お風呂嫌いの猫でも『シャンプーしたほうがいいタイミング』5選 治療として必要な場合も
1.毛の長い猫種や皮脂の多い猫種
猫は基本的にグルーミングで体を清潔に保ちますが、場合によっては生涯定期的なシャンプーが必要となる猫種がいます。
例えば、ペルシャ、メインクーン、ラグドールなどの長毛種の猫は、被毛についた汚れや毛のもつれから毛玉ができやすいため、定期的にシャンプーやカットをして毛玉や静電気を予防してあげる必要があります。
また、デボンレックス、ノルウェージャンフォレストキャットなどの猫種や未去勢のオスは、皮脂が多いため、定期的なシャンプーで余分な皮脂を洗い流し、皮膚病を予防してあげることが大切です。
どの品種でも起き得ますが、特にペルシャなど長毛種の未去勢のオスでは、ホルモンの関係により尻尾の付け根の皮脂の分泌が過剰になることがあります。その状態でシャンプーをせずに放置していると「スタッドテイル」と呼ばれる皮膚病が起こりやすいため、注意が必要です。
2.毛玉の吐き戻しが多い猫
毛玉の吐き戻しが多い場合、原因の一つとして抜け毛が多く、グルーミングの際に大量の毛を飲み込んでしまっていることが考えられます。
特に年に2回の、春（3月ごろ）と秋（11月ごろ）の換毛期には、普段抜け毛の少ない猫でも毛玉を吐くことが増える場合があります。
毛玉は吐き出せれば良いのですが、あまりに大量に飲み込んでしまうと、腸の中で塊になってしまい、最悪の場合、腸閉塞を引き起こし手術で取り除かなければいけないこともあります。
長毛種の猫はもちろん、それ以外の猫種でも、本人がシャンプーを許容できるようであれば、この換毛期の時期に合わせて年に1～2回はシャンプーを行ってあげることで毛玉予防になるでしょう。
3.外によく出る猫
外によく出る猫は室内飼いの猫に比べてダニやノミなどの寄生虫が多くつきやすいです。ダニやノミがついた状態で放置していると、皮膚炎や感染症を引き起こすだけでなく、家に持ち込み飼い主さんも吸血される危険性があります。
吸血されるだけでなく、ノミやダニによって媒介される人間にとって重篤な病気もあるので注意が必要です。
よって、外に出る猫は、定期的にシャンプーを行うことや、ノミやダニの予防薬を動物病院で処方してもらい月に一回投与する事が大切です。
しかし毎日外に出る場合、毎日シャンプーをすることはかえって負担になるため、予防薬の投与を必須とし、外から帰った際には市販の拭き取りシートなどで体についた汚れや虫を取り除いてあげましょう。
4.薬浴が必要な猫
猫が皮膚炎になった場合、飲み薬や塗り薬などと併用して、薬浴を行うことがあります。薬浴は、全身または体の一部を薬液に浸す治療で、それぞれの皮膚炎に応じた薬用シャンプーを使用します。
「膿皮症」の場合には抗菌シャンプー、「真菌症」の場合には抗真菌シャンプー、「脂漏症」の場合には角質溶解シャンプー、他にも保湿タイプ、低刺激タイプなど、それぞれの目的にあった薬用シャンプーがあります。
また、動物業界ではまだデータが不十分ではありますが、最近では皮膚炎以外でも免疫機能の向上や、細胞の活性化を目的として、オゾン水での薬浴を行う療法などを実施している病院もあるようです。
5.高齢や病気の猫
高齢や病気によりグルーミングをする活力がなくなってしまうと、フケや皮膚炎などが発生しやすくなります。
また、胃腸炎の時や、高齢でトイレまで歩けない時は、排泄物による被毛の汚れがひどく、どうしてもシャンプーが必要な場面が出てくると思います。
しかし、シャンプーは想像以上に猫にストレスと体力の負担がかかるため、シャンプー嫌いな猫では体調が悪化する場合や、パニックになって急変してしまう危険性もあるため注意が必要です。
体調が思わしくない時はシャンプーを避け、ドライシャンプーなどでスポットクリーニングを行うようにしましょう。高齢な猫や持病のある猫にどうしてもシャンプーが必要な場合には、事前にシャンプーをしても大丈夫か獣医師に相談してから行いましょう。
また、水のいらない泡タイプのシャンプーや、お尻周り専用の、洗い流さなくて良い洗浄液などで代用することで、猫の体への負担を少なくする方法もあります。
まとめ
猫はシャンプーやドライヤーが嫌いな子がほとんどです。
しかし、今回ご紹介したように定期的なシャンプーが必要な猫種や、皮膚炎や病気でシャンプーが必要な場合には、苦手でもどうしてもシャンプーをしなくてはいけない場面があるでしょう。
そのような時、猫があまりにもパニックになってしまうと、心不全やけいれんなどの危険性や、シャンプー後の胃腸炎や膀胱炎などの体調不良、シャンプーを行う飼い主さん自身も怪我をする危険性があります。
その場合には無理をせず、動物病院で鎮静をかけてシャンプーを行ったり、猫のシャンプーに慣れているトリミングサロンにお願いしたりするなど、専門家の力を借りることも大切です。
困った時には、一度専門家に相談してみましょう。
(獣医師監修：唐野智美)