合的に書く」。そのためには自身の戦争体験だけではない視点が必要だとし、戦争を題材にした作品を長らく描けずにいたかこさん。20代でしたためた紙芝居の草稿は、一昨年まで誰にも知られずに保管されていた。
発見後、各社が報じる中で刊行が決定。挿絵は同時期に『かこさとし童話集』の挿絵を担当していた中島さんに託された。絵本を描くのは初めてで、突然の依頼に動揺したが、「作品は心に刺さった」。新江ノ島水族館で魚を研究するなど、試行錯誤を重ねながら制作の日々を送った。「作業が辛かったとき、かこが夢枕に立ったこともある」と振り返る。
「自分で考えてほしい」とよく話していたというかこさん。中島さんは「この絵本を読むことで、読者が戦争について考えるきっかけになれば」と呼び掛けた。