自閉症娘、小学校は特別支援学級へ。心配だった入学式、学校生活、友達関係…ありがたかった配慮は?
監修:室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
希望通り特別支援学級へ就学決定。入学前からさまざまな配慮が!
就学相談をへて、希望通り特別支援学級に就学したASD(自閉スペクトラム症)の娘。わが家の地域の小学校では春休みに事前面談がありました。ここで娘のサポートブックを持参して、娘の特性や得意不得意を伝えました。この時に「幼稚園で仲が良い子・仲が良くない子」を聞かれました。娘が「交流学級」で学ぶときのために、通常学級の教室にも娘の席が用意されるので、クラス分けでできるだけ配慮してくれる感じでした。また、入学式の数日前に入学式のリハーサルをしてもらったのですが、特別支援学級と通常学級の担任の先生とも顔合わせをさせてもらえました。式で座る場所も教えてもらい、娘もどんなところでどんな雰囲気でやるのかが分かり「入学式大丈夫!」と言っていました。もし通常学級に就学していたら、これらの配慮はこちらから希望しない限り、おそらくなかっただろうと思うので、 特別支援学級に入ることができて良かったと心から思いました。
入学後、1番大変だったのは「荷物の重さ」。担任の先生との交換日記で相談すると……
入学してすぐ、娘にとって1番大変だったことは、ランドセルや荷物を持って登下校することでした。娘は小柄なほうだったので、ランドセルを背負い水筒をかけ、手荷物を持って……本当に大変そうでした。しかも学校まで娘の足で徒歩35分。学校は山の上。行きは坂を登り階段を上り……登下校に付き添っていた私もしんどかったです……。結局手荷物などは私が代わりに持ちました。幼稚園の年長時に自分で荷物を持たせて徒歩で登園したり、登校練習はしていたつもりでしたが、小学生の荷物の重さは想像以上でした。「このままではいつまで経っても自分の荷物を持って登下校できそうにない……」私は特別支援学級の担任の先生に相談しました。
担任の先生とは交換日記で毎日やりとりをしていました。私は、娘には荷物が重すぎて自分で持てないこと、特に金曜日は持ち帰る物が多いうえに図書の時間があり、借りてきた本(2冊)も持ち帰らなくてはならず大人でもキツいと感じる重さになることを伝えました。
担任の先生はすぐに対応してくれて、宿題で使わない教科書を持ち帰らなくていいと娘に言ってくれました。さらに金曜日に借りた本はその日には持ち帰らず、次の週の月曜日に持ち帰ることにしてくれました。これで娘の荷物問題がすべて解決したわけではありませんでしたが、娘が1番しんどかった悩みに先生が助け舟を出してくれたことで、娘は担任の先生が一気に好きになりました。好きな先生が担任ということは、娘にとって学校へ通う大きな安心材料となっていたようです。
入学前から気になっていたお友達関係。特別支援学級での休み時間の過ごし方は?
そしてもう一つ、特別支援学級に入って良かったのは、休み時間に一緒に遊ぶお友達ができたことでした。娘は、お友達との関わり方に苦手なところがあったのですが、皆分け隔てなく仲良く遊んでいました。遊び相手がいなくて1人になってしまう時には、先生がきっかけをつくってくれて遊びの輪に加わることができていたようです。休み時間であっても、先生が1人は必ず様子を見てくれていたそうで、もし何かあっても大きなトラブルに発展することもなく、友達との関わり方や遊び方を学んでいたように思います。小学生になり、お友達と仲良く遊べるのだろうか、休み時間に1人になってしまうのではないか……と不安だったので、その配慮はとてもありがたかったです。
幼稚園では行き渋りがあったけれど……さまざまな配慮で小学校生活はスムーズにスタート
こうして書き出してみるとお勉強の心配よりも、ランドセルが重いとか、休み時間どうしようとか、トイレが汚くて入れないとか、給食が苦手とか……生活面のほうが悩みや心配がありました。幼稚園の時には、娘の困りが先生にうまく伝わらず行き渋りにつながったこともあり、とにかく「楽しく学校に通ってほしい」という思いで特別支援学級を希望していました。結果として、小学校ではさまざまな配慮をしていただき、入学後スムーズに学校に慣れることができたので、 特別支援学級に入ることができて本当に良かったなと思います。
執筆/マミヤ
(監修:室伏先生より)
情緒障害特別支援学級での入学前の支援から、入学後の困りごととそれに対するサポートについて詳しく共有くださり、ありがとうございました。担任の先生がきめ細やかな配慮をしてくださり、お子さんとの関係性がとてもよいとのこと、親御さんとしてもとても安心ですよね。困りごとに対して丁寧に向き合ってもらう経験を通して、今後社会生活の中でとても大切な、誰かに支援を求める力、困った時に相談をする力も育ちます。しぇーちゃんが今後も楽しい学校生活を送れること、応援しております。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。