「Suica」は今後10年でどのように進化するか JR東日本が将来像を発表
JR東日本が10日、Suicaの将来像を発表しました。今後10年でSuicaの機能を順次グレードアップし、移動だけでなく様々な生活シーンで利用できる「生活のデバイス」を目指すといいます。
Suicaのセンターサーバー化
JR東日本はICカードでチケットやSF(電子マネー)を管理するやり方から、センターサーバーで管理する新しいプラットフォーム型のシステムへ移行する「センターサーバー化」を順次検討します。
「運賃計算などの処理を改札機ではなく全てセンターサーバーで実施する」そんなセンターサーバー方式を採用した新しいSuica改札システムは、すでに2023年度に北東北エリアで導入済み。他のエリアでも順次導入を進めているところです。今回発表されたのは、そのシステムをベースに新たにサービスを盛り込んだものと言えます。
センターサーバー化により実現するのが、利用エリアの統合です。現在は首都圏(長野含む)、仙台、新潟、盛岡、青森、秋田の6エリアに分かれており、各エリアをまたいで利用することはできません。2027年春頃にはエリア統合によりこの問題を解消し、たとえばSuicaで上野(首都圏)から仙台へといった利用が可能になります。
2028年度には新たにリリースされる「Suicaアプリ(仮称)」でセンターサーバー管理型の鉄道チケットの提供を開始。毎月3,000円を支払うことで、自宅最寄り駅を起点にどの駅でも運賃が50%割引になるサブスク商品(割引上限あり)を販売したり、記念日やイベントでの買い物で鉄道クーポンを配信するなど、さらに便利なサービスを利用できるようにします。
一部先行報道がありましたが、改札の利用方法にも変更が生じるようです。改札にSuicaをタッチして通過する「タッチ&ゴー」から、タッチせずに改札を通過できる「ウォークスルー改札」、改札機がない駅での「位置情報などを活用した改札」(入出場時に位置情報を利用)の実現を目指します。
将来的にはクレジットカードや銀行口座と紐づけることでチャージ不要の後払いの実現を目指すほか、2026年秋頃にはSuicaの上限額2万円を超える買い物でも利用できるコード決済機能の提供、電子マネーの送信、クーポン機能、地域限定バリューの発行など様々な機能を追加するということです。
各地域に根差した「ご当地Suica(仮称)」ができる
JR東日本は現在、自治体とMaaSの連携で移動と地域のDXに着手しています。このモデルを地域連携ICカードとの統合により拡張し、各地域に目指した「ご当地Suica(仮称)」を目指します。
ベースとなるのは「Suicaアプリ(仮称)」ですが、マイナンバーカードと連携することで地域内の生活コンテンツや地域商品割引・デマンドバスなどのサービス、商品券や給付金の受け取りや行政サービスの利用を実現するといいます。
Suicaで「おもてなし」?
面白いところでは「配車手配」や「湯沸かし手配」といった「おもてなし」サービスの実現も検討されていること。たとえば新幹線で移動したあと、駅を出るとタクシーが待機している。帰宅時はお風呂が沸いている……こうしたサービスに加え、利用者の健康状態に合わせた食事をレコメンドする「お気遣い」サービスの実現なども視野に入れます。
このほかにも訪日外国人向けに2025年3月から「Welcome Suica Mobile」(iOS)サービスを開始、2025年秋には「JR東日本の新幹線eチケット」「在来線特急のチケットレスサービス」を、2026年春には中央線などの普通列車グリーン車を利用できるようグレードアップします。
ほかの交通事業者へのSuicaサービスの提供も。すでに2024年11月に「東京モノレール区間の定期券(通勤定期)」が発売されていますが、今後も他の交通事業者の定期券発売サービスを行うこと、2026年春頃には通学定期券へも拡大することが明記されました。
「他交通事業者との協調、共生を行い、持続可能な交通系IC乗車券システムの実現に貢献」するというのがJR東日本の主張ですが、ここで効いてくるのがセンターサーバー化。コストダウンだけでなく、ニーズに応じて利用できるようにしていくことで、掲げた理想の実現を図ります。また将来的にはこれらのSuicaサービスを、モビリティを含めたTOD・スマートシティ開発の1つの機能として位置づけ、海外マーケットへの拡大も目指すといいます。
(画像はJR東日本のリリースから)